インスタグラム 、8月31日にアフィリエイトプログラムを廃止:使い勝手の悪さ、メリットの乏しさからクリエイターが敬遠か

DIGIDAY

Meta(メタ)のソーシャルコマース機能を利用したユーザーの販売実績が伸び悩んでいるという。それを受けてか、Facebookは2022年10月1日にライブショッピング機能を廃止するのに加え、クリエイティブ業界に精通した識者によると、インスタグラムが2022年8月31日にアフィリエイトプログラムを廃止するとクリエイターに通告したという。実際、Metaの広報担当者はこれらの廃止について認めている。

「私たちはインスタグラムを、クリエイターがブランドと提携して利潤を得る最適な場所にしたいと常々考えています。ブランドとクリエイターがより簡単にコンテンツ・パートナーシップを構築できる唯一の場所として、私たちはインスタグラムのクリエイターマーケットプレイスの展開に注力し、現在行っているインスタグラムのオンサイトアフィリエイトのテストを終了することにしました」と、Metaの広報担当者は声明で述べている。

クリエイターに普及せず

インスタグラムは2021年7月にクリエイター向けのアフィリエイトプログラムのテストを正式に開始し、3月には短編の縦動画を作成・投稿できる機能「リール(Reels)」にも拡大した。同プログラムでは、参加クリエイターがインスタグラムの投稿に商品タグを付け、そのタグ付けされた商品を視聴者がタップし、インスタグラム内で購入するとクリエイターに手数料が配当されるよう設計されていた。手数料のレートはクリエイターによって異なる。

しかし、このプログラムはクリエイターのあいだでなかなか普及しなかったと、クリエイティブ業界の幹部たちは口々に指摘する。「すぐ利用できる感じがしなかった」と、あるエグゼクティブはコメントする。具体的には、クリエイターがプログラムを立ち上げるための手順が多すぎる上、一度プログラムに参加すると、投稿内でプログラムに含まれない商品に対してはタグ付けができない仕組みになっていた。

「使い勝手が悪い上、インセンティブについても明確でないのであれば、クリエイターは手を出さないだろう」と、別のエグゼクティブは言う。

さらにもうひとりの別のエグゼクティブは、「彼らは『ユーザーの皆様には、当社のプラットフォームの動作にただ慣れて欲しいだけです』と伝えればいいものを、そうせずに情報やコンテンツのキュレートに注力しすぎたために、かえって墓穴を掘ってしまった」と述べている。

そもそも利用するメリットも乏しかった?

クリエイターの選択に影響を与えたもうひとつの要因は、インスタグラムのアフィリエイトプログラムを利用するメリットがないように見えたことだ。クリエイターはすでにAmazonアソシエイトなどのプログラムを通じてアフィリエイト収入を得ており、そのリンクを自分のTikTokやインスタグラムのアカウントのプロフィールページに追加するなどすれば、それらのプラットフォームで共有できるようになっている。

「すでにほかのアフィリエイトプログラムを実行していて、特に問題なく機能している場合、わざわざインスタグラムのアフィリエイトプログラムに参加するのにどんなメリットがあるのか?」と、前述の3人目のエグゼクティブは指摘する。

クリエイターが柔軟性を重視していることが、インスタグラムがクリエイターマーケットプレイスに軸足を移し始めている理由かもしれない。インスタグラムが2022年7月に発表したクリエイターマーケットプレイスは、マッチングアプリのTinder(ティンダー)のように、ブランドとクリエイターのマッチングに力点を置いている。

「クリエイターは、アフィリエイトだけでなく、様々な形でブランドとつながって仕事をしたいと考えている。インスタグラムがこのために別のアフィリエイトプログラムを設けるのではなく、自社のクリエイターマーケットプレイスを利用することは非常に理にかなっている」とセレクトマネジメントグループ(Select Management Group)のタレントマネージャー、チャーリー・バトン氏は述べる。

自前のアフィリエイトプログラムは負担に

さらに、インスタグラム、Facebook、TikTokといったプラットフォームは、プラットフォーム主導のコマースビジネスの立ち上げに苦戦しているようだ。インスタグラムとFacebookがそれぞれのリール・アフィリエイトとライブショッピング・プログラムを廃止したことに加え、2022年7月にはTikTokが、英国でのライブショッピングが軌道に乗らなかったため、欧州と米国での展開を見送ったと伝えられている旨がフィナンシャル・タイムズ(The Financial Times)で報じられている。

「アフィリエイトはクリエイターにとって重要な収益源のひとつだが、ほかのプラットフォームが経験してきたように、すでに多くのサードパーティーが参入しているなかで、自社で構築・運営するのは過大な負荷となる可能性は否定できない。また、アフィリエイト・プラットフォームは、優れたブランドパートナーとの提携が最重要事項のひとつであるが、その実現には多大な時間がかかる」とバトン氏は語る。

[原文:Instagram will shut down its affiliate commerce program on Aug. 31

Tim Peterson(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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