eコマース界の寵児 ブルックリネン が実店舗展開に本腰:地元に根ざした販売戦略で差別化図る

DIGIDAY

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2014年に創設されたD2Cのリネンブランド、ブルックリネン(Brooklinen)は、eコマース界の寵児となった。これは同社の効率的なeコマース運用と遍在的なポッドキャスト広告により実現したものだ。そしていま、同社はトレンディな場所への実店舗展開に着目している。

この夏に、ブルックリネンはウエストビレッジとウィリアムズバーグにある既存店舗に加え、ポートランド、サンタモニカ、フィラデルフィアという戦略的に選ばれた3つの地域に、ハイエンドリネンと家庭用品の店舗を新たに開設した。店舗内の顧客のうち平均3人に1人が購入を行い、オンライン売上も増加しており、これまでのところ新店舗は売上増加に貢献している。

「実店舗を開設するたびに、その市場内でのビジネスが促進されるだけでなく、eコマースの売上も急増する」と、同社の小売担当バイスプレジデントを務めるジョシュ・イリグ氏は述べる。

店舗ごとのインサイトを観察する

この展開は、シグネチャー商品以外の成長に向けた、より大規模な転換の一環だ。同社は2021年に枕ブランドのマーロウ(Marlow)を創設しホスピタリティビジネスも計画している

これらの店舗は、「ブルックリネンの名前を聞いたことはあるが、シーツをオンラインで注文するところまで踏み出したことがない」という新規顧客を引き寄せていると、イリグ氏は語る。店舗では、寝具、タオル、そのほかの家庭用品がパッケージから取り出されて棚に並び、買い物客が実際に見たり触ったりすることで、インタラクティブな体験をしてもらう。

「店舗に入れば、すべての商品を見ることができる。買い物客は色のサンプルを引き出してみることができ、店舗内でベッドメイクを行える」と、同氏は述べている。

イリグ氏は、ブルックリネンが在庫の取り揃えを重視し、もっとも人気がある商品は必ず店内に在庫があり、顧客が購入した商品をすぐ持ち帰れるようにしているとも語る。つまり、各店舗のインサイトを注意深く観察し、ある店舗ではほかの店舗よりも何が顧客に人気なのかを見極める必要がある。たとえば、色鮮やかなシーツはウエストビレッジの店舗よりもウィリアムズバーグで人気があると、同氏は語っている。

ブランドの初期の成功の要因は、店舗の場所を注意深く選択したおかげだとしている。「ブルックリネンは、ほかのD2Cブランドがどこに拠点を置いているかに基づいて場所を選び、eコマースのインサイトを活用して、顧客がどこに居住しているかを判定し、ブランドに最適な地域を探した」と同氏は述べている。

「当社は常に、店舗をどこに配置するかについて念入りに検討し、あらゆる店舗が当社のビジネスにおいて利益を生み出せることを目標にした」。

大手小売業者と思われることは望んでいない

しかし、「店舗にはそれぞれの独自性がある」とイリグ氏は語る。たとえば、それぞれの店舗には現地のコミュニティのスタイルを模倣した、特定の内装や外観が選択されている。同氏は次のように述べている。「当社は、地元の人々に近所の店だと思われることを望んでいる。大手小売業者と思われることは望んでいない。これが、我々にとって真の差別化となる要素だと、私は考えている」。

フィラデルフィアのセンターシティーの店舗は、街の中心地にあたるリッテンハウススクエアの近くにあり、白塗りのレンガの内装が採用されている。ポートランドのパールディストリクトにある店舗はニュートラルグレーのトーンで、多少インダストリアルな雰囲気にしてある。サンタモニカの店舗はガラスのバンガローで、ホールフーズ(Whole Foods)と同じブロックの少し先で、ブルーマーキュリー(Bluemercury)の反対側の角にある。

そして、今年の夏遅くに開設されるサンフランシスコの店舗はヘイズバレーにあり、ここは市の商業区で、オールバーズ(Allbirds)、パラシュート(Parachute)、ワービーパーカー(Warby Parker)、アウェイ(Away)の店舗もある。

サンフランシスコの店舗の開設以後に、同ブランドは店舗を調べて何がうまく機能し、何がうまくいっていないかを確認して、今後の展開の基礎を作り上げることを計画していると、イリグ氏は語る。同氏は、ブランドが実店舗の操業をあまり急速に拡大すべきではないと警告している。

同氏は次のように述べている。「自社を無理やりどこかに展開したいわけではない。実店舗を展開する際は、我々がその場所に引き寄せられ、コミュニティとブランドの両方にとって納得がいくものにしたいと考えている」。

外に出てショッピングをしたいという願望

パンデミックのあいだに行われたロックダウンのあとで、買い物に出かける客の数の増加を考えれば、現時点でD2Cブランドから実店舗への移行は筋が通っていると、コンパス(Compass)の商用不動産部門のバイスプレジデントを務めるアレックス・コーエン氏は語る。

米国商務省の国勢調査局(Census Bureau of the Department of Commerce)のデータによれば、2022年第1四半期におけるeコマースの売上額は2500億ドル(約34兆3000億円)で、小売総売上高の14.3%を占めているが、前年の総売上高の14.9%より減少している。

コーエン氏は、この割合はロックダウン時には最高で19%に達し、割合の減少は顧客が外に出てショッピングをしたいという願望を表していると語る。

「大手モールはおおむね良い業績をあげている。COVIDの最中に起こったことを考えれば、空きは最小限のものだった」と同氏は述べている。

また同氏は、マイアミのファッション地区のように、かつては旅行客向けだった屋外小売プラザやショッピング地区が、現在ではミレニアル世代に人気となっている成功例に言及し、これは「ミレニアル世代の移住」の副次効果だと語っている。

キングリテールソリューション(King Retail Solutions)でビジネス開発ディレクターを務めているローランド・フィゲレード氏は、ブランドが実店舗を持つことで、オンラインでは再現できない対面での交流が可能になると語っている。もうひとつの利点として、消費者は対面販売でオンラインよりも多くの商品を見ることができ、店側は人目を引くディスプレイや、店内だけのお買い得品などを提供することが可能だ。

「買い物客はおそらく、ウェブページを見るには10秒や15秒しか費やさないが、店内を歩き回るにはもっと多くの時間を費やすだろう」と、同氏は述べている。

[原文:Brooklinen’s retail expansion aims for neighborhood appeal]

Melissa Daniels(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:猿渡さとみ)
Image via Charlie Schuck

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