デル・テクノロジーズが、法人向けPC市場でのビジネスを拡大している。半導体不足などの製品供給の遅れが課題となるなか、世界的なサプライチェーンの強みを活かして、約20製品の即納モデルを用意するなど、短納期の実現とともに、新たな導入提案を加速。
さらに、日本市場を強く意識した967gの「Latitude 7330 Ultralight」を新たに投入する一方、4つのペルソナを用いて、多様化したニーズに、周辺機器を加えた用途提案も開始している。デル・テクノロジーズ 常務執行役員 クライアント・ソリューションズ統括本部長の山田千代子氏に、デル・テクノロジーズの法人向けPC事業について聞いた。
右肩あがりでシェアが拡大
デル・テクノロジーズの法人向けPCは、ノートPCのLatitudeシリーズ、デスクトップPCのOptiPlex、ワークステーションのDell Precisionシリーズ、コストパフォーマンスを追求したVostroシリーズ、シンクライアントのWyseシリーズで構成。さらに、各種アクセサリや、モニターなどの周辺機器もラインアップしている。また、教育分野向けに用意したWindows PCとChromebookも、法人向けPCを担当するクライアント・ソリューションズ統括本部の事業領域になっている。
2021年の国内ブランド別法人向けPC市場シェアで、デル・テクノロジーズは17.8%となり、3年連続で2位のポジションを維持。シェアは毎年、右肩上がりで拡大している。
「国内法人向けPC市場全体は縮小傾向にあるものの、デル・テクノロジーズは出荷台数を増加させることができ、2022年1~3月も、ノートPC、デスクトップPCは、いずれも1位に僅差に迫っている。また、ワークステーションでは年間シェア1位になっている」と、デル・テクノロジーズ 常務執行役員 クライアント・ソリューションズ統括本部長の山田千代子氏は語る。
サプライチェーンの強みで新規顧客を獲得
デルの法人向けPCが好調な理由はなにか。山田本部長は3つの観点から説明する。
1つめは、サプライチェーンの強みを発揮している点だ。
もともと受注生産からスタートしたデル・テクノロジーズは、世界的なサプライチェーンを構築し、それを活かした供給体制が強みだ。「半導体不足などの影響により、納期は厳しいが、世界的なサプライチェーンの仕組みを活かして、いつまでに納品できるかを示すことができるのがデルの特徴。それによってデルを選択する企業が少なくない。約3年間に渡り、半導体不足、モニター不足、IC不足という状況の中で、シェアを高めてきたのは、サプライチェーンにおいて、他社と差別化できていることの証明である」と自信をみせる。
長期化するサプライチェーンの混乱の中で、デルのサプライチェーンの安定ぶりを実感した企業が、継続的にデルを購入しているというのだ。
「いままでは国内ブランドのPCを使っていた企業が、納期が早いデルを選択するといったように新規顧客が増加している。最初は少ない台数から導入し、使ってみたら故障が少なく、サポートにも満足でき、安心して使えることが理解され、その後も継続的にデルのPCを購入している例が目立つ」という。
サプライチェーンの強みが、新規顧客の獲得につながり、そこから出荷台数が拡大しているという構図だ。
こうした新規顧客開拓や、既存顧客の継続的受注において、切り札の1つになっているのが、即納モデルである。
現在、デスクトップPCで2機種、ノートPCで2機種の合計4機種で展開。構成数では約20製品に達しているという。
「当初は、それほど需要はないと考え、2製品だけでスタートしたが、提供を開始して以降、納期で困っているお客様が多く、ほかの機種にも展開できないのかというご要望をいただいた。デルの強みはお客様と直接お話する機会を持っていることであり、その要望をすぐに反映できる点である。こんな仕様の即納モデルが欲しい、あるいはこの仕様で用意してくれれば一定台数をまとめて購入するといった提案もあり、それを即納モデルに反映した。納期は少しかかるがカスタマイズモデルが欲しいという企業と、仕様は決まっていても、とにかくすぐにPCが欲しいという企業の両方のニーズに対応できる」とする。
大手企業を対象にスタートした即納モデルは、この仕組みを活用して、中堅中小企業向けの「ゼロタッチPC for SMB」サービスにも展開。即納モデルに限定してPCを提供することで、短納期の実現とともに、サービスもパッケージ化することで運用管理、セットアップ、障害対応の負荷を軽減。仕様を限定しているため、同サービスを利用しているユーザー向けに共通在庫を抱えることができ、PC本体が故障した際にもすぐに交換することができる。
クライアント・ソリューションズ統括本部では、今後も即納モデルの拡充に取り組む考えで、新たにワークステーションもラインアップに追加するという。
