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オンラインの釣り具小売業者であるカールズ・ベイト・アンド・タックル(Karl’s Bait & Tackle)は、テキサス州フォートワースの新しい実店舗で新しい波を起こそうとしている。スポーツとしての釣りの人気が高まるにつれ、新規および熟練した釣り人にブランドの魅力をアピールすることを狙っている。
サブスクから段階を踏んで漕ぎ着けた実店舗展開
カールズは、2012年に創設されたサブスクリプションボックスであるミステリータックルボックス(Mystery Tackle Box)のマスコットとしてスタートした。それから5年後に同社は、さまざまな釣り用具を販売するためのeコマースとして営業を開始した。今夏に開設した実店舗「カールズ・フィッシング・アンド・アウトドア(Karl’s Fishing and Outdoors)」は、同ブランドの楽しく風変わりな精神を実現することを目指していると、小売エクスペリエンス担当ディレクターのティーグ・ストーファー氏は語る。
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「我々は、現在のデジタルメディアでは関係を深められないような顧客との関係を求める段階に到達した。顧客との現実世界での関係を持つことができるプラットフォームを作り始めることが非常に重要となった」。
近年はカールズも、釣り具業界全体も活況の時期だった。カールズとミステリータックルボックスの親会社であるキャッチ・カンパニー(Catch Co.)は少なくとも6100万ドル(約83億6000万円)を調達し、2021年4月に行われた最新のシリーズB資金調達では3800万ドル(約52億1000万円)を調達した。一方でリクレーショナル・ボーティング・アンド・フィッシング・ファウンデーション(Recreational Boating and Fishing Foundation、RBFF)は、2015年以後に女性や有色人種の参加の増大により、釣り人口が15%近く増加したことを報告した。キングピン・マーケット・リサーチ(Kingpin Market Research)によると、全世界での釣り具市場は2022年に145億ドル(約1兆9900億円)、2028年には176億ドル(約2兆4100億円)に達するという。
これまでのところ実店舗は成功しており、同ブランドは最初の1週間で目標の2倍の売上を達成したと、ストーファー氏は語る。パンデミックの最中に商品を買い占めた人々が流入したことから、釣り具業界全体は正常化しつつあるが、実店舗の開設以来、DFW(テキサス州のダラス・フォートワース複合都市圏)市場はテキサスのほかの市場より40〜50%トラフィックが多かったと、同氏は述べている。
キャッチ・カンパニーは、ミステリータックルボックスの市場に足がかりを作った。しかし、カールズのブランド自体はeコマースのウェブサイトが開設されるまで立ち上がらなかった。同社はタックルボックスの商品、釣り竿、リール、釣り糸、衣服、そのほかのアウトドア用アクセサリを販売している。
同社によれば、実店舗の開設はブランドが新規の釣り人を呼び込み、地域密着型の道具店を作り上げるために展開したという。フォートワースの店舗はトリニティ川のショッピングプラザにあり、レッスンや交流会を行える。続く2つ目の店舗はモール・オブ・アメリカ(Mall of America)に計画されている。
「店舗はショッピングとともに、体験や学習も目的としている。しかし同時に、コミュニティを作り上げ、人々に交流のための場所を提供するものでもある」と、同氏は述べている。
店舗での新しい種類の体験
小売店舗を保有するという考えはパンデミックの前から浸透していたが、まだ実行に移されてはいなかったと、ストーファー氏は語る。フォートワースの店舗はカールズの倉庫に近いだけでなく、サブスクリプションボックスのデータを解析したところ、ダラス・フォートワース複合都市圏は、もっとも人気のエリアだということが示されていた。
同社は店舗のデザインに関して、新しい顧客を惹きつけ、あらゆるレベルの釣り人を歓迎し、魅力的な体験を提供するために、今までになかったものにしたかったと、ストーファー氏は語る。また同社は、この業界で多く見られる、新しいオーディエンスを遠ざけるような「男臭くてノスタルジー」な雰囲気を打破することをも望んでいた。
