2022年8月31日の20時半ごろ、秋葉原のオタク的に外せないスポットの一つ「とらのあな 秋葉原店A」が閉店した。秋葉に残っていた最後の とらのあな の店舗だ。
この街は90年代の半ばごろから徐々にアニメや漫画、エロゲ、フィギュア系がメインの街にシフトしたが、とらのあな は、わりと早い段階からオタクにとってのマストな巡回ポイントの一つだったと思う。
そんな とらのあな が、この秋葉から消える……!? つい先日SEGAのロゴが消えた時も衝撃だったが、今回もマジに衝撃だ。見届けるしかねぇ!!
・思えば来なくなってた
ということで久しぶりに秋葉原へ。よく考えれば、最近はめっきり来なくなってしまった。
かつてはそれなりの頻度で秋葉に足を運んでいたし、来たらとりあえずアトレのコラボ状況を見て、SEGAのゲーセンに寄り、ゲーマーズ、VOLKS、アニメイト、メロンブックス、そして とらのあな が規定の巡回ルート。
あとは年に2回のコミケの直後だ。コミケからそのまま秋葉に来て規定のルートを巡回。そしてコミケ4日目(C96のことじゃない)も再び秋葉に……みたいな。
秋葉に来た回数=とらのあな に寄った回数と言っていいだろう。店内に出ていた上下半期や年間のエロ漫画ランキングで世のオタクの性癖を慮(おもんばか)り「相変わらずド変態ばっかで最高だぜ!!」つってなぁ。
単なる店というよりは、秋葉の空気感やカルチャーを構成する、そこそこ重要な1つの要素と言っても過言では無かったと思う。
来なくなった理由と言えば、やはりコロナ禍だろうか。何でも通販で済ませるスタイルがすっかり身についてしまった。フラゲ日に店頭受け取りこそジャスティスみたいな謎の信念を抱いていた時期は遥か昔。
そういうオタクは私だけじゃ無かったのだろう。実店舗の採算が落ちていたようで、ついにこの秋葉店Aにも終わる時が来てしまったもよう。
・集うオタク
そんな感じのことを考えながら、31日の20時前に とらのあな へ向かうと……お、やっぱ集まってんな! 私のように、とらのあな秋葉原店Aの終焉を見届けに来たと思しきオタクたちが多数。
秋葉でそれなりに歴史のある店舗が無くなる時には恒例の行事だ。流れとしては、閉店時にお店の人が最後の挨拶をし、集った人が拍手。そしてシャッターが下りるみたいな。自然発生的にそれが通例になった気がする。
秋葉の店舗のことしか把握していなかったが、なんば店、新宿店、千葉店、梅田店も8月31日で閉店だったようだ。
閉店待ちするオタクの数は増えに増え、ディズニーのパレード待ちかよというレベルに。
最後の瞬間に店頭を飾っていた記念すべき広告は、入り口真上が『ジュエリー・ハーツ・アカデミア』『彼女、お借りします』。
店舗の左側の方に『サクラノ刻』のポスター。ショーウィンドウ内部や右側は、とらのあな関連のキャンペーンの案内だった。
20時まであと10分程度というところでパトカーも登場。
参列者は増え続け、道路を挟んで向かいのソフマップやミスド前もこの通り。
ちなみにメロンブックスでは、マックが閉店した時にバーキンがブチかました「私たちの勝チ」という縦読み文を一部改変し、メロンのイラストをブチこんだポスターを入口の階段横に貼って煽っていたもよう。
この手のジョークに対する理解を放棄した人が多いこの国でも、秋葉でなら許されそうなノリじゃん。バーキンのをまるっとコピってるので、2年を経てのマックの復活と2度目の煽りまでも含んだ、愛に満ちたものと解するのが正解だろう。
あふれ出るヌメっとしたリスペクトとヌクモリティ。秋葉という場所と、とらのあな とメロブというライバル関係にある同業同士ならではか。残念ながら、私が見に行った時には撤去されていた。
まあでも、消えたものは増やさないとな。ネットで見た掲載時の状況を、私がバーキンの縦読みポスターの写真を用いてフォトショで再現するとこんな感じ。本物はTwitterで「メロン 縦読み」で検索したら出てくる。
・最後の挨拶
動きは20時25分を過ぎたあたりで起きた。閉店時間である20時をかなり過ぎているが、それまで最後の買い物をしていたと思しき客の退店が続いていたのだ。
待ち構える我々の前に、恐らく店長さんだと思しき人が拡声器を持って登場! 程よい長さで上手く要点のまとまった最後の挨拶を述べ、店内に退去。
そして集まったオタクたちからの熱い拍手と、閉じるシャッター。こうして とらのあな秋葉原店A は感動のフィナーレを迎えた。
完
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.