日頃料理をしない私だが、たまにお弁当をちゃんと作ってみたいなと思うことがある。
お弁当といえば彩りだ。揚げ物ばっかりで茶色になったりしがちだが、美味しそうに見せるため、ふつうの食事以上にカラフルにするのがよしとされている。
逆に、彩りを全く排除して、一色だけでお弁当を構成してみたらどうなるだろう。
白、赤、オレンジ、緑、黒、いち弁当につき一色のみを使ってお弁当を作りました。
※2006年3月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
まずはルールのご紹介から
というわけで、初日は白のみのお弁当を作ってみた。食べた感想に移る前に、まずは製作にあたるルールをある程度考えたのでご案内させてください。
1、単色とはいえ、栄養バランスにはなるたけ気を配る(ごはんのみ、肉のみで構成しない。)。炭水化物とおかずで構成する。
2、食事時は飲み物も同系色でそろえ、別の色の物は一切摂らない。
3、食紅などで人工的に色をつけない。
「栄養をバランスよく取るため毎食に5色を取り入れよう!」なんていわれて、茶色のものばっかり食べていると罪悪感さえ感じたりするものだが、今回ばかりは本気で指定の色だけを食べる。
そうして手始めに作ってみた白のお弁当が上の写真である。
第一のお弁当、白べんとう
白だけ! という縛りのおかげでメニューはかなりサクサク決まった。その日のおかずを何にするかってよく聞く日常の悩みなわけだが、色が決まっているとラクだ。
ただし、白くするためはんぺんにもエノキに焼き目は厳禁である。調理時はそのあたりを注意した。それでは、食べてみましょう。
パカ。お弁当箱を開ける。白い。分かっているのにちょっとビックリだ。それにしても白い。
そして食べた結果である。
白いお弁当の感想 ・食べた気がしない |
そう、なんだか、おいしくなかったのだ! 彩りも味わいのひとつであることは分かっていた。けれど、うずらの卵である。はんぺんである。チーズである。そして白いご飯である。全部大好き食材だ。なのに!
これはショックだった。真っ白なので、なんだか気色の悪ささえ感じてしまった。全く予想外の結果だ。思わず、ふだんは一口で食べるウズラの卵をかじってなかの黄色を確かめた。
やはり 味わいはかなり目で楽しんでいる部分が大きいんだろうか。
食べ物を色紅で青くするライター大塚さんの企画「青くする実験」では、食べ物が青いことで生理的に受け付けなくなっていたが、今回は普段食べつけているおかずたちである。なのに。驚きつつも、明日は赤食材で作ってみようと思う。はらはら。
食欲のふしぎ
白いお弁当ですっかり彩りのなさにガックリきてしまったが、赤はどうか。
赤。トマトやパプリカはすぐ思い浮かんだが、主菜を何にするかで悩んだ。紅シャケ?と思ったが、よく見るとあれはオレンジ色のような気もする。
そんなとき出会ったのが上のウィンナーだ。「トマト色した」ってこの企画のために開発してくれたんじゃないか。ありがたく使う。
さて、問題の味(というか、食べて感じたこと?)であるが、今度は全く問題なく美味しく最後まで食べられたのだ。
赤いお弁当の感想 ・白のとき感じた無力感はまったくない |
白って「なにもない色」だとも考えられる。赤は明らかに「色」だ。色がある分よかったんだろうか。一口で赤といっても、ケチャップライスの赤は見ればオレンジ色に近い。目が彩りだと思ってくれたのか?
天気がよかったので外で食べたというのも影響しているのかもしれない。
赤の成功でかなりテンションも持ち直してきた。さて、赤が大丈夫ならオレンジ色もいけるんじゃないか。
オレンジ色って、何色?
黄色いお弁当は、デイリーポータルでも以前取り上げられた「みかんご飯」を主食にした(ちなみにみかんご飯も青いご飯と同じライター大塚さん担当である。デイリーポータルにおける色ご飯の方だ)。
大塚さんはみかんをしぼっていたが、ポンジュースで炊くのでも良いようなのでジュースでやってみた。これが美味しくてビックリである。
そこまではよかったのだが、上のオレンジ弁当の写真、いかがだろうか。なんか、白弁当や赤弁当にくらべて色がばらばらじゃないか?
