【Hothotレビュー】USB PD対応のミニPC、MINISFORUM「UM560」が登場。信じられないサイズ感ながら良好な性能が魅力

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まさに手のひらサイズの筐体を採用する「UM560」。これは付属のスタンドを利用して縦置きしたときの様子

 MINISFORUMの小型PCは、新製品が出るたびレビューしているが、その都度驚きがある。いずれも小さくてかわいらしいモデルなのはもちろん、基本性能も十分に高く、デスクトップPCが進むべき未来の1つを垣間見せてくれるPCだ。

 今回紹介する「UM560」も、そうした小型PCの系譜に連なる1台となる。非常にコンパクトだった従来モデルと比べてもさらに小型、なおかつUSB Power Delivery(USB PD)に対応することで、実に使いやすい1台に仕上げられている。

取り出して驚くそのサイズ感、CDケースより小さい!

 UM560は、AMDのノートPC向けAPU「Ryzen 5 5625U」を搭載するコンパクトなPCで、メモリやストレージの容量が異なる5モデルを用意する。メモリやストレージを自分で組み込むベアボーンキットは5万6,890円(現在はキャンペーン価格で4万5,590円)。今回試用した16GBメモリと512GBストレージを搭載したモデルは、7万6,890円(同6万1,590円)だ。

【表】MINISFORUM UM560のスペック
OS Windows 11 Pro
CPU Ryzen 5 5625U(6コア12スレッド)
搭載メモリ DDR4 3200 SO-DIMM なし/8/16/32GB(最大64GB)
ストレージ PCI Express 3.0 x4 SSD なし/256/512GB
通信機能 Wi-Fi 6、Bluetooth 5
主なインターフェイス 2.5Gigabit Ethernet、HDMI×2、USB 3.1 Type-C(USB PD+DisplayPort対応)、USB 3.1 Type-C(DisplayPort対応)、USB 3.1 Type-C、USB 3.2×2、USB 2.0×2
本体サイズ
(幅×奥行き×高さ)
127×128×47mm
重量 570g
直販価格 5万6,890円から

 驚いたのは、やはりそのサイズ感である。過去にレビューしてきたMINISFORUMの「EliteMini HM80」や「EliteMini HM90」も小さかったが、UM560はそうした小型PCよりもさらに小さい。

 たとえばEliteMini HM90は149.6×149.6×55.5mm(幅×奥行き×高さ)だが、今回紹介するUM560は127×128×47mm(同)。全体的に一回り小さい。

 箱を空けて中を見た瞬間、「これは小さい!」と感動したくらいだ。まさに手のひらサイズであり、どんな場所に置いてもジャマにはならない。天板にDVD-Rのメディアを載せたところ、メディアの直径と横幅、奥行きがほぼ同じだったことを考えると、幅と奥行きはCDケースよりも小さいサイズと考えてよいだろう。

左がEliteMini HM80で、右がUM560

同じく左がEliteMini HM80、右がUM560。UM560の方が8.5mm薄い

 横置きした場合の天板はメッシュ構造のようにも見えるが、ここには通風口はない。ブラックを基調に、天板にワンポイントでメーカー名を入れるだけというデザインはシンプルで美しい。底面には、モニターなどが装備するVESAマウンタを利用して取り付けられるマウント穴を用意する。

横置きするとこんな感じ

天板にDVD-Rのメディアを置いたところ

 こうした驚くほど小さい筐体ながら、必要十分な性能を備えることにも注目したい。Ryzen 5 5625Uは、主にモバイルノートに搭載されることが多いAPUで、6コア12スレッドに対応する。CPUコアは現行アーキテクチャの「Zen 3」世代、GPUコアは「Vega」世代で、日常的に行なう軽作業はもちろん、描画負荷が軽いものならPCゲームだってプレイできる。

 さらに言えば、動作音は非常に静かだ。起動直後はファンがフル回転モードになって「フオーン」と高い音がするが、Windows 11のデスクトップが表示される数秒後にはほぼ無音状態になる。Webブラウズや書類作成、音楽再生、NetFlixなどの動画再生時でも状況は変わらず、非常に静かに利用できた。