「ワークステーションは、用途に応じて、ハイスペック仕様にカスタマイズをするユーザーが多いため、仕様が限定される即納モデルのニーズは少ないと考えていたが、お客様からの要望があり、今後は仕様を固めた即納モデルを用意することにした。PCについても、要望にあわせて即納モデルのラインアップを増やしていきたい」としている。
ポートフォリオ拡充が功を奏す
2つめは、ポートフォリオの拡充への積極的な取り組みにより、多様化するハイブリッドワークに対応した提案が可能になっていることだ。
「コロナ禍においては、法人向けPCの導入目的が、在宅一択か、オフィス一択といった傾向が強かった。だが、2021年後半には、ハイブリッドワークが広がり、それに伴いニーズが拡大し、選択肢も広がった。ここ数年に渡り、他社が製品ラインアップを縮小するなか、それとは逆行する形でポートフォリオを拡大してきたことが、幅広いニーズに対応できることにつながっている」とする。
同社の調査によると、コロナ禍前後で、PCの選定基準が変わったと回答した企業は約6割に達しており、PCを持ち運ぶことが増えたため、小型、軽量のPCを求めるようになったり、Web会議などへの対応や動画編集が増加したことに伴って、パフォーマンスが高いPCを求めるようになったりといった声が多い。
オフィスだけでの利用、あるいは自宅だけの利用という場合、デスクトップPCや大画面のノートPCが重宝される一方、PCを持ち運びすることが多いユーザーには、軽量であったり、堅牢であったりといったニーズが高く、ハイブリッドワークを行なうビジネスパーソンは、ウェブ会議などのコラボレーションのために高性能PCを選択したり、場所と問わない働き方を求めるエンジニアがモバイルワークステーションを導入したりといったように、ニーズの多様化が見られているという。
「デルは、デスクトップPCの販売構成比が他社よりも高い。これまではデスクトップPCしか購入していなかった企業が、ハイブリッドワークの拡大に伴い、デルのノートPCも購入するようになったというケースもある」とする。
在宅勤務での故障にもオンサイトで対応
デル・テクノロジーズが、国内法人向けPC市場でシェアを拡大している3つめの理由がサポートに対する評価である。
「ハイブリッドワークが広がることで、デルのサポートのメリットが再認識されている」と、山田本部長は語る。
デル・テクノロジーズでは、PC本体の保守を出向いて実施する「デル・オンサイトサービス」や、年中無休の電話サポートや、エンジニアによる出張修理、設定やソフトウェアの不具合への対応を行なう「デル・プロ サポートサービス」を提供。自宅でPCが故障した場合にも、自宅まで修理に駆けつけてくれる。ワーケーションで長期滞在した場所にも同様のサービスが受けられる。
「調査によると、在宅勤務時の故障を考えて、サポート体制が充実したメーカーのPCを求めるようになったという企業も多い。デルとサポート契約をしていれば、自宅、オフィス、出張先を問わず、どこで故障しても、24時間365日受け付けて、翌日には駆け付けることができる。コロナ禍で在宅勤務やハイブリッドワークが増加したことで、デルのサポートが便利であることを体感し、次に購入する際も、デルのサポート契約を結ぶといったケースが増えている。サポートの観点からデルを選択する人が増えている」とした。
2つのホワイトスペースを埋める
では、2022年度の国内法人向けPCビジネスにおいて、デル・テクノロジーズの注力ポイントはどこになるのだろうか。
デル・テクノロジーズの山田本部長は、「1つめは、デルにおいてホワイトスペースだった部分を埋めていく製品ラインアップの強化」だとする。
デル・テクノロジーズのラインアップには、2つの大きなホワイトスペースがあった。これを埋めることで、日本のユーザーのニーズに応えることができるという。
ホワイトスペースの1つめが、14型モバイルワークステーションだという。
同社では、2022年4月に、14型モバイルワークステーション「Precision 5470」を発表。「1.5kg以下で、持ち運んで使いたいといったエンジニアに受けている。業界最小で、最もパワフルな14型モバイルワークステーションを投入した。これまで高性能ノートPCを活用していたり、タワー型ワークステーションを利用していたりといったユーザーから高い関心が集まっている」という。
これまでのデルにはなかったラインアップの1つであり、すでにワークステーション分野で国内トップシェアを持つデル・テクノロジーズのビジネスに弾みをつけそうだ。
もう1つが、2022年4月に発表した967gの13.3型ノートPCのLatitude 7330 Ultralightである。
