リプトンの若年層向けマーケティング、その戦略:「有名人の起用は戦術のひとつだが、ファンの共感を呼ぶのはコンテンツ」

DIGIDAY

ペプシコ(PepsiCo)傘下のリプトン(Lipton)がミレニアル世代とZ世代のオーディエンスに、より効果的にアピールする方法を模索している。そのための施策のひとつとして、エクスペリエンシャルマーケティングに着目したこの紅茶ブランドは、エンターテイナーのT-Painを起用したフェスティバル、デジタル動画、ソーシャルメディア、OOH広告などを企画した。

もうひとつ、「リプトンズファムフェスト(Lipton’s Fam Fest)」と銘打たれたこのフェスティバルには、地域社会とのつながりを深めるという目的もある。黒人経営のレストランが料理を供するほか、限定商品の販売やリプトンアイスティーの無料配布などもおこなうという。そしてイベントの最後を飾るのが、T-Painによるスペシャルパフォーマンスだ。

このキャンペーンと連動して、コミュニティ作りの体験談を競うコンテストも開催されている。参加店舗に設置されたQRコードを読み取って、T-Pain主催のファムフェスト宛てに応募する。受付は8月28日まで。優勝者には1万ドル(約136万円)の助成金とフェスティバルへの招待状が贈呈される。

北米ペプシコ・ベバレッジズ(PepsiCo Beverages of North America)のバイスプレジデントで、CMOを兼任するチャーンシー・ハムレット氏によると、現在、リプトンのマーケティング活動は総じて「ミレニアム世代にフォーカス」しており、「ミレニアム世代とZ世代の支持が厚く、この年齢層に強いリーチ力を持つT-Painとは今後も連携を続ける」という。

より効果的なコミュニケーションを展開

T-Painが「カズン(いとこ)T」を演じる「Have Some Tea with Cousin T(カズンTといっしょに紅茶を楽しもう)」は、リプトンが昨年夏に展開したマーケティングキャンペーンだ。「今年のキャンペーンでは、複数の小売店舗を動員して、T-Painの看板や写真を掲出する」とハムレット氏は話す。さらに、インスタグラム、TikTok、Twitter、YouTbueなどのソーシャルチャネルにデジタル広告を、小売店のディスプレイにOOH広告を出す計画だ。

このような取り組みを通じて、リプトンはより多くのオーディエンスにリーチを広げ、より効果的なコミュニケーションを展開したいとしている。コンテストの賞金に加え、入選者には、それぞれのコミュニティへの貢献をたたえる意味で、リプトンアイスティーのテイスティングキットとレストランのギフトカードを収めたギフトボックスが贈られる。

ハムレット氏はリプトンの予算の詳細を明かしていないため、同社の広告予算のうち、どのくらいの額がマーケティング施策に割り当てられるのかは不明だ。調査会社のカンター(Kantar)によると、リプトンの親会社のペプシコが2021年に使った広告費は6億7400万ドル(約920億円)近くにのぼる。2022年はこれまでのところ、OOHやデジタルOOHなどのマーケティング施策に1億6200万ドル(約221億円)近くが投じられている。ハムレット氏によると、従来のOOHよりも、ソーシャルメディアでのインフルエンサーマーケティングやデジタル広告への支出が多いという。「こうしたイベントや体験型のマーケティングは今年以降も戦略の一端を担うことになるだろう」と同氏は述べている。

音楽とブランドの融合で若年層へのリーチ

リプトンのファムフェストは、ひとつの街区の住民が集まるブロックパーティだ。いまやこのブロックパーティは、音楽文化の一部であると同時にコミュニティ文化の一端を担うイベントでもある。T-Painのファンたちに「カズンT」を楽しんでもらう舞台として、ブロックパーティを活用したリプトンのキャンペーンはまさにうってつけの仕掛けといえる。

ソーシャルデータとAIをベースとしたコンバージョンテクノロジーを提供するインフルエンシャル(Influential)でCEOを務めるライアン・デタート氏もこの考えに同調する。「ペプシコは継続的にイノベーションに注力し、製品やプロモーションを顧客につなぐための道を模索している。コンテストや有名人の起用は戦術のひとつだが、ファンの共感を呼ぶのはコンテンツであり、その点、ペプシコはこの『カズンT』のミニシリーズで大きな成果をあげている」。

キャンペーンに音楽アーティストを起用する飲料ブランドはリプトンだけではない。最近では、スプライト(Sprite)ドクターペッパー(Dr. Pepper)も音楽とブランドの融合で人々をつなぎ、ミレニアル世代やZ世代へのリーチを試みている。

「コミュニティと住民の連帯感に貢献する活動に、ブランドがひと役買うというのは心に響く」。成長戦略を提供するコンサルティング会社のプロフェット(Prophet)で、経営陣の一角を担うアマンダ・サーストン氏はそう話す。「助成金という要素を加えることで、消費者だけでなく、ペプシコのバリューチェーンを構成する小売店や従来的な取引業者を巻き込むこともできる」。

[原文:Lipton is looking to be ‘relevant for millennials and Gen Z’ with experiential, digital ads as well as partnership with T-Pain

Julian Cannon(翻訳:英じゅんこ、編集:黒田千聖)

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