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どの音を出しても美しく調和するVR楽器しかないのですこのワールド。
綺麗な和音、ハーモニーが続くと鳥肌が立ってきますよね。でも音楽理論やコード進行をしらずに楽器を演奏すると、不協和音となりがちで気分がマイナーになってきちゃう。音楽って難しいんだと苦手意識が芽生えちゃう。
その問題に取り組み、VRChatのなかで誰でも(楽器を弾いた・叩いたことがない人でも)セッションに参加できる世界を作っているのが、音楽パフォーマーのK.u.(くう)Ambientflowさん(@Ku_Ambientflow)とその仲間たち。K.u.さんがYouTubeライブ配信するときだけ入れるこの特設ワールドには、ピアノでいうところの白鍵、しかもファ抜きのド・レ・ミ・ソ・ラ・シしか鳴らせないバーチャル楽器ばかり置かれています。
ワールドにJOINしたアバターは、K.u.さんが演奏するアンビエントな曲に合わせて自由にバーチャル楽器を使い、音を奏でて、美しい和音の1つと化すことができます。
テンション高まるけど間違えやすい音が省かれた理由
なぜ黒鍵の音とファの音を抜くのでしょうか。それは音楽理論でいうアボイドノート(回避音)に基づいた考えとなっているから。
これらの音を上手に使えばテンションコードとなって、緊張感と共に楽曲のダイナミズムが拡張されていくカッコいいサウンドになるものの、いったんミスると「もしかして弾き間違えた?」と落ち着かなさすぎる音になっちゃう。だから、それらの音をあらかじめ省いちゃってる。どんな音を奏でても調和する完璧なレシピ音階しかないんです。優しすぎませんかこの世界。
鳴らせる音階を自由にセットできるバーチャル楽器の妙
特設ワールドに置かれたバーチャル楽器は、白鍵を踏んで演奏する床パネル型鍵盤をはじめ、様々なものがあります。リアル楽器ではないからジャンプして踏んでも、象アバターで踏んでも大丈夫。壊れません。またVRユーザーでもデスクトップ環境でアクセスしている人でも鳴らせます。
ドレミソラシの音だけを螺旋状に並べたガラスのマリンバ。なぜ螺旋状になっているのかというと、背が低いアバターでも音を奏でやすいようにとの配慮からですって。
カラフルな綿毛のようなぽわぽわは、パーティクル・ベル。色によって鳴らせる音階が異なります。
デスクトップユーザーでも、マウスで選んでクリックボタンをぽちぽちすると音が出せるパフォーマンスパネル。
ドラムセットもありました。こちらはUnity上で3メートル以上離れた位置では音が消えるという仕様になっています。
ワールド内に組み込まれたバーチャル楽器を演奏して音を奏でる場合、仕様上どうしても音の遅延があります。それもユーザーによって遅延の差が異なります。だからリズムをガチッと決め込んでしまうドラムサウンドはワールド全体に響かせることはせず、演奏しているアバターが自分のペースで楽しめるような響かせ方をしているそうです。
鳴らせる音階も、響かせる範囲も自由にセッティングできる。これはバーチャル楽器ならではの特性といえますね。
エンジニアチームがいてこそ実現できたワールド
もともと現実でもアボイドノートを意識したイベントを開催していたK.u.さんですが、コロナ禍によって継続が無理となってしまいました。そこでVRでも誰もがセッションに参加できるイベントを始めることになり、その会場となる特設ワールドを作り上げるため、高い技術力と知見をもった仲間が集まりました。
一番左の青猫さん(@AONEKO307JP)はワールド全体の設計、構築、フィニッシングを担当。先に作られたバーチャル楽器を演奏しやすい場所に設置しながら、ライティングやアニメーションなども手掛けた方です。毎週土曜日に開催されているOpenMicBar SpotLightTalksというイベントも運営しており、VRChatでの音楽活動に取り組む人々を支え続けています。
SHOEIのヘルメットをかぶったVoxelKeiさん(@VoxelKei)は、以前ご紹介した軍艦島VRChatワールドの作者さんでもあるんです。リアル電子楽器のMIDI情報を元に、VR空間でしか表現できない音と映像の組み合わせを追求していたワールド製作、イベント開催をしており、それを見たK.u.さんが驚いて絶句して負荷が高すぎてそのままPCが落ちるという事態に。リッチな表現すぎて負荷が高いことが災いしてこのワールドでは同じシステムを使うことができなかっため、アドバイザーとして参加することになりました。
バーチャル楽器全般の設計・実装を行なったのが、右端のらくとあいすさん(@lactoice251)です。弾いた、叩いた、爪弾いたという感覚のフィードバックがなくとも、視覚的に演奏していることが強く伝わってきて満足度が高まるバーチャル楽器クリエイターともいえる存在。真ん中にいても周囲を囲んでいても誰でも演奏に参加できるし、身長差も問わないという螺旋状になったガラスのマリンバは大発明といえるものです。
カスタネットとトライアングルが楽しすぎた子供時代に戻れる
気兼ねなく気持ちよく音と遊べる。自分の音が、友達の音が、はじめて会った人の音がすべて混ざって美しいハーモニーとなってワールド全体に広がっていく感覚は、現実ではまず味わえないものです。またアンビエントなピアノサウンドに混ざって、世界を構成する音楽の1つになっていくという感覚もこころにじぃんと響きます。
そして和音を一緒に作った間柄となるからか、はじめての人とでも気楽な気持ちでおしゃべりできるという副次効果もある。もう一度記しましょう。優しすぎませんかこの世界。
現在、毎週月曜日に開催されている(YouTubeライブも行なわれている)おとあそびえんと。興味のあるVRChatユーザーの方は、K.u.さんのTwitterアカウントをフォローしてイベント開催タイミングを逃さないようにしましょう。
Source: Twitter