米Dell Technologies プロダクトマネージメントモビリティストラテジー&マーケティング担当バイスプレジデントのMeghana Patwardhan氏が、「Latitude 7330 Ultralightは、モビリティを重視する日本のユーザーのためにデルが開発した日本向けモデルであり、日本のおかげで実現した製品である」と位置づけたように、日本の市場を強く意識して開発した製品だ。
山田本部長は、「デルでは、お客様を対象にしたサーベイを頻繁に実施し、イベントを開催した際にはアンケートを行なっている。その中であがってきたのが、1kg未満のノートPCに対する品揃えの要望であった。日本からの要望が多かっただけでなく、同様の声は、電車移動が多い中国の大都市圏のユーザーからも上がっていた。これを本社の開発部門にフィードバックした結果、堅牢性とパフォーマンスでも妥協しない、1kg未満のノートPCが完成した」とする。
日本におけるサーベイやアンケートの中では、1kg未満のノートPCを求める声の比率が徐々に上昇。その声を送り続けて、3年をかけて商品化に至ったという。
「日本では商談の際に、1kg未満のノートPCが条件になることが多い。特に、公共、金融、保険など、大手企業のお客様からは強い要望があり、それに合致する製品がないために、商談をあきらめざるを得ない場面もあった。また、お客様の社員からも、1kg未満で、パフォーマンスが高いノートPCが欲しいという声が情報システム部門に集まっている。女性社員からも軽いノートPCに対する要望が高まっていた。実際、市場調査でも国内PC市場では、1kg未満のノートPCの成長率が、他のノートPCよりも高い」としながら、「Latitude 7330 Ultralightのローンチイベントの参加者数は、過去最高の人数となった。しかも参加者の9割が、購入意欲をみせている。これも過去には例がない反応の高さである。デルにとってはホワイトスペースの製品であり、この製品の登場を待っていた企業も多い。想定以上に手応えがある」と語る。
プレミアム顧客を対象にした製品の事前検証プログラムの申し込みでも、約4割をLatitude 7330 Ultralightが占めているという。これも異例のことだ。
山田本部長によると、これまで、1kg未満のノートPCがラインアップになかったことで、大手企業を対象にした商談では2割ほどを失っていたという。Latitude 7330 Ultralightによって、商談の「まな板」にあがるケースが増加するのは明らかで、その結果、デル・テクノロジーズの法人向けPCの事業拡大に弾みをつけることができる。
さらに、ラインナップの強化としては、「Precision 5470」や「Precision 3470」などを追加。2022年6月には、タッチパッドにZoom利用時の操作に最適化したアイコンを表示できる独自のコラボレーションタッチパッドを搭載した「Latitude 9330」を日本でも発売する予定だ。
デル・テクノロジーズ クライアント・ソリューションズ統括本部クライアント製品本部フィールドマーケティングシニアマネージャーの佐々木邦彦氏は、「Latitude 9000シリーズは、最新機能を搭載したプレミアムモデルに位置づけられるノートPCで、CxOを対象にしている。ビジネスに必要とされるパフォーマンスと堅牢性に加えて、スタイリッシュなデザインを採用している」と前置きし、「Latitude 9330は、Web会議をより効率的に行なう機能を搭載したものであり、独自のコラボレーションタッチパッドにより、マイクのミュート/ミュート解除、カメラのオン/オフを行ないやすくしたり、音声を効率よく伝えたりといったことが可能になる。エグゼクティブ向けのフラグシップモデルとして、展開していくことになる」とする。
Latitude 9000シリーズに搭載された機能は、今後、Latitude 7000シリーズや5000シリーズにも反映していくことになるという。
4つのペルソナを対象に周辺機器とセットで提案
一方、アクセサリおよび周辺機器ビジネスの強化にも取り組んでいく考えだ。
山田本部長は、「PCの周辺機器市場の規模は、ストレージの市場規模に匹敵する」と指摘する一方、「働き方が多様化する中で、アクセサリや周辺機器を組み合わせることで、より最適な提案が可能になる」とする。
デル・テクノロジーズでは、ユーザー層を4つに分けたペルソナを、2022年2月から新たに設定している。
「これまでにもペルソナをベースにした提案は行なってきたが、従来は『どこで働くのか』ということをベースにした設定だった。だが、コロナ禍では、ハイブリッドワークが中心となり、『どこで働くのか』ということはあまり重視されなくなり、『なにをするのか』ということが重要な要素になった。お客様もその切り口の方が、製品を選びやすくなっている。その観点からペルソナを進化させ、PC本体とアクセサリ、周辺機器を組み合わせた提案を行なっていく」という。