動作中は、側面からそよそよと風が流れてくるだけだ

USB PD対応で高機能モニターと連携しやすくなった

 前面にはヘッドフォン端子、USB 3.1のみ対応のType-C、DisplayPort対応のType-Cを装備。背面にはUSB PDやDisplayPort対応のType-C、2.5 Gigabit Ethernet、2基のUSB 3.2対応ポート、2基のUSB 2.0ポート、2基のHDMIを装備する。

前面には電源ボタンやヘッドフォン端子、2基のType-Cを備える

背面には2基のHDMIや2.5 Gigabit Ethernetポート、2基のUSB 3.2ポートや、2基のUSB 2.0ポートを装備

 映像出力端子は、背面に装備する2基のHDMI、そして前面と背面のType-Cが1基ずつで合計4基装備する。これらの映像出力端子は、すべて4K解像度とリフレッシュレート60Hzに対応するため、4Kモニターでマルチモニター環境を構築するのも容易だ。

 搭載するインターフェイスでは、冒頭でも述べた通り、電源供給端子がUSB PD対応のType-Cになったことが大きい。今までテストしてきたMINISFORUMの小型PCでは、専用のACアダプタを利用しなければならなかった。電源供給端子の形状はType-Cなのに、市販のUSB PD対応充電器は利用できなかったのだ。

付属のACアダプタは65W出力に対応し、かなりコンパクトだ

2.5インチSSDと並べると、かなり小さいことが分かる

 しかし、UM560では電源端子がUSB PD対応になったことで、純正以外のUSB PD充電器でも利用できるようになった。

 さらに、映像出力にも対応しているため、USB PDによる給電と映像入力をサポートするモニターと組み合わせる場合、Type-Cケーブル1本で電源供給と映像入力が行なえる。USBハブを搭載しているモニターなら、当然xUSBハブの機能も利用できる。

 本機ではWi-Fi 6対応の無線LAN機能も搭載しているため、あとはマウスとキーボードを接続するだけでPCとして利用できる。Bluetooth接続のワイヤレスキーボードとマウスを接続する場合は、UM560とモニターのケーブル接続は本当にType-Cケーブル1本で済んでしまう。

モニターがUSB PD対応の給電機能と映像入力機能をサポートするType-Cを装備するなら、UM560との接続はほぼType-C1本のみという気軽さが魅力

 もちろんUSB PD対応充電器やモニターには、UM560が安全に動作するだけの電源供給能力が必要だ。付属のACアダプタは65Wまでの出力に対応するモデルなので、基本的には、この出力をサポートしているなら問題なく利用できるはずだ。

 今回は65W出力対応のエレコム「ACDC-PD0465BK」、同じくType-Cポート1基だと65W出力に対応するアドテック「APD-V074AC2H」を接続して試したところ問題なく動作した。また最大90Wの出力と映像入力に対応するType-Cを備えるデルのモニター「U2720Q」に接続したところ、電源供給と映像出力は問題なく行なえた。

65W出力対応のアドテック製USB PD充電器「APD-V074AC2H」でも、UM560は問題なく利用できた

必要十分な基本性能、拡張作業も簡単に行なえる

 このようにコンパクトで使い勝手もよいUM560だが、実際の性能はどうか。普段から行なっている基本的なベンチマークテストの結果を下記のグラフにまとめた。比較対象として取り上げたのは、同じくMINISFORUMの小型PCである「EliteMini HM90」。

 EliteMini HM90は、UM560のRyzen 5 5625Uと同じく、モバイルノートで搭載されることが多い「Ryzen 7 4800U」を搭載している。コア数やスレッド数は8コア16スレッド対応のRyzen 7 4800Uのほうが優れているが、CPUコア自体は1世代古い「Zen2」コアであり、CPUコアの改良が性能にどう影響しているのかを比較的できる。

 PCMark 10のScoreは、ビデオカードを搭載しないミドルレンジのデスクトップPCに近い。ノートPC向けのAPUでも、ここまでの性能を発揮できるようになったことに驚く。さらに言うと、今回行なったベンチマークテスト全般を通してファンの回転数はほとんど上昇せず、動作音は非常に静かなままだった。正直、ここまで静かに利用できることにも驚いた。

 3Dグラフィックスに関する描画性能を計測できる3DMarkでは、AMDのノートPC向けAPUを搭載するノートPCや小型PCと、ほぼ同じScoreとなった。高精細なグラフィックスを多用する最新PCゲームはつらいが、描画負荷が低いPCゲームで設定を調整したり、ブラウザゲームを楽しむ程度なら問題ない。

