ファッションブランドが日本の アニメ とコラボレーションする理由

DIGIDAY

ディアドラ(Diadora)と『鉄腕アトム』ベイプ(Bape)x ポケモンなど、ストリートウェアブランドはアニメとのコラボレーションを盛んに行ってきた。そして現在、大手ファッション業界もこのニッチなマーケットに参入している。

最近、ファションとアニメのコラボレーションを行ったブランドが、ジョーダン(Jordan)だ。プロバスケットボールチームのニューオーリンズ・ペリカンズ(New Orleans Pelicans)のパワーフォワード、ザイオン・ウィリアムソン選手と彼が好きだと公言しているアニメ番組『NARUTO-ナルト-』と提携した。5月18日に発売されたこのコレクションには、キャラクターをモチーフにしたスニーカーやTシャツが含まれている。価格は35ドル(4580円)から130ドル(約1万6890円)で、ナイキ(Nike)のウェブサイトやさまざまなスポーツ小売店で販売されている。それ以前の4月26日にはフランスのファッションブランドのマージュ(Maje)が、古典的なアニメキャラクターであるセーラームーンとの限定コレクションをリリースしている。また4月15日には、ドルチェ&ガッバーナ(Dolce & Gabbana)が『呪術廻戦』と最新コラボレーションを発表した。

世界のアニメ市場は成長傾向にある

こうしたコラボレーションの背景に存在しているのは、若い消費者との関係をキープしたいという欲望なのかもしれない。2020年初めの米国の調査では、18歳から29歳の米国成人の27%がアニメに対して好意的な見方をしていると報告されている。アニメファンの平均年齢は24.4歳だ。アニメというジャンルは、デモグラフィックの違いによって訴求するコンテンツも異なるが、視聴している層の大半はZ世代である。グランドビュー・リサーチ(Grandview Research)では、2021年から2028年にかけて、世界のアニメ市場は9.7%成長するとみている。米国におけるその増加率は15.5%と、より大幅なものとなっている。

ドルチェ&ガッバーナは、映画化(『劇場版 呪術廻戦 0』)に伴って『呪術廻戦』とコラボレーションを行っている。映画は全米で累計3140万ドル(約40億8300万円)の興行収入を記録した。D&Gの『呪術廻戦』コレクションは、イヤリング、ハンカチ、ブレザー、バッグなど30種のスタイルで構成され、価格は300ドル(約3万9000円)から4000ドル(約52万円)である。このコレクションの販売に向けて、『呪術廻戦』の監督である朴性厚(パク・ソンフ)氏が、アニメの8人のメインキャラクターがそれぞれドルチェ&ガッバーナの衣服をまとっているイラストを描いた。さらに4月27日から5月3日まで、D&Gは渋谷に3つのポップアップストアをオープン、ストアは商品とともに没入感のある体験が特徴となっている。

トレンドを生んだコミュニティに訴求

ドルチェ&ガッバーナが『呪術廻戦』のためにカスタマイズしたルックは、オンラインでは購入できないにもかかわらず、TikTokTwitterですぐにファンの注目を集め、賞賛されている。ドルチェ&ガッバーナ自体はTwitterとインスタグラムでこのコラボレーションのプロモーション投稿をわずか6回行っただけだったが、ファンが作ったTikTokは、約250万ビュー、65万のいいね、2万3000回のシェア、コメント数7000を記録している。

「トレンドはコミュニティから生まれ、(ドルチェ&ガッバーナは)そのコミュニティにうまくアピールした。だからこそ、(ソーシャルメディア)でよい反応を得られたのだ」と、デラウェア大学コミュニケーション学部のファッション・メディア研究者であるアシュリー・ペインツィル氏は指摘している。

ファッションや文化におけるノスタルジアと結びつくアニメ

そのほかのラグジュアリーブランドも、人気のアニメキャラクターを活用している。2003年にアカデミー賞を受賞した映画『千と千尋の神隠し』を制作したアニメスタジオ、スタジオジブリは2022年1月にロエベ(Loewe)とコラボした。そのラインは刺繍やインターシャ編みを施したシャツ、セーター、ジャケットなど54点で構成され、価格は450ドル(約5万8500円)から6400ドル(約83万2500円)だった。

多くのミレニアル世代やZ世代にとって、これらのコレクションはファッションや文化にみられる大きなノスタルジアのトレンドと結びついている。

「パンデミックを切り抜けて、人々は楽しいものや自分自身を振り返るようなものをほしがっている。これは間違いなくZ世代の心を動かし、またZ世代の興味にリーチする方法だ」とペインツィル氏は言う。「(ラグジュアリーブランドは)おそらく(ラグジュアリーコレクションを)購入できる一部のZ世代消費者にしかリーチしていないが、それでもZ世代から何か少しでも得るにはよいタッチポイントだ」。

コラボレーションは商品である必要はない

サムスン(Samsung)やベイプといったブランドとのアニメコラボレーションを専門とするソーシャルメディアコメンテーターのケイレブ・アーボー氏は、過去にルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)ハロッズ(Harrods)といったラグジュアリーブランドがスケートボードブランドとコラボしたことがある点を指摘した。それまでラグジュアリーとスケートボードは異例の組み合わせと思われていたが、ラグジュアリーブランドとアニメのコラボレーションについても同じことが言えるとアーボー氏は述べている。

「ラグジュアリーブランドは、文化の変化に適応し、アニメが非常に人気を博しつつあることを受け入れている。アニメやスケートボードブランド、あるいは一般的なアーティストとのコラボレーションを行っていないブランドは、終わっている(ためにそれを行っていない)」。

それでも、こうしたコラボレーションを実現するのは服だけではない。たとえば、グッチ(Gucci)は2020年9月に『ONE PIECE(ワンピース)』と公式のルックブックでコラボレーションし、作者である尾田栄一郎氏がグッチの「フェイク/ノット(Fake/Not)」コレクションのためにキャラクターを描いている。2018年10月には、バレンシアガ(Balenciaga)が『ジョジョの奇妙な冒険』とコラボし、メインキャラクターのブローノ・ブチャラティがバレンシアガ2018年秋コレクションのルックを着たイラストが雑誌の表紙となった。

「ブランドが新しいマンガと最新のラグジュアリーファッションを身につけたキャラクターを組み合わせることができるのは価値あることだが、(コラボレーションは)必ずしもつねに商品である必要はないのだ」とアーバウ氏は述べている。

[原文:‘Why fashion brands are collaborating with anime]

GABRIELA GARCÍA-ASTOLFI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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