「当社は、釣りの経験が豊富であるとは限らない人々を歓迎する一方で、アウトドアと釣りをライフスタイルにしているような人々にも居心地がいいと思ってもらえるような店舗を作り上げた」と、同氏は述べる。
そこでカールズは、ブランドエクスペリエンス代理店のチェンジアップ(ChangeUp)と提携した。同社の最高クリエイティブ責任者を務めるライアン・ブラゼルトン氏は、大手小売店のルアーや釣り竿が並ぶ通路や、現地の小さな餌売り店など、既存の釣り具小売店は初心者には入りにくいと考えたと語っている。
同氏は次のように述べている。「スポーツを開始するときに、これほどとっつきにくい方法はなかなかないだろう。初心者にとって『どこからはじめたらいいのか?』という雰囲気があったため、それを解決する必要があるとチームは考えた」。
このためチームは、人々が商品に触って試し、ショッピングとともに使い方について学ぶことができる方法を作り上げることにした。その例のひとつは「ルアーウォール」で、箱から出したルアーが展示されており、買い物客がそれを手に取ると、その疑似餌をどのように使うか、水中でどのように見えるかを紹介する動画が表示される。また、ローカルな餌売り店の壁にかかっている伝統的な「ヒーローショット(釣った魚の記念写真)」にヒントを得た、餌売り店の壁のデジタル版もある。これはハッシュタグと接続されており、顧客に写真の共有を促している。
「当社は、釣果を披露するための壁は絶対に設置したいと考えていたが、その際には壁に小さなスクリーンを設置してストーリーを語らせるのがいいと判断した」とブラゼルトン氏は語る。
釣りに参加する新しい世代の人々
リクレーショナル・ボーティング・アンド・フィッシング・ファウンデーション(RBFF)は2022年7月のレポートで、米国全体での釣り人口は2020年に史上最高の5470万人に達したと述べている。これは、人々がCovid-19によるロックダウンのあいだに屋外での娯楽を求めたためだ。2021年にはこの数が5240万人と多少減っている。
RBFFのマーケティングおよびコミュニケーション担当シニアバイスプレジデントを務めるステファニー・バタラロ氏は、過去14年間において釣り人口が5000万人を超えたのは2回だけだと語る。
さらに、このスポーツはより多様化し、女性や若年層が増えてきている。
- 昨年米国で釣りを行った黒人は410万人で、2020年の370万人より増えている。
- 2021年に釣りに出かけた女性は1940万人で、釣り人の37%を占めて過去最高となった。
- 2021年に釣りを行ったヒスパニック系の人々は470万人で、2019年より7%増えた。
- 釣りに出かけた6歳から17歳の若年層は1290万人で、2019年より14%増えた。
カールズにとって、パンデミックは同社の収益を「大幅に伸ばすために」貢献した。ただし、ストーファー氏は具体的な数値を明らかにしていない。しかし同氏は、熟練したeコマース小売業者として、ブランドが需要に対処する準備を整えていたと語る。「従来型の実店舗の小売業者がパンデミックのあいだに抱えていた(来客数の減少という)課題は、我々にとっては課題ではなかった。当社は顧客の家庭に品物を配達する準備を整えていたからだ」と同氏は述べている。
しかし、釣りというスポーツは出入りが激しい。2021年に1160万人が新たに釣りをはじめ、1400万人が止めてしまった。バタラロ氏は、この点において店舗内ショッピングでは、顧客がオンラインで買い物をする場合と比べて、道具の使い方を専門家から学ぶ機会があり、大きな支援を行うことが可能だと語る。
「オンラインの場合は、顧客が適切でない道具を購入してしまった可能性を考える必要がある」と同氏は述べている。
また同氏は、実店舗なら、たとえばライセンスを取得しているかどうかを販売時に確認したり、良い釣り場のヒントを教えたりすることで、初心者を安心させることができるとも語っている。
「小売業者や、この業界に属するほかの人々は、釣りに挑戦する人々の後押しをすることだ。店舗にはある程度まで常連客が定着しているだろうが、今後の新しい顧客について考え、それらの顧客に適切な対応をするところにチャンスがあると、私は考えている」。
[原文:Why DTC fishing brand Karl’s opened a store to lure in new anglers]
Melissa Daniels(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:猿渡さとみ)
Image via Karl