他企業は撤退するなか、トゥーラ が 中国 の美容市場に進出する理由

DIGIDAY

1月のP&Gによる買収後、トゥーラ(Tula) は急速に国際市場、つまり中国、に進出している。

トゥーラは7月、Tモールグローバル(天猫国際、Tmall Global)というeコマースサイトとソーシャルメディア、eコマースサイトプラットフォームの小紅書(Red)、そして中国版TikTokであるソーシャルプラットフォームの抖音(Douyin)でにローンチし、中国での展開をスタートさせた。7月以降もWeChatや微博(Weibo)でほかのライトなコミュニケーション戦略をとっている。トゥーラのCEOサバンナ・サックス氏は、中国市場の売上予想については言及を避けたが、同社は広く国際展開に注力していると述べた。D2Cのeコマースが売上の約50%を占めると、サックス氏は以前のGlossyのインタビューで語っている。

有名ブランドにも容易ではない中国進出

2022年に中国に進出するのは簡単なことではない。経済的および政治的な圧力により、より資金力のある有名ブランドでさえも、中国での事業を成功させるのはますます難しくなっている。7月現在、エスティーローダーカンパニーズ(Estée Lauder Companies)傘下のトゥーフェイスド(Too Faced)は、Tモールグローバルとの越境ECの提携を終了している。WWDによると、これは「流通チャネルの調整」だが、同ブランドの長期的な戦略には影響しないという。さらに、同じエスティーローダーカンパニーズ傘下のブランドであるグラムグロウ(Glamglow)も同時期にTモールグローバルから撤退した。

その他にも、キャンディのスニッカーズ(Snickers)、ギャップ(Gap Inc)、デルタ航空(Delta Air Lines)などのブランドや、俳優のジョン・シナ氏までもが、台湾を国として言及したことで、米中間の政治的な対立に巻き込まれている。自治島である台湾を中国は自国の領土と主張しており、武力による併合も含めて脅威を強めている。

エスティーローダーカンパニーズ資生堂、P&Gなどの大手企業は、中国での売上が減少し、その市場への浸透にさらに影響を与えている。P&Gの場合、主に重要市場となる地域でCovidに起因するロックダウンが発生したことで、第4四半期の中国の本質的な売上は前年同期比11%減となった。だが、Covid-19が世界的な健康問題として根強く残っているにもかかわらず、企業はその影響が長期に及ぶことはないだろうと楽観視している。

中国の顧客向けに現地のオピニオンリーダーと提携

「中国市場は、当社にとって非常に魅力的な成長率と価値創造の機会を提供している」と、P&GのCFOアンドレ・シュルテン氏は、7月に行われた同社の第4四半期決算説明会で述べている。「モビリティが回復し、デパートが再開し、デジタルチャネルでより強力な能力を展開し、中核のブランド資産に当社の事業を再集中させるにつれて進展がみられる。モビリティはまだ再開されたばかりなので、この進展は今のところ比較的ゆっくりとしたものだ」。

トゥーラは、市場調査やフォーカスグループ、さらには家庭での製品試用などを依頼するなど、1年半前から中国への進出を開始している。サックス氏によると、同ブランドの医師によるストーリーとプロバイオティクス美容製品にかなりの関心が集まっていたという。トゥーラは、マーケティング、広告、インフルエンサーとの関係において、中国の非公開の現地パートナーと連携している。

トゥーラはマーケティングにおいて、ロシニ・ラジ博士とともに医師が設立したというブランドのオリジンや、製品の臨床的有効性を強調している。市場に参入するにあたっては、若いミレニアル世代と並んで、これまで以上にZ世代に依存しており、同社のコア顧客の平均年齢は32歳だが、Z世代との指数も高くなっている。ブランドの科学を翻訳して中国の顧客向けにカスタマイズする目的で、同ブランドは7月から9月末までの間に200人以上の主要なオピニオンリーダーと契約を結んでいる。それらのオピニオンリーダーたちは、主に抖音でトゥーラのメッセージをオーディエンスに伝えるライブストリーミングに注力する予定だ。以前のGlossyのレポートによると、トゥーラのD2C収益の約3分の1は、インフルエンサーのアフィリエイトマーケティングによってもたらされている。

とても複雑な市場なので時間をかける必要がある

また、トゥーラは2021年1月にインターナショナルバイスプレジデントとしてシャーリー・チェン氏を採用した。国際的な美容業務に20年携わってきたチェン氏のような経験豊富な人材の採用や、中国現地で別のパートナーと協力することで、同業他社が落ちた穴を避けることができるとサックス氏は述べた。

「中国は非常に複雑なので、走り出す前に時間をかけて歩く必要がある」と、サックス氏は言う。「当社は差別化されたブランドと製品のポジショニングを確立し始めるために、強固な基盤を築くことに力を入れている。(ブランドは、市場で)勝つ権利があることを確実にするために、ブランドのポジショニングの方法を非常に思慮深く、戦略的に考えなくてはならない」。

中国では、ライブストリーミングとライブストリームショッピングが米国と比べてより成熟している。マッキンゼー(McKinsey)の2021年のレポートによると、2020年の調査では、中国の消費者の3分の2が過去1年間にライブストリームで商品を購入したと答えている。中国のライブストリームショッピングの売上は、2022年までに4230億ドル(約57.9兆円)に達すると予想されている。一方、米国におけるライブショッピングイベントは、2020年に56億ドル(約7666億円)の売上を生み出したと推定されており、コアサイトリサーチ(Coresight Research)は、米国のライブストリーミングが2023年までに250億ドル(約3.4兆円)近くに達すると予測している。

「中国の消費者にとって説得力のある方法でトゥーラの科学を翻訳するよう、当社ではパートナーやコンテンツクリエイターにローカライズを促している」とサックス氏は語っている。

[原文:Tula pushes into Chinese beauty market while others exit]

EMMA SANDLER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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