デザートに買った いよかんなんか、これ黄色だ。せっかく炊いたみかんご飯も、カボチャも黄色っぽい。みかんもカボチャも いよかん もオレンジ色だと思っていたのに、まさか黄色だったとは。
以前、色々な色の16進数のウェブカラーで確かめるというネタをやったのだが(特集「その色はなに色か」)、そのとき「シロクマは実は白くない」ことを知ったときのことを思い出した。
オレンジ弁当の感想 ・うまくオレンジ一色で作れなかった |
白と違って、赤やオレンジには色の幅が広い。では、黒はどうだろう。
次、黒べんとう、いきます。
それにしても、このオレンジ弁当、せっかく朝作ったのに家に忘れてしまった。朝作ったお弁当を夜食べる悔しさって、世の中の悔しいこと上位に食い込むと思う。
歯までまっくろ黒べんとう
真っ黒というと、炭水化物パートは のりべん だろう。イカスミパスタという手もあるが、お弁当という感じではない。中のご飯が白いのは キングオブ弁当、のりべん に免じて許してください。
パスタにはしなかったが、イカスミはソースをイカにからめて使った。
で、食べてみたのだが、これがまた他の色とはちょっと違う印象だった。
黒黒弁当の感想 ・目でお腹がいっぱいになった |
白のときのように美味しくないとまでは思わないが、とにかくお腹いっぱいだ。黒豆は大好物なのだが、ひじきを食べている時点で「黒豆は残そうかな」などと考えていた。
黒に満腹効果があるという話は聞いたことがないけど、そうなのか? 結局、ご飯の白さに助けられて完食。
そんなわけで、白、赤、オレンジ、黒と食べてきた。それぞれ違った印象だ。あとは「栄養の5色」の残り、緑だろう。
でも緑の炭水化物って何だろう? うちではよく、白飯に野沢菜漬を敷き詰める弁当なんかをよくやったが、あれだと海苔弁みたいにまた下が白いご飯になっちゃうなあ、と、思っていたところに、緑のパスタを発見。
普段ちょっと買わない、ましてやお弁当に使うなんて考えたこともない私にとってはおしゃれ食材であるが、勇んで買ってきた。
全部野菜に見えるんですが
最初に言うと、みどり弁当は食べている最中に「ああ、お寿司が食べたいなあ」と思った。
黒弁当同様 満腹感がくるのが早いうえ、他の弁当にはなかった「他の色のものが食べたい!」という気持ちがモリモリ沸いてきたのだ。やっぱり、緑って野菜のイメージなのだ。開けたときの脱力感も今回一であった。
献立にもっと凝るべきだったか。抹茶なんかを使ってもう少しこちょこちょ詰めてみたかったのだが、寝坊弁当になってしまった。ほうれん草とピーマンの炒め物って、その時点で子供も大人もがっかりだ(美味しかったし私は好きなのだが)。緑一色というのもやっぱり難しい。
みどり弁当の感想 ・黒べんとう以上に目でお腹がいっぱいになった。 |
そういったわけで、白、オレンジ、赤、緑、黒のお弁当を食べてみた。最後に全おべんとうの特徴をまとめてみました。
レッド :お弁当として問題なし
オレンジ:食材の色を完全にそろえるのはかなり難しい
グリーン:すべてが野菜に見えてくる
ホワイト:なぜか、怖いおべんとう
ブラック:すぐにお腹がふくれる
作るのはすごく楽しい単色弁当
料理を作り慣れない私としては、お弁当でも普通のご飯でも、献立が一番迷う。何と何を組み合わせたらバランスがいいのかいまいちピンとこない。
でも、単色弁当と決めておくと選択肢が限られてくるので選びやすくてすごく楽しかった。イカスミとか、ほうれん草のフェットチーネとか普段だったら絶対食べないようなものにも手が伸びる。
が、だ。食べた感じの物足りなさといったら思った以上だった。白にいたっては、目の前の食材が、なんか怖かった。真っ白で。
そうだ、これ大勢用のお重のお弁当なんかで、一の重は白、二の重は赤、というだとかなりいいんじゃないか。結局はいろんな色が食べれるし。お花見弁当に、単色弁当、どうですか。