必ずしも正確ではない ブランドセーフティ 評価に苦戦するパブリッシャー:プログラマティック在庫の価値低下を懸念

DIGIDAY

メディアバイヤーたちは、プログラマティック市場におけるブランドセーフティやビューアビリティを評価する際に、第3者のアドベリフィケーション企業の役割が重要だと主張し続けている。

しかし、ニュースパブリッシャーたちにとっては、自分たちのコンテンツが誤って「安全でない」と分類され、「安全」とされた在庫と比較して30%以上収益性が下げられる事態が起きており、そのことに無力感を覚えている、とガーディアン(The Guardian)の北米での営業責任者であるルイス・ロメロ氏は語った。

第3者企業につけられるこういった評価にパブリッシャーたちが懸念を抱いている理由は、「バイヤーにとっても理解できる」と匿名を条件に取材に応じたメディアバイヤーは説明してくれた。なぜなら、それらの数値はパブリッシャーたちの管理外で決定され、それでも広告に対する報酬に関する基準として大きな影響を与えるからだ。

「アドベリフィケーションが与える指標を、業界における通貨としてバイヤーたちが信頼し始めている」と同バイヤーは続けたが、その通貨はニュースパブリッシャーにとっては不利な為替レートとなっているようだ。

デマネタイズの懸念

多くのパブリッシャーは、プログラマティック在庫がアドベリフィケーション企業の評価や過度に一般化されたキーワードブロックリストによってデマネタイズ(広告対象から外されたり、広告価値を下げられたりすること)されることにうんざりしているが、最近のプログラマティック価格全体の低下はさらに積み重なっているようだ。

また、過去1年間でウクライナの戦争、米国におけるロー対ウェイド判決の覆し、迫り来る不況の報道がキーワード・ブロックリストに加わり、それと文脈ターゲティングの台頭のあいだで、ニュースパブリッシャーはバイヤーが今後プログラマティックな購入をさらに効率化させようとするなかで、問題が悪化することを懸念している。

オペラティブ(Operative)のSTAQベンチマーキングデータ(STAQ Benchmarking Data)によると1月には、オープンマーケットでCPMが1.21ドル(約160円)で、2020年5月以来の最低水準だった。それに比べて、1月のプライベートオークション(PMP)の平均CPMは3.46ドル(約457円)で、プログラマティック保証取引(PG)は10ドル、それぞれ2020年6月と2020年8月以来の最低月間平均だった。

2月のオープンマーケットの4週間平均CPMは1.28ドル(約169円)でわずかに上昇したが、平均PG・CPMは9.74ドル(約1285円)に下がり、平均PMP・CPMは3.20ドル(約422円)に下がったことから、パブリッシャーのプログラマティック収益は依然として経済の減速の影響を受けている。

オープンなプログラマティック市場はニュースパブリッシャーにとって以前から決して簡単な分野ではなかったが、過去1年間で広告主の予算を競い合うことがさらに難しくなっているようだ。

「食べ物のセクションやスポーツ・セクション、エンターテイメント・セクションがあるにもかかわらず、全体としてはニュース出版物となっている当社では、とくに過去1年間で多くのバイヤーにニュース出版物では広告を載せないと言われた。セクションや文脈に応じたターゲティングがあるにもかかわらず、バイヤーたちがニュースパブリッシャーで広告を掲載しないように企業から指示を受けている」と、LAタイムス(LA Times)のプログラマティック保証とPMP広告を担当するエグゼクティブ・セールスディレクターであるカミーユ・マーフィ氏は述べている。

アドベリフィケーションが招く問題

ロメロ氏によれば、収益への影響は些細ではない。2020年の夏、ジョージ・フロイド氏の殺害を受けてBlack Lives Matter運動が再燃した際、同氏は関連報道がブロックリストのせいで30%も収益化ができなかったと述べた。

ガーディアンの商業戦略およびオペレーションズ・ディレクターであるキャサリン・ル・リューズ氏によると、英国プログラマティック事業は、コンテンツが安全でないと評価されるとCPMが平均で26%減少するが、それにフィルレートを考慮すると、その数値はさらに37%減少とまで下がるという。そして、サイトの在庫は1日に平均して約1%が安全でないと評価を受けると彼女は付け加え、最近のシリアとトルコでの地震のあいだには、その割合は10%~15%に増加したと述べた。

プログラマティック市場では、徐々に文脈ターゲティングを増やす傾向がある。これはアドベリフィケーション企業によるデータ収集と分類を通して実現されるが、同氏によると、この分類は「機械学習だけでは決して正確になり得ない」と言う。「第3者のアドベリフィケーション企業はまたオーディエンスのムードや感情ターゲティングのようなものを売るが、(たとえば)ドナルド・トランプの選挙勝利ひとつをとっても、ある人にとっては偉大な勝利であり、別の人にとっては悲惨な事態となる。だから、AIがそのレベルの人間の読解を適用できるという考えは明らかに問題だ」。

ガーディアンのコンテンツに対するアドベリフィケーション企業の分類と評価だけでなく、同氏はこれらのアドベリフィケーション企業によるデータ収集と、それをブランドセーフティ測定ファンネルに取り込むプロセスが、パブリッシャーのバックエンドでさまざま問題を引き起こすと主張している。ページや広告の読み込み時間の遅延がその問題の例だ。これによりユーザー体験が影響を受け、最終的には広告のビューアビリティと収益化が影響を受ける。

「(このような形態での評価は)本当に正当性があるとは思えない、だから我々の事業で直接提供はしていない。つまり、我々が価値を認めていないサービスを提供している第3者が、必ずしも我々の許可を得ずに我々のウェブサイトや知的財産を利用しており、我々自身はそこから収益を得ておらず、その行為を認可しているわけでもないにも関わらず、直接我々の顧客に対して彼らのサービスを販売している」とル・リューズ氏は言った。