デル・テクノロジーズが設定したペルソナは、4つに分類される。
これらのペルソナは、オフィスで1週間に働く日数はどれぐらいか、ハイブリッドワークの比率はどれぐらいかといった要素に加えて、なにを求めているのか、なにを重視しているのかということをヒアリングして導き出したものだ。
具体的には、さまざまなワークスペースで複数のデバイスを接続することが多く、シンプルで、効率的なコミュニケーションを好む「Builder」、迅速なレスポンスを求め、コミュニケーションの中心的役割を果たす「Connector」、専門家レベルの成果物を制作し、プロジェクトによる成果に満足や誇りを持つ「Specialist」、会計や購買、IT管理、製造担当など、集中的な仕事の効率性や、求められる成果を達成するための生産性を重視する「Producer」である。
これらのペルソナに対して、PC本体だけの提案ではなく、そこにアクセサリや周辺機器を組み合わせて、最適な用途提案を行なうことになる。
組み合わせるアクセサリや周辺機器は、頭から外すだけで自動的にマイクがミュートになる機能を持たせたヘッドセット、Teams専用ボタンを備えたモニター、健康的な見栄えに映る4Kカメラを標準搭載したモニター、オフィスや自宅で周辺機器などとの接続を容易にするドッグ、空港の手荷物検査場でもPCを出さずに検査できるビジネスリュックなどである。
「利用者がこうしたものが欲しい、こうした機能があれば助かると思えるものを数多く用意している。アクセサリや周辺機器を組み合わせることで、それぞれの人に最適なソリューションとして提案することができる」とする。
そして、「一部のお客様は、PC本体を導入することによる快適な環境の実現だけに留まらず、より生産性を高め、より快適性を高めるためにアクセサリや周辺機器を利用することを重視し始めている。それに気がついていない企業にも提案していきたい。アクセサリや周辺機器の品揃えは、PC本体以上に広げているところであり、ビジネスの成長は、PC本体以上の伸びを見込んでいる」と語る。
導入時における新たな提案としてだけでなく、これまでデル・テクノロジーズのPCを導入している企業や、他社製PCを活用している企業に対しても、デル・テクノロジーズのアクセサリおよび周辺機器を提案し、利用環境の改善につなげていきたいとする。
アクセサリや周辺機器は、あとから購入する場合には、情報システム部門よりも、総務部門や、現場単位で進められることが多い。そうした購入形態にもしっかりとフォーカスした提案を行なっていくという。
4つのペルソナによる提案は、日米ともに、まだほとんど露出していない段階だ。今後半年から1年をかけて、この提案が徐々に本格化していくことになるだろう。
ハイブリッドワークにあわせて進化するDell Optimizer
もう1つ見逃せないのが、Dell Optimizerの進化である。Dell Optimizerは、ユーザーの働き方を学習してそれに適応するソフトウェアで、デルの法人向けPCに搭載されている。
最新機能では、バッテリ駆動時間の長時間化や、インテリジェントプライバシー機能による背後からののぞき見防止、利用者が目をそらすと画面を暗くするといった機能を実現。ニューラルノイズキャンセレーションにより、AIが人の声を識別し、相手の声を聞こえやすくしたり、世界初のマルチネットワーク同時接続機能であるエクスプレスコネクトにより、2つのネットワークに同時に接続して、データやビデオのダウンロードを高速化することができる。
「さまざまな場所で働くことを前提にそれぞれのシーンに最適化した機能を実現している。エクスプレスコネクトでは、Web会議が続いていて、資料のダウンロードが追いつかないといった場合にも、2つのネットワークを利用して、Web会議をしながら、資料を高速にダウンロードできる」などとしながら、「Dell Optimizerは、当初は、AIを活用してアプリケーション使用時の最適化などを実現していたが、コロナ禍におけるニーズの変化や働き方の変化を捉えて、いまでは、まったく違った進化を遂げている。ハイブリッドワークに最適化したものになっている」とする。
サステナブルが新たな「武器」に
デル・テクノロジーズにとって、2022年度のPCビジネスで、新たな「武器」になりそうなのが「サステナブル」である。
山田本部長は、「約1年前は、商談の中でサステナブルの話をしても、スルーされることが多かった」と笑いながら、「2021年秋以降は、大規模商談であればあるほど、サステナブルが重要な要素になってきている」と指摘する。
