景気後退期には、ラグジュアリーブランドはマスブランドよりも影響を受けにくい傾向がある。しかしそれでも7月下旬に行われた決算説明会では、多くのラグジュアリー企業が不況対策について発表している。
不況後の回復に備えるLVMH
7月26日に行われたLVMHの第2四半期決算説明会で、CFOジャン=ジャック・ギオニ氏は、LVMHは不況を乗り切ることができると考えているが、同社の経営陣はいくつかの調整を行っていると述べた。不況が終わったときにもLVMHが良好なポジションにあることを確実にすることが目的である。
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「販売費のほとんどは、グループ全体で売上(収入)総額の20%程度だ。マーケティングは11%程度で、マーケティングは自由裁量だ」とギオニ氏は述べた。「厳しい状況や需要の減少によって収益が影響を受けるのを防ぐ形として、それらは不況時に少し遅れて調整することができる」。
ギオニ氏は続けて、現在のLVMHの計画と、2008年の金融危機の際に軌道修正した方法とを比較した。LVMHは2008年の不況でマイナスの影響を受けたが、その期間の大半を不況後のための準備に費やしたという。需要が低い時期にはマーケティング予算を削減し、需要が回復したときにより大きな在庫を購入できるよう手元資金を蓄えたのだ。
「前回の不況で経験してきたことは、不況は長くは続かないということであり、我々には非常に強力な回復能力があるということだ」とギオニ氏は語った。「経営の点でいえば、我々が達成しようとしていることは、もちろん変化する状況にはしっかりと対応するが、状況が好転したときに力強く回復できるようにしておくことだ」。
価格引き上げを行ったケリングは状況を静観
ケリング(Kering)にとって、値上げが今年の主な着手計画である。ケリングは2月にグッチ(Gucci)の価格を1桁から10%台半ばに引き上げ、6月中旬にも再び値上げを行っている。ケリングのCFOであるジャン=マルク・デュプレ氏は、7月27日に行われた第2四半期決算説明会で、ウクライナの戦争がコストに大きな影響を与えており、同社の価格引き上げは部分的にはそれに起因するものだと述べた。
デュプレ氏は、値上げ以外の安全策も行うかもしれないが、それは今年後半の状況次第だと話す。
「先のことを考えて、今後何が起こるかを語るのは常に難しい。(為替が)変動するのは周知のとおりだが、燃料価格も変動する可能性がある。したがって(今年後半に)何が決定されるかについて推測したり予想したりするのは時期尚早だ。現在は様子見の状態にあり、必要があれば、そのときは対応するつもりでいる」。
不況の影響に懐疑的なモンクレールと不確実性に備えるプラダ
モンクレール(Moncler)は7月27日に行った第2四半期決算で、CMO兼COOのロベルト・エッグス氏は、不況がモンクレールに大きな影響を与えるかどうかについては疑念を投げかけた。同氏は、2022年上半期に売上が鈍化したが、それは不況によるものではなかったことを指摘した。中国でのロックダウンのため、上半期の2四半期では25%の店舗が一時的に閉鎖されたのだ。
「本当に減速しているとは思っていない」とエッグス氏は述べている。Covid以前の水準と比較すると、モンクレールの今年の売上は、第1四半期に11%、第2四半期に18%増加したと彼は指摘している。「加速と減速を目にしてきている」。
7月28日、プラダ(Prada)の第2四半期決算は、不況の可能性だけでなく、ウクライナにおける戦争やCovidの感染復活の可能性など、先行きが不透明な世界情勢に留意したものとなった。具体的には言及しなかったが、プラダは、そのような不確実性に対して自社を強化するひとつの方法として、サプライチェーンと流通網への投資を継続する姿勢を示した。
プラダのCEOパトリッツィオ・ベルテッリ氏は、「現在の取引は非常に好調だが、世界の政治や経済の見通しはかなり不確かであり、注意する根拠がある」と述べている。「我々は強い立場にあり、ブランドの可能性を十分に引き出すための戦略を実行するだけの自信を得ている。我々は中期的な財務目標および事業目標を達成できると確信している」。
[原文:How LVMH and Kering are preparing for a recession]
DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)