総裁選に見る自民党派閥の凋落 – 舛添要一

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 自民党総裁選、9月29日に投開票が行われる。そして、10月4日には次期首相が決まる。今回の総裁選の特色は派閥の機能低下である。

 一つの選挙区から3〜6人を選出する中選挙区制では、定数の数だけ派閥が生まれる。典型的なのは三角大福中、つまり三木派、田中派、大平派、福田派、中曽根派が「切磋琢磨した」(大平正芳の表現)時代である。田中が金銭の不祥事で退陣すると、「クリーン」な三木が首相となり、自民党はイメージチェンジによって人気を回復する。擬似政権交代であり、これが自民党の長期政権化に貢献したのである。

 派閥の最重要機能は、領袖を総裁、つまり内閣総理大臣にすることである。そのための戦闘集団が派閥であり、「角福戦争」に見られるように、熾烈な戦いをする。戦国時代の軍団と同じである。

 ところが、今回の総裁選では、岸田以外は、派閥の長ではなく、高市、野田は無所属である。菅義偉が無派閥で首相になったのも大きな変化である。

 小選挙区制になってからは、1選挙区1候補ということになり、党本部が公認することになった。他の候補は、公認権を持つ者には刃向かえず、せいぜい非公認の保守系候補として立候補するしかなくなる。二階派は、そのような候補を多く支援し、当選の暁には自派入りさせ、入党もさせ、派閥の規模を拡張してきた。

 派閥間で複数の議席を取り合った中選挙区制では、いずれかの派閥に入ることが立候補する前提であった。派閥のボスが資金の調達をはじめ選挙の支援も行う。その結果、親分・子分関係が確立するのである。

 つまり、派閥はまた、カネとポストの配分単位でもあった。しかし、今は政党交付金という制度が導入され、それが党本部から分配される仕組みになっている。無派閥でも資金調達に困ることはない。

 さらに、人事についても、かつては閣僚ポストも派閥単位で配分された。主流派は優遇され、反主流派は冷遇されるが、基本は派閥の規模に比例してポストが配分されたのである。今でも派閥枠というのは残っているが、僅かである。

 首相が、自分の思い通りに閣僚人事を行う余地が拡大している。無派閥だからといって相手にされないわけではない。そのため、金集めなどの義務を伴う派閥に入らずに、無派閥でいる議員が増えている。

 派閥には、新人の教育という役割もあった。政治家として、国会議員として、どのような勉強をし、どのように振る舞わねばならないかを派閥が教えたのである。ところが、今はその教育機能が低下してしまった。国会議員に相応しくない行動をする若手議員が増えている。

 小選挙区制、そして官邸への権力集中が派閥の機能変容を起こすことは当然であるが、今回の総裁選で、それがより明確になったのである。派閥のプラスの面をどう活用していくのか。「政高党低」という状況を是正し、党の活力を取り戻すことに繋げねばならない。それが、今回の総裁選の隠されたてテーマである。

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