【#NoFilter 2.0】 Z世代 がビィーティフィルターに反発:TikTokとInstagramで拡大中

DIGIDAY

ビューティ系のTikTokに少しでも時間を費やしたことがある人なら、「glow up(註:美しく変貌すること)」のトレンドに気づいているだろう。数年前から、さまざまなサウンドを設定した動画で、インフルエンサーが素顔から完全にグラマラスなルックに変身する様子がフィーチャーされている。しかし最近では、ビューティフィルターで顔を変化させる効果を詳しく吟味する方向へとそのスタイルが覆っている。

フィルターを使用した顔に反発するZ世代

シミを消し、肌を柔らかくし、顎のラインを整えるビューティフィルターは、幅広い年齢層のソーシャルメディアユーザーのあいだで広く使用されている。だが、非現実的な美の基準やメンタルヘルスへの影響が懸念されるなか、Z世代はもうたくさんだと言い始めている。TikTokやインスタグラムのリールにおける「フィルター VS 現実」の投稿の増加は、インフルエンサーや一般ユーザーのフィルターに対する反発が高まっていることを示しており、TikTokでは現在、ハッシュタグ #filtervsreality が1億1450万ビューまで上昇している。一方、広告規制機関、代理店、ブランド、小売業者も、プロモーションコンテンツにおけるこの行為を敬遠し始めている。

3月下旬から4月上旬にかけて、チャーリー・ダミリオ氏(フォロワー数1億4180万人)、ブルック・モンク氏(フォロワー数2030万人)、ケイティ・フィーニー氏(フォロワー数690万)といった主要インフルエンサーや、女優アシュレイ・ティスデイル氏が、トゥエンティ・ワン・パイロッツのフィルターの曲に合わせて、フィルターという概念を揶揄するバイラルトレンドを牽引している。このトレンドに参加したインフルエンサーは、大げさなAIのビューティフィルターを使って登場し、次にそれをオフにして自然な顔をあらわにした。「glow up」のフォーマットと同じように、これらのアンチフィルター動画は、最近バイラルになった「これは私の顔じゃない」という音声など、さまざまなバイラル音声トラックともにTikTokとリールの両方でトレンドになっている。

ビューティ企業もスポンサーとなったアンチフィルターキャンペーン

これらの動画はZ世代のあいだに広まったフィルターの使用に対する反動だ。学生ロイヤルティネットワークのスチューデントビーンズ(Student Beans)の調査データによると、英国では57%、米国では62%のZ世代がソーシャルメディアの投稿にフィルターを使用している。その目的として、英国の43%、米国の23%のZ世代が、自分の見た目を「著しく」変化させるためとしている。ロンドン大学シティ校の調査では、若い女性の90%がソーシャルメディアのフィルターを使用しているという、さらに極端な数字が出ている。ただしこの統計では、犬の耳をつけたり、画像を白黒に変えたりするものを含む、すべてのフィルターの使用を反映している。

「これらのフィルターで、左右対称の顔、キャットアイメイクに大きな唇、すらっとした鼻、輪郭のある顔になる。それはまさに社会がすべての女性に望んでいる見た目だ。スマホを持つすべての人が一瞬のうちにそれにアクセスできるのは、心配を通り越している」と話すのは、インフルエンサーのサーシャ・パラーリ氏だ。モデルでメイクアップアーティストでもある彼女は、2020年7月にインスタグラムでアンチフィルターキャンペーン#FilterDropを開始した。そのキャンペーンの一環として、彼女がフィルターをかけた顔とかけない顔の動画を公開したところ、人々がすぐに反応して自分たちの動画や顔を横に並べた写真を投稿して参加し始めたことに気づいたという。彼女は、クラランス(Clarins)、E.l.f.ビューティ(E.l.f. Beauty)、アーバンディケイ(Urban Decay)、カルトビューティ(Cult Beauty)、ビューティパイ(Beauty Pie)などのビューティ企業がスポンサーとなった#FilterDropキャンペーンの一環として、インタビュー動画シリーズを主催している。

英では誇張や誤解を呼ぶフィルター使用を禁止

もうひとつ、パラーリ氏が気づいたことがある。それはインフルエンサーがスポンサードコンテンツで頻繁にフィルターを使用し、加工された画像や動画に基づいてビューティ製品の効果を主張していたという点だ。英国を拠点とするパラーリ氏は、この件を英国広告基準協議会(Advertising Standards Authority、ASA)に報告することにした。2021年2月には、英国政府の規制当局は、インフルエンサーがソーシャルメディア上で「化粧品やスキンケアの効果を誇張する」ような「誤解を招く」フィルターの使用を禁止する決定を下した。同月には、フィルターを使用してタンニング製品の効果を主張していたインフルエンサー2名に対し、当局が裁定を下している。

