ゼレンスキー氏に拍手も内心複雑 – 野田佳彦

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 ウクライナのゼレンスキー大統領は、3月23日、わが国の国会でオンライン形式の演説を行いました。「ウクライナではすでに数千人が犠牲となり、そのうち121人は子どもです」と惨状を訴えたうえで、「日本はアジアで初めて平和を取り戻すためロシアに圧力をかけてくれた」と謝意を示しました。そして、対ロ制裁の継続と強化を求めました。

 ロシアによるウクライナ侵攻が開始されたのは2月24日。以来約1か月にわたり、ゼレンスキー大統領は首都キエフの大統領府に残って、ロシアに屈しない姿勢をSNSなどで積極的に発信し国民を鼓舞し続けてきました。その不撓不屈の精神が8千キロ以上離れた日本にも、確実に届いたと思います。

 また、大統領は「国際機関が機能しなかった。国連も安全保障理事会も機能しなかった。改革が必要だ」と、訴えました。国連安保理で常任理事国であるロシアが拒否権を行使している状況を踏まえた発言です。

 日本はかねてより国連改革を唱え、安全保障理事会の構成の見直しを主張してきました。今般の大統領の切実な訴えを真摯に受け止め、改めて改革の先頭に立つべきです。

 国連の事実上の最高意思決定機関は、安全保障理事会です。米国・英国・中国・フランス・ロシアの5か国の常任理事国と、加盟国の中から総会で選ばれる10か国の非常任理事国で構成されています。戦後世界の秩序は米英中仏ロの5人の警察官で守っていこうということでしたが、少なくとも今のロシアは国際秩序を破壊する「ならず者国家」になってしまいました。

 戦争犯罪や国際法違反を繰り返すような国は、安保理常任理事国から外すべきです。国連憲章は加盟国の3分の2の賛成で改正できますが、5常任理事国のすべての賛成が条件となっており、ロシアが拒否権を行使すれば実現できません。拒否権改革をどのように進めるのか、あるいは、国連を一旦解散し新しい国際組織をつくるのか。英知を結集しなければなりません。

 12分間の大統領演説が終わると、衆参両院議員は総立ちで大きな拍手を送りました。もちろん私も立ち上がりましたが、内心は複雑な思いでした。それは前日の3月22日に成立した令和4年度予算の中に、ロシアとの経済協力プランに関連するものが盛り込まれていたからです。

 岸田総理はその理由を「ウクライナの状況が不透明であり、日本企業への支援や人道的な支援が含まれている」と、繰り返し説明してきました。が、モスクワなど5つの都市の2100名を対象にした「肥満予防医療プログラム」も入っていました。

 どこが人道支援なのでしょう。ロシアの肥満対策の支援をするより、ウクライナ難民の赤ちゃんにミルクが行き届くようにするほうがはるかに人道的です。この愚かな予算に賛成した人たちとスタンディングオベーションすることに強い違和感を覚えました。

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