ディズニー 、ストリーミング広告価格の大幅値上げを狙う:エージェンシーからは疑問の声

DIGIDAY

ディズニー(Disney)はディズニープラス(Disney+)で、広告付きストリーミング大手の広告価格の最高値を更新しようともくろんでいるようだ。ディズニープラスの価格設定は、2022年のテレビ広告アップフロント市場におけるストリーミング広告価格の幅広い値上げを象徴している。同じディズニー傘下のHulu(フールー)、Amazon、さらにはフォックス(Fox)のトゥビ(Tubi)もアップフロント広告主に高値の支払いを求めている。

複数のエージェンシー幹部によれば、ディズニーは広告主とそのエージェンシーへの最初のピッチで、ディズニープラスのCPMを50ドル(約6341円)程度にすることを提案しているという。

この価格設定は、2歳以上の全視聴者を対象にした「P2+」という広範なターゲティングに適用される(ただし、ディズニーはエージェンシー幹部に対し、7歳以下の視聴者を対象にした番組には広告を表示しないと伝えている)。つまり、ターゲットを絞った広告ほど、ターゲティングの度合いに応じてコストが上がると予想される。これについて、ディズニーの広報担当者はコメントを控えている。

エージェンシー幹部は難色を示す

50ドル(約6341円)というディズニープラスのCPMは、NBCUniversal(NBCユニバーサル)のピーコック(Peacock)とワーナー・ブラザース・ディスカバリー(Warner Bros. Discovery)のHBOマックス(HBO Max)が2021年のアップフロント市場で求めた価格を超えており、広告バイヤーに衝撃を与えた。

2021年、ピーコックは30~40ドル(約3808〜5077円)、HBOマックスは40ドル(約5077円)以上のCPMを求めていた。これに対し、Hulu、ディスカバリープラス(Discovery+)、パラマウントプラス(Paramount+)など、ほかの広告付きストリーミング大手が設定したCPMは20ドル(約2539円)台前半だ。その結果、ピーコックとHBOマックスは法外な高値を求めたことになり、それを理由に、一部の広告主は支出額を抑制した。

当然ながら、エージェンシー幹部はディズニープラスの価格設定に難色を示している。「彼らはもう存在しない価格設定を引き合いに出している。ピーコックとHBOマックスは高すぎたことを認め、値下げに踏み切った。ディズニープラスは耳をふさぎ、その後半部分をなかったことにしている」と、あるエージェンシー幹部は話す。

高値を求めるのはディズニーだけではない

しかし、広告バイヤーが支払ってきた価格を引き上げようとしているストリーマーはディズニープラスだけではない。

複数のエージェンシー幹部によれば、Huluも2022年のアップフロントで値上げを目指しており、平均20~25ドル(約2539〜3174円)だったP2+のCPMが25~30ドル(約3174〜3808円)になるという。また、フォックスの広告販売担当プレジデントを務めるマリアンヌ・ガンベリ氏は5月16日の電話会見で、2022年のアップフロント市場では、広告付き無料ストリーミングTV(FAST)サービスであるトゥビ(Tubi)の値上げを求めると予告している。トゥビの現在の価格は不明だが、通常、FASTサービスのCPMは10ドル(約1270円)台前半だとエージェンシー幹部たちは報告している。

「トゥビの価値を引き出さなければならない。トゥビはこの2、3年で2倍、3倍と成長している。だから、私たちはそれを優先し、量だけでなく価格を追い求めるつもりだ」とガンベリ氏は述べている。

エージェンシー幹部によれば、Amazonプライム・ビデオとTwitch(ツイッチ)で配信される「サーズデーナイトフットボール(NFLのレギュラーシーズンの試合中継。以下、TNF)」のピッチでも、Amazonはフォックスの2021年の金額より高値を求めているという。AmazonはTNFの広告を従来のテレビ広告と同じように扱おうとしている。つまり、ターゲット広告を動的に挿入するのではなく、すべての視聴者を対象に、各広告枠に同じ広告を表示するということだ。別のエージェンシー幹部は「ストリーミング放送だ」と話す。

Amazonの広報担当者は価格設定についてのコメントを避け、一般的な説明を行った。「プライム・ビデオとTwitchのTNFは純粋なデジタル放送であり、ファンの皆さんに新しい視聴体験をお届けできることに興奮している。米国では、8000万世帯がプライム・ビデオを視聴しており、TNFの視聴者を対象にした2021年の調査では、38%が有料テレビサービスを利用していないと回答している。つまり、プライム・ビデオとTwitchのTNFはブランドにとって、有料テレビサービスをやめた人や使ったことがない人とつながる機会だ。また、ブランドはTNF以外でもこれらの視聴者にリーチできる。私たちのファーストパーティインサイトを利用すれば、フリービー(Freevee)のコンテンツなど、Amazon全体でTNFのオーディエンスにリエンゲージできる」。

DIGIDAYが取材したエージェンシー幹部のひとりは、Amazonの価格設定はフォックスの2021年の金額より10%高いと述べている。ただし、フォックスの2021年の金額は不明で、ほかのエージェンシー幹部によれば、Amazonが求める金額もさまざまだという。アドエイジ(Ad Age)は2月、Amazonがフォックスより最大20%高い金額を求めていると報じた。2人目のエージェンシー幹部は「一貫して10%高いかどうかはわからないが、間違いなく値上がりしている。結局、フォックスは思ったほど利益が上がらず、この秋の放送を諦めたのだから、今回の値上げはおかしな話だ」と首をかしげる。

さらに、このエージェンシー幹部はAmazonによるTNFのピッチについて、「価格設定をまとめる前に、誰かがグミを食べ過ぎていて、うまく話せなかったのだろう」と漏らしていた。

テレビ局にとって「最大のビジネス」

広告付きストリーミングサービスの所有者も、広告ターゲティングにメディア企業や広告主のファーストパーティデータを活用するなど、広告主がストリーミングキャンペーンでより高度なターゲティングを採用すれば、広告価格の上昇を後押しできると考えているようだ。

あるテレビ局幹部は次のように述べている。「(テレビ局のストリーミングサービスに)接続し、プラットフォーム全体でターゲットオーディエンスを購入したい広告主は、(テレビ局の)ファーストパーティデータを使用するか、独自のデータを持ち込みたいと考えているため、必然的に価格は上昇するだろう。これは我々にとって最大のビジネスであり、価格面で大きな成長が見られる分野だ」。

[原文:Disney’s Disney+ ad pitch reflects how streaming ad prices set to rise in this year’s upfront

Tim Peterson(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:黒田千聖)

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