ASAのこの発表を受けて、ブランドや企業もこの流れに乗り初めている。フダ・カタン氏は2021年3月にフィルターを使用しないことを誓った。今年4月にはオグルヴィUK(Ogilvy U.K.)が、フィルターを使用するインフルエンサーとの提携をやめると発表した。

米大手チェーンのフィルター反対の取り組み

米国連邦取引委員会は同様の方針を制定していないが、米国では薬局チェーンのCVSがフィルターに反対の立場を取っている。2018年に同社がローンチした画像加工に関する透明性の方針であるビューティマーク(Beauty Mark)の一環として、同社はソーシャルメディア上のスポンサードコンテンツでインフルエンサーがフィルターを使用することを禁じている。

「小売業者としての我々の役割は、まさしくブランドのためにこの会話を最前線に持ち込み、影響を与えることだ」と、CVSのビューティ&パーソナルケア・マーチャンダイジングバイスプレジデントのアンドレア・ハリソン氏は語る。彼女いわく、「ソーシャルメディアは、非常に多くの顧客が最初にビューティ製品を見つける方法であり、それがどのくらい効果があるのかを見る最初の場所」であるため、CVSではインフルエンサーマーケティングに力を入れている。禁止事項を実施して以来、CVSは、フィルターなしのスポンサードコンテンツで9000万以上のインプレッションを獲得しているインフルエンサー1000人以上と提携している。

CVSではフィルター禁止を強調するために、2021年10月に10日間の #CVSFilterDetox チャレンジをソーシャルプラットフォーム上で開始、このキャンペーンのために、TikTokとSnapchatで、大きく加工したAIメイクのルックが消えてユーザーの顔が明らかになるブランドのフィルターを作成した。また参加者に対して、10日間は自分のソーシャルコンテンツでフィルターの使用を控えるよう呼びかけている。キャンペーンにはペロトン(Peloton)のスターでメイクアップアーティストのトゥンデ・オイネイン氏、メンタルヘルスに特化したインフルエンサーのヴィクトリア・ギャリック氏、、心理学者のマリエル・ブケ博士といった、インフルエンサーやソーシャルメディアの有名人が参加した。CVSによると、ブランドのフィルターはSnapchatで40万回近く使用および保存され、キャンペーンはSnapchat、TikTok、インスタグラムで4900万ビュー以上を達成している。

改変された画像によるメンタルヘルスへの影響

CVSの取り組みの主なメッセージは、改変された画像によるメンタルヘルスへの影響だ。そのデジタルイニシアチブの一環として、メディア心理学者のパメラ・ラトリッジ博士とコンサルティング・リサーチ会社のハリス・ポール(The Harris Poll)とともに、18~35歳の女性を対象に調査を行ったところ、毎週ビデオ通話に時間を費やす人の45%が、自分の外見を変えるためにフィルターを使用していることが判明した。

「発達上、プレティーン、ティーン、ヤングアダルトの全課題は、自分が何者であるか、どのように世界に自分の居場所を作るかを見つけ出すことだ」とラトリッジ博士は言う。「その年代の人々は、社会的な検証や社会的なフィードバックに対して、より脆弱になりつつある」。

ラトリッジ博士によれば、たまにフィルターを使うことは必ずしも問題にはならないが、「そこで危険なのは、加工していない写真を載せることに自信が持てなくなってしまい、自分のイメージを変え始めたとき」だという。これは「決してなることのできない理想の自分」というイメージを作り出してしまう。

「『自分はあのインフルエンサーやこのモデルに似てる?』ではなく、『自分には自分が自分らしく見えない』なのだ」と博士は指摘した。

完璧な見た目というプレッシャーを感じる若者は多い

しかし、過剰なフィルター使用のなか、Z世代がフィルターにより精通するようになっている事実を示す兆候がある。スチューデントビーンズによると、調査回答者の88%が、フィルターを使った投稿とそうでない投稿の区別がつくと回答した。また、米国の回答者のうち52%が、公人がフィルターを使用している場合は、それを公表すべきだと考えている。

パラリ氏はフィルターについて「Z世代は、このようなことに敏感であるという点を、もっと評価されるべきだ」と述べている。

「技術に慣れれば慣れるほど、批判的な思考ができるようになる」とラトリッジ博士は言う。「テクノロジーを理解することで、視覚的なリテラシーを身につけることができる」。だがより認識が深まったとしても、そもそもこうした技術への需要を喚起しているのは文化なのだ。

「完璧に見えなければならないというプレッシャーを感じている若者は、恐ろしいほどたくさんいる」と博士は言う。「何をするかよりも、美しくあることで評価される人々を私たちはいまだに目にしている」。

[原文:#NoFilter 2.0: Gen Z’s beauty filter backlash is growing on TikTok and Instagram]

LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida、編集:黒田千聖)

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