パブリッシャーの広告ビジネスに必ずしも影響

ガーディアンとインデペンデント(The Independent)は、どちらもIASと契約を結んでおり、LAタイムズはガムガム(GumGum)の文脈ブランドセーフティプロダクトであるヴェリティ(Verity)と提携している。1社との契約で十分のようだ。

しかし、許可があるかないかに関わらず、第3者のアドベリフィケーション企業たちはパブリッシャーの広告ビジネスに関与している。広告主はさまざまなアドベリフィケーション企業やDSPを活用しながら各パブリッシャーにアプローチするからだ。すべての企業からのブランドセーフティ評価やビューアビリティ関連のデータが、パブリッシャーのプログラマティック販売に影響を与えている。

パブリッシャーの独自の検証戦略のうえに、バイヤーたちが自分たちの仕様に合わせてデータ評価をしようとすることで、データセット内で不整合が生じることがある。この結果、DSP内でパブリッシャーが販売できる在庫が減少することに繋がってしまう。

「文脈ターゲティングも試しているなかで、人々はキーワードリストから手を引くのに苦労している。だが、それらの戦術は別々にテストする必要があると思う。しかし、それが思うほど行われていない」とマーフィー氏は語った。

一方、インディペンデントはクライアントのデータセットを優先し、承認/評価の手順の量を制限している。

「クライアントに加えて我々もデータを追加して、データセットが一致していない時、それはパイプの詰まりのような状態を引き起こす」と米インディペンデントのシニア・バイスプレジデントであるブレア・タッパー氏は述べた。「我々の希望は常に、クライアントが何を望むかを知ることだ。彼らの側でブランドセーフティ(の評価)を追加している場合、私たちは自分たちの側でそれをしない。ブランドが我々にセットアップして欲しい場合、我々は自分たちの側でそれを行う。しかし、競合するセーフティツールがあると、それが基本的に在庫を減らしてしまう」。

直接プログラマティックを買ってほしいパブリッシャーたち

パブリッシャーは、収益が大きく失われる前にブランドセーフティ評価の不一致やデータの不整合が解決されることを期待し、代理店や広告主に自社を通じてプログラマティックの購入をより多く行うよう働きかけている。

LAタイムズは、マーフィー氏がチームに加わる前からPMPやプログラマティックギャランティード取引を優先してきたという。それは、代理店や広告主との関係を築くことがこれらのブランドセーフティ問題を解決するうえで重要だからだ。しかし、最近では、PG取引がさらに魅力的になってきている。それが最もターゲティングが細かくコントロールできるからだ。

「PMP取引でヴェリファイの文脈ターゲティングを適用し、自社のキーワードブロックリストを適用すると、バイヤーがブランドセーフティターゲティングを適用した時に、ターゲティングが二重になり、スケールがさらに小さくなることがよくある」とマーフィー氏は述べている。

タッパー氏によると、インデペンデントではプログラマティック分野の変動性が理由で、プログラマティック以外の直接広告(ビデオもブランデッド・コンテンツもどちらも含む)を営業チームが優先するようになったと言う。しかし、「過去1年間でプログラマティックの技術スタックを整理することが最優先事項だった」と彼女は付け加えている。

「私たちは、ユーザー体験の面でサイトの改善を行っており、その結果、プログラマティックパートナーとの提携関係を再評価し、優先順位を変更することが多くなった」と同氏はいう。

プログラマティックを直接購入することがニュースパブリッシャーにとってよい選択肢である理由を代理店や広告主に継続的に伝えること、これがブロックリストや文脈ターゲティング問題を回避するガーディアンの戦略だ。これはある程度成功しており、ロメロ氏によれば、2022年度の米国での直接販売は前年比40%増加したが、「単に直接購入以外の、ブランドや広告主向けの解決策を考え出さなければならない」と彼は付け加えている。

終わりのない取り組み

LAタイムズのプログラマティック収益マネージャーであり、オープン・プログラマティック・マーケットプレイスを監督するデヴェン・チョイ氏の継続的な仕事は、SSPと直接連携し、LAタイムズのライフスタイル、スポーツ、エンターテインメント面とハードニュースの報道を切り離そうとすることだが、それも問題の無い解決策ではない。

「SSPがそれを行っても、最終的な広告主のDSPがSSPの分類方法を使用する保証はない。LATimes.comのURLを持つすべての在庫をすべてニュースとして分類され、その結果すべてが安全でないとするベンダーを使用されるかもしれない」と同氏は言う。

同氏のチームはまた、こういったベンダーに働きかけ、ニュース・コンテンツをほかのセクションから分けるよう説得している。場合によっては、ベンダーたちはモデルを微調整し、文脈モデルとキーワードの両方を使用してブランドのセーフティを判断するようになる。しかし「少しの改善になったが、顕著な影響はない」と同氏は述べている。

問題はベンダーのモデルの持つ細かさと、ルートドメイン以外のコンテンツ分類方法にかかっている。

ガーディアンは、「スクレイピング」と呼ばれるアドベリフィケーション企業によるこういったデータ収集に関してアクセスを制限するキャンペーンを行っている。また、文脈データパートナーと提携して(ル・リュエ氏は名前を明かさなかった)、この分野でのコントロールを増やすため、さらにコンテクスト分類のための独自の技術スタックを構築している。

[原文:News publishers lament the role of verification firms in the programmatic market

Kayleigh Barber(翻訳:塚本 紺、編集:島田涼平)

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