年間最大70日間の有給休暇を提供する エージェンシー の狙い:「重要なのはデスクに座っている時間数ではない」

DIGIDAY

多くのエージェンシーたちが従業員をオフィスに呼び戻すなか、ティヌイティ(Tinuiti)は従業員に与える休暇を増やしている。パフォーマンス・マーケティングを手掛ける同社は最近、従業員の燃え尽き症候群を防ぐ取り組みを強化し、年間最大70日間の有給休暇を提供している。アメリカ労働統計局によると、昨年、勤務2年目以降のアメリカの民間企業の従業員の3分の1以上が受け取っていた有給休暇の日数は、10日から14日だ。

この70日間に含まれるのは、全社で強制的に行われる一週間の休暇が3回と、通常の休日、メンタルヘルスの日、年間最低20日間の有給休暇、そして社員が現地時間の午後1時に退社できるフレックスフライデーなどだ。病欠時間はその休暇には含まれておらず、この新方針は従業員の給与に影響しない。ただし、従業員は3週間を超える連続した有給休暇は取得できない。同社の最高人材活用責任者であるジェフ・バツハン氏によれば、顧客のニーズを損なわないため、スタッフには緊急時対応として自主的に待機することを奨励するインセンティブが与えられているという。

しかし、有給休暇を増やすことが、従業員の燃え尽き症候群や人材獲得競争に勝つための唯一の解決策というわけではない。調査によると、業界全体、そしてアメリカの企業全体においても、休暇日数に制限がない環境では、従業員の休暇取得日数が減ることが多い。多くの場合、休暇を何日取るべきかの指針がないからだと、ファスト・カンパニー(Fast Company)が伝えている。

有給休暇付与日数の増加は、オミクロン変異株の拡大がピークに達した2021年後半に、従業員に回復の機会を与える取り組みとして始まった。この1年間、そして「人材獲得戦争」が騒がれる真っ最中に、エージェンシーたちは従業員を引き付けるだけでなく維持するためにあらゆる手段を講じてきた。米DIGIDAYはバツハン氏にインタビューし、パンデミックのあいだもスタッフの活力を維持すること、ワークライフバランス、そしてティヌイティの仕事の未来について話してもらった。

以下、インタビュー内容をわかりやすくするために若干の編集を加えてある。

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−−多くの代理店がオフィスに来るスタッフを増やそうとしているなか、あなたはより多くの休日を提供している。それはなぜか?

従業員に仕事を達成してもらうためのエンパワーメントを与えようとしている。デスクにいる時間が重要なのではない。コンピュータにログインすることではなく、仕事を完了することが重要だ。私たちには、成果重視の文化が強く存在している。このことは、仕事をやり遂げるためにはより長時間働くこともあることを意味している。一日8時間働くとなっていても、時に10時間働くこともあれば、8時間以下の時もある。我々が持っている文化は(時間と仕事の管理に関して)自らでコントロールする文化だ。

また、他の人たちも休暇を取っている時は休暇を取りやすい。誰かの代わりにクライアントからメールを受け取ることもなければ、誰かに仕事を代理で頼む罪悪感もない。(これらの罪悪感などが理由で、通常は)多くの従業員が有給休暇を取得しない。同僚が自分の仕事を引き受けなければならないことを申し訳なく思うからだ。でも、他の全員も休暇を取っているのであれば、心置きなく休暇を取り仕事を忘れることができる。

−−こうした取り組みは、人材獲得戦争や「大辞職時代」についてのより大きな議論のなかでどのように位置づけられるのか?

人材を引き付け、維持することは、間違いなく当社の人材戦略の一部だ。従業員と文化について意識的に取り組んでいる。(休暇の増強は)焦点を当てている分野のひとつに過ぎない。なぜなら、「人を第一に考える」ということは、言うのは簡単だが、行うのは難しいことだからだ。私たちは会社の創業以来、何よりも人を優先させようと懸命に努力してきた。クライアントよりも、利益よりも、困難な時にも好調な時にも、何よりも自分達の従業員を優先させようと。例えば、(パンデミックが起こったとき)私たちは誰も一時解雇せず、どうすればより戦略的になれるかに集中した。なぜなら、私たちが従業員にコミットしていれば、彼らは私たちにコミットすることを知っているからだ。

−−70日間の休暇となると、年の20%近くを占める。これは多い。どうやってそのことをクライアントに伝えているのか?

我が社においてオーナーシップの文化と成長の喜び、を重要視していることを伝え、それがクライアントにとって何を意味するのかについて話す。なぜなら、クライアントに提供するパフォーマンスは、我が社では彼らのビジネスの成長を促進する従業員の満足によって測定されるからだ。彼らは、我々の従業員が集中し、確実な仕事をし、一生懸命働くことを知っている。それはオフィスで働いている時間がどれだけあったか、ではなくパフォーマンスで測定される。また、チームが休暇中であっても、何かタスクがあれば、それが達成されることもクライアントは理解している。私たちは彼らと2カ月前に(休暇をめぐる新しい方針について)連絡を取り始めた。彼らと一緒に、組織変更の管理を行うというプロセスだ。彼らにはちゃんと説明がされていることが目的で、彼らもそれを評価している。

−−顧客からの反発はあったか?

質問は多く寄せられるが、そのたびに対処してきた。(新しい休暇方針が)どのように機能するか、顧客自身がちゃんと理解しようとして問い合わせや質問をしてきている。

−−あなたのアプローチから他のエージェンシーたちは何を学ぶことができるか?

「人を第一に考えている」と言うのであれば、実際に行動を起こす必要がある。口先だけではだめだ。いま一部の企業では、社員がオフィスに戻りたくないのに、社員を強制的にオフィスに戻そうとしている。本当に従業員のことを気にかけているなら、彼らの言うことを聞くべきだ。自主性、柔軟性、これらは今日の多くの従業員が気にかけていることだ。

[原文:‘It’s not about the time at your desk’: Why this agency is giving employees 70 days off

Kimeko McCoy(翻訳:塚本 紺、編集:黒田千聖)

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