マイナスイオン計測中
マイナスイオンが健康のキーワードとして流行したのは2002年ごろらしい。
それ以降、ぼくらが酸素入りの水を飲みながらナットウキナーゼを摂り、血液をサラサラにしているあいだに、マイナスイオンのブームは去ってしまった。
でも、たとえ人々の関心が薄れても、マイナスイオンは今でも変わらずそこにある。たとえば夕方、雨にぬれるサルビアの葉っぱの裏にも、目をこらせば、ほら、マイナスイオン。
そんな在野のマイナスイオンを見つけていきたいと思います。
※2006年9月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
そもそもマイナスイオンってなにか
まずは、探そうとしているマイナスイオンというものがいったい何なのかということを確認しておきたい。
理科の授業で習うイオンには、それぞれプラスとマイナスの電気を帯びたものがあった。それらは陽イオンと陰イオンとよばれるもので、陰イオンはいわゆるマイナスイオンとは違うものだという。
じゃあマイナスイオンってなんなのか。
実はちゃんとした定義はないらしい。調べたかぎりでは、おおよそ、ごく小さな水滴に陰イオンがくっついたものと考えればいいのかなと思った。
マイナスイオンカウンターを借りた
そして世の中にはマイナスイオンを計るための機械があるらしい。
調べるとどれもふつうに10万円ぐらいする。もっと安いのがあればと探したところ、渋谷のニチワという会社でレンタルができることが分かった。
今回お借りすることができた機械は、アンデス電気製の空気イオンカウンター「ITC-201A」というもの。それ以上の詳しいことはぼくには分からない。どうやって、具体的に何を計っているのかといったことは聞かないでください。
とにかくこれを持って、野に在るマイナスイオンを探していきます。
まちなかを
マイナスイオンは森の中や水辺に多いとよく言われる。でもまずはふだん生活しているまちなかから調べていった。
駅の中の場合、たとえばこんな数字が出る。
表示されている数字を1000倍した個数のマイナスイオンが、空気1cc中に含まれているということになるらしい。
この場合だと、約710個。
これが多いのか少ないのかは、まだよく分からない。ひとまず、上で計った通勤経路上のマイナスイオンの数をグラフにあらわしてみることにした。
この結果からは、まちなかのマイナスイオンの個数は1ccあたりだいたい1000個だということが分かる。
細かくみると、自宅や駅などの屋内については1000個以下で、屋外は1000個以上。サンプル数は少ないけれど、屋外のほうが個数が多い傾向にありそうだと感じる。
郊外はどうか
では、都市からちょっと離れた場所ではどうなのか。マイナスイオンといえばあそこ、という場所に行ってみた。
奥多摩にやってきた
新宿駅から中央線で西に向かい、JR青梅線の終点、奥多摩駅で電車を降りる。
自分でも分かっている。周りの景色を見ても、地図を見てもあらためて思う。
奥多摩は「そのへん」ではない。
ぜひともかの場所のマイナスイオンを計りたい、計らねばならないという思いが、ぼくをここに連れてきたのだと思う。
マイナスイオンといえば滝。滝つぼでの数字を計りたい。
近寄りがたい滝つぼ
しかし、そこまでの道のりは平坦ではなかった。
まず、滝のある場所がそもそも遠い。「林道の終点から徒歩1時間半」などとガイドブックに平気で書いてある。体力に自信のないことについて自信のあるぼくとしては、そのような場所はぜひ避けねばならなかった。
最も近くまで車でいける滝として、日原鍾乳洞ちかくにある小川の大滝という場所に行ってみた。ところが滝つぼは林道から20mほどの急な崖下にあり、とても近づくことはできそうにない(上の写真右)。
ただ、同行してくださったTさんによると、川岸を伝って下流からさかのぼれそうだとのことだった。見ると、滝つぼ近くに確かに親子づれの姿も見える。危険を感じたらすぐ引き返すことにして、近づけるところまで行ってみることにした。
川に入ってみると、水の冷たさが足に伝わるものの、 浅く、流れもゆるやかで特に危険を感じることはなかった。
ただ、背中にしょったかばんにはイオンカウンターとカメラが入っている。転んでぬらすことだけは避けなくてはいけない。それが、下の写真のような場所でけっこうなプレッシャーになった。
「まずはAに手を置いてB、Cと抜ければ大丈夫です」とTさんは言い、実際に軽々と通り抜けて見せるのだけど、ぼくは機械を濡らして怒られることばかり想像してしまっていた。
ようやく滝イオンをゲット
10分ほどのアスレチックな道のりの後、ようやく滝つぼの近くに到着することができた。
いまになって冷静に見ると、滝つぼというほどでもないなと思うけど、そのときはとにかく大喜びでイオンカウンターを取り出し、勇んで計測を始めた。
計測の結果は65,200。
自宅での値が約1,000だったから実に65倍。まさに桁違いだ。
滝、すごい。
滝よりもすごいのはこれだ
これだけなら、やはり大自然はすごいという結論で終わってしまいそうなところだ。でもそんなに簡単には終わりません。
シャワーでいいんじゃないか?
滝つぼでマイナスイオンが多く発生するのは、落下した水が摩擦によって電気を帯びるからだ、とする考え方があるらしい(それは誤りだとする人もいる)。
じゃあたとえば、お風呂場でシャワーを使えば、同じ理屈でマイナスイオンが作られるんじゃないだろうか?
実際にやってみた。
上の写真をメーターを見てほしい。値は70,800。滝つぼの65,200を上回っている。
なんだそれは!
滝なんか行ってる場合じゃない。シャワーで十分だ。
さらなる刺客
さらに、マイナスイオン家電についても調べてみた。
当サイト月曜ライターの古賀さんが、マイナスイオンを放出する機能つきのドライヤーを持っているとのことだったので、先日の企画会議の際に持ってきてくださるようにお願いした。
まずはマイナスイオン機能をオフにしてドライヤーを使ってもらい、計測してみる。値は部屋でふつうに計った場合と変わらなかった。
つぎに、イオン機能をオンにしてもらう。
その途端、数値はみるみる上昇していき、見たことのない桁の数字が表示されていった。
数値は約123万。滝のさらに20倍だ。
なんなんだ、マイナスイオンドライヤー。
奥多摩まで行ってきたのはなんだったのか、と思う。
おすすめは家電です
そういうわけなので、もしマイナスイオンによる健康への効果を期待される方がいらした場合は、ぜひドライヤーを使われることをおすすめします。
森とかに行って樹間をわたるそよ風を感じてもダメです。ドライヤーの送風口から思いっきり風を受けてやってください。
ただし、いわゆるマイナスイオンが健康に与える効果について実証した研究は今のところほぼないそうです。であるならば、いっそ奥多摩に行って滝の近くでキャンプでもしたほうが癒し効果は高いのかもしれません。