 個人的にプレイすることの多いテイクツー・インタラクティブの「シドマイヤーズ シヴィライゼーション 4」、アートディンクの「ネオアトラス 1469」、カプコンやSNKなどが発売する昔の格闘ゲームやレトロゲームは、まったく普通に遊べる。

(個人的には一生プレイし続けるであろう)シヴィライゼーション 4やネオアトラス 1469(画像)など、描画負荷の低い戦略ゲームは問題なかった

 CPU性能を反映しやすい「Cinebench」や、動画エンコードテストの「TMPGEnc」については、ほかの6コア12スレッドCPUを搭載するPCに近い結果で、順当なところ。

 Crystal Disk Mark 8.0.4の結果を見ると、ミドルレンジのPCI Express 3.0対応SSDらしい結果となった。PCI Express 4.0対応SSDと比べれば遅いが、Windows 11やアプリの起動はスムーズだし、SSDらしいキビキビとした挙動は変わらない。

 アイドル時の消費電力は6.5Wで、Cinebench R23のマルチスレッドテスト時の最高値は42~45W。3DMarkのTime Spyテスト中の最高値は44~46Wといったところだ。ノートPC向けのAPUを搭載していることもあり、一般的なデスクトップPCと比べると省エネなのは間違いない。

 またベアボーンキットを用意していることを考えれば分かるように、メモリやストレージを簡単に換装できる。横置きした場合の底面には、ゴム製の滑り止めシートがあるので、まずはこれを外す。

こうしたゴムのカバーの下に、固定用のネジが隠されている

 すると精密ドライバで外せるプラスねじがあるので、これも外すと、底面ごと外れて内部にアクセスできる。MINISFORUMのほかの小型PCでは、薄いカードを側面の隙間に挿し、底面を止めているフックを外していく必要があったが、UM560ではそういった作業は必要なかった。

 底面からは2基のメモリスロット、そしてM.2スロットにアクセスできる。どちらも一般的なスロットを利用しているので、市販品を購入して簡単に換装できる。また底面のパネルにも2.5インチシャドウベイがある。パッケージに含まれるケーブルを利用すれば、厚さが7mmまでの2.5インチSSDやHDDを増設し、ファイルの保存容量を増やせる。

内部の様子。左にあるのがメモリスロットで、2基のSO-DIMMメモリが装着済み。左のヒートシンクに覆われているのがM.2対応SSDだ

底面内部には、2.5インチSSDやHDDを固定できるシャドウベイがある

 システムドライブ用のM.2スロットの下にもM.2スロットがあるが、ここには無線LAN/Bluetooth用のカードがすでに挿してある。ここからはアンテナケーブルが引き出されているので、無理に引っ張ってケーブルが外れたりしないように注意したい。

デスクトップPCの可能性をさらに広げる

 UM560が届く前は実のところ、「USB PD対応になっただけか」とも思っていた。しかし箱を空けて筐体を見て驚き、そして検証作業を続けるうちに「これはよいものだ」と心を改めた。個人的にも「購入しようか」と検討を始めたくらいだ。

 もちろん強力なCPUやビデオカードを積んだ大型のゲーミングPCと比べれば性能は控えめだが、それでも軽作業中心なら十分過ぎるほど余裕がある。なにより動作中は非常に静かなので、集中して作業しなければならない場面が多いユーザーにとっては、見逃せない選択肢となる。

 モニターとの相性の良さを生かして、液晶一体型PCを作るもよし。大画面TVにつないで、動画配信サイトや音楽配信を楽しむPCとして使うのもよいだろう。USB PD対応ならACアダプタを選ばないという特性を生かし、モバイル液晶などと一緒に持ち歩けばモバイル端末としても使える。ホテルの大画面TVにつなぎ、複数ユーザーでコンテンツを楽しむのもよい。

 MINISFORUM UM560は、デスクトップPCの可能性を大きく広げる、優れた小型PCと言ってよいだろう。より高性能なモデルが欲しいのであれば、つい先日発表された8コア16スレッドのRyzen 7 5800Hを搭載する「UM580」を選択するのもいいかもしれない。

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