Apple、BNPL(後払い)サービスに参入:強固な顧客基盤と競合他社への影響

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Appleが、バイ・ナウ・ペイ・レイター(BNPL(後払い))サービスを正式に開始する。ちょうどこのカテゴリーが減速に直面しているときである。

Appleは、6月6〜10日に開かれたWWDC2022カンファレンスで、Apple Pay Later(アップルペイ・レイター)を発表し、iOS16におけるApple Wallet(アップルウォレット)のアップデートの一部として展開する予定だ。このサービスは以前から計画されており、昨夏にブルームバーグによって初めて報じられた

減速するBNPL業界

同社によると、Apple Pay Laterは、マスターカードのネットワークを利用する。また、米国内のユーザーは、Apple Pay(アップルペイ)での購入代金を6週間のあいだで4回に分割して支払い、利息も手数料は一切不要な、シームレスで安全な方法を利用することができる。

このモデルは、過去数年間に買い物客や小売業者の間で成長を遂げたアファーム(Affirm)や、アフターペイ(Afterpay)、クラーナ(Klarna)といったBNPL新興企業による既存のサービスに類似している。これらの企業は、ブランドが顧客の買い物かごのサイズを拡大するのに一役買ったと評価されている。しかしここ数カ月、多くのBNPL新興企業がレイオフによるコスト削減、雇用の縮小、そして市場の飽和に伴う成長の鈍化を経験している。

Appleは、このカテゴリーの新興企業にとって不安定な時期に分割払いを開始したのだ。たとえば、スプリティット(Splitit)は利益を出すためにB2Bビジネスにに軸足を移した。スウェーデン発のクラーナは、5月下旬に10%に相当する数の社員を解雇した。一方、アフターペイは昨年末、290億ドル(約3兆9000億円)でブロック(Block/旧Square)に売却し、イグジットに踏み切った。

競合他社の反応

発表から数日間、BNPL企業の経営幹部たちが、Appleの業界参入について揃って発言している。クラーナの共同創業者兼CEOであるセバスチャン・シーミアトコウスキー氏は、Appleのニュースを受けて、<a href="http://“>Twitterのスレッドを立てた

同氏は、「Appleが消費者金融のより良い形を取り入れるようになったことは、世界中の消費者にとって大きな勝利だ」と投稿し、「盗作は、最高のお世辞の形だ」と冗談を言った。

アファームの創業者兼CEOのマックス・レブチン氏は7日、ブルームバーグTVで、AppleのBNPLサービスと競合することについて、「心配はしていない」と述べた。「あまり懸念することはないだろう。このカテゴリーの関係者たちが成長する余地はまだまだある」

アファームの広報担当者は米モダンリテールへの声明のなかで、「消費者は特に今、クレジットカードに代わる、より透明で柔軟な選択肢を求めている。アファームは、10年近く前から、6週間から60カ月までの期間がパーソナライズされた支払いプランを通しててその選択肢を提供してきた」と発言している。また、20万件の加盟店との提携についても言及している。「我々が始めた運動に参加するプレーヤーが増えたとしても、我々の保有する賞金は依然として大きく、アファームは勝つために有利な位置にいる」。

アファームが5月に発表した最新の四半期決算報告書では、同社が今もなお成長を続けていることが示されている。ユーザー数は前年比137%増の1270万人、売上高は同54%増の3億5500万ドル。しかし、営業損失も拡大しており、前年の2億930万ドル(約280億円)から2億2660万ドル(約305億円)となった。

BNPL界のビッグプレイヤーとなるか

Appleは世界最大のハイテク企業であり、その存在は、BNPL新興企業にとってさらなる競争を引き起こすと業界関係者は予測している。

レンディングツリー(LendingTree)のチーフクレジットアナリストであるマット・シュルツ氏は、「その規模を考えると、Appleが、BNPL界のビッグプレーヤーに急浮上する可能性が高い」と述べている。今回発表された新機能は、現在Appleでの購入時にアップルカード(Apple Card)の保有者が利用できる、既存の分割払いオプションを少し拡張したものである。

Apple Pay Laterは、少なくともiOSユーザーにとっては、BNPLの参入障壁をある程度低くするものだ。シュルツ氏は次のように説明した。「Apple Payのユーザーが、ほかの貸し手のアプリをダウンロードすることなく、また、お気に入りの小売業者が提携しているBNPLサービスはどこであるかにこだわることなく、BNPLスタイルの分割払いにアクセスできるようになるということだ。これは大きなことだ」。

「これは、BNPL業界の大手企業にとってトラブルを意味するかもしれない。だが、それは明らかにBNPL型ローンが定着しつつあることを明確に示している」とシュルツ氏は続けた。「消費者が、4回払いという、有限で典型的な無利子ローンをどれほど愛しているかを示しており、金融業界は間違いなくそれに気づいたのだ」。実際、大手銀行の中には、若い顧客のクレジットカード利用が減少していることから、すでに独自のBNPLプログラムを構築しているところもある。

Appleの顧客基盤

また、AppleがBNPLに独自の工夫を凝らすと予想する人もいる。

プライベートブランドによるクレジットカードのプラットフォームであるタンディム(Tandym)の共同設立者であるジェン・グラスピー=ルンドストロム氏は、「多くの金融機関が分割払いを提供しているが、Appleが何かをするということは、そのカテゴリーにとって大きな意味がある」と述べている。同氏はさらに、顧客獲得に関してアップルが持つであろう利点をいくつか挙げている。

ひとつは、同社とそのデバイスには大きな既存顧客基盤があることだという。「Apple Payはすでに流通しており、BNPLオプションはApple Payが使えるところならどこでも使えるということだ」。

Appleは、金融サービスを拡大するとともに、eコマース機能も強化している。同社はApple Pay Order Tracking(アップルペイ・オーダートラッキング)を発表し、ユーザーはApple Wallet内で領収書やオンライン注文を表示・追跡できるようになった。この機能は、Shopifyが現在、顧客向けのShopアプリで提供しているものと類似している。

グラスピー=ルンドストロム氏は、「いくつかの理由から、統合が進むと考えられる」という。「まず、景気後退期に入り、キャッシュフローが厳しくなっていること。もうひとつの要因は、BNPLサービスが新たなクレジットラインの負債を助長しているとして批判を受けていることだ」。同氏はさらに、Apple Pay Laterがその点でBNPLを改善する可能性があると述べた。「人々のデジタルウォレットにApple Pay Laterを組み込むことで、分割払いに対してより規律のあるアプローチができるかもしれない」。

シュルツ氏は、Appleの参入は、BNPL業界における転換点を示していると述べている。

「アファーム、アフターペイ、クラナのような企業は、ブランドの認知度を高め、BNPLビジネスでもっとも有名なプレーヤーになるために素晴らしい仕事をしてきた。しかし、BNPLの領域に足を踏み入れる巨大企業が増えることで、競争はますます厳しくなっていくだろう」。

[原文:How Apple’s entry into buy now, pay later could impact the competition
]

Gabriela Barkho(翻訳・編集:戸田美子)

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