3カ年でPC導入計画を検討している企業などでは、商談の最初にサステナブルの話題があがっているという。いまや、PCの導入検討時の重要な条件の1つになっていることが裏づけられる。
「サステナブルを経営課題の1つにあげる大手企業が増加していることが背景にある。だが、その一方で、目標達成に向けた取り組み方が分からないという企業が少なくないのも事実である。デルがこれまで行なってきたサステナブルへの取り組みを説明すると、高い関心を寄せることが多く、中には社内でセミナーを行なって欲しいという話になることもある」とする。
デル・テクノロジーズは、PC業界の中でもいち早くサステナブルに取り組んできた経緯がある。1990年代からPCのリサイクルを開始。2008年には再生プラスチックをモニターの筐体に利用したり、2015年には航空宇宙産業の廃棄物となったカーボンファイバーをノートPCの天板などに再利用したりといった取り組みのほか、2018年には、PCに利用しているマグネットのリサイクルを開始。2021年にはハードディスクに使用しているアルミニウムを再利用する仕組みも導入した。また、インドでは、ディーゼル車から排出した煤(すす)でインクを作り出し、梱包箱の印刷に利用するといったことにも取り組んでいる。
2022年4月に、「デル史上最もサステナブルなノートPC」として発売した「Latitude 5000」シリーズは、海洋プラスチックやバイオプラスチックを採用。ノートPCの天板には、製紙業界からアップサイクルされた樹木由来のバイオプラスチックを21%、再生炭素繊維を20%、使用済みプラスチックを30%の割合で使用。71%がリサイクル可能で、再生可能な素材で作られていることになる。
デル・テクノロジーズでは、2030年を目標に、顧客が購入するすべての製品と、同等の製品を再利用およびリサイクルすることや、梱包材の100%をリサイクル素材や再生可能な素材で作ること、製品内容の半分以上をリサイクルまたは再利用可能な材料で作ることを掲げており、さらに、Concept Lunaと呼ぶノートPCの試作モデルを発表し、資源の使用を減らし、より多くの循環型素材を経済的に維持するための設計アイデアを提案している。
こうしたサステナブルへの積極的な取り組みが、企業への導入提案においても強みになりはじめている。
納期を最優先するのが2022年度の基本戦略
2022年度も厳しい経済環境が続くというのが多くの企業に共通した認識だ。
長期化するコロナ禍とともに、ウクライナ情勢、円安などにより、サプライチェーンの混乱や原材料価格の高騰、物流コストの上昇などが今年後半までは続くと見られている。
日本のPC市場に対する影響も大きく、デル・テクノロジーズでも、原材料価格の高騰などを理由に、4月下旬に法人向けPCの価格を3~8%値上げしている。
「2022年度の法人向けPCビジネスで最大の課題となるのは、サプライチェーンをいかに最適化できるかという点。要望に応える形での納品することを最優先する」と山田本部長は語る。
山田本部長が繰り返し強調するのが、デル・テクノロジーズのサプライチェーンの強みだ。
「デルは、創業以来、受注生産を主軸とし、これを188か国で展開している。その経験をもとに、AIなども活用して需要予測を行ない、約束通りに部品を購入し、欠品しないように生産をしている。グローバルでサプライチェーンをまわすのは緻密な仕組みと判断が必要である。モノを余らせてもいけないし、足りなくてもいけない。これをさまざまな環境下で、長年に渡ってまわしてきた。他社と異なる経験値が活きる部分である」と自信をみせる。
そして、「この1年で、デルへの評価が高まっている部分が納期である。それがますます期待されている。納期で迷惑をかけないようにがんばっていく」と語る。
サプライチェーンの強みを活かして納期を最優先する一方で、高性能、堅牢性、国内におけるサポート体制でも高い評価を得ていることを訴求。1kg未満のノートPCをはじめとしたラインアップの強化、サステナブル対応での先行性も訴えていくことになる。
「x86サーバーは、国内トップシェアを獲得し、ストレージに対する評価も高い。企業が推進するDXプロジェクトに対して、サーバー、ストレージ、クライアントPCまでのエンド・トゥ・エンドの提案ができる点も強みにしたい。APEXによるコンサンプションモデルも用意している。そして、アクセサリや周辺機器を含めた用途提案で、満足度を高め、信頼度を高めていきたい」とする。
デル・テクノロジーズは、国内法人向けPC市場でトップシェアをいよいよ射程距離に捉え始めているが、「トップシェアは取りたいが、お客様に満足してもらった結果でトップシェアが取れればいいと考えている。焦りはない。むしろ、じりじりとシェアが上がっているいまの状況がいいと考えている。安売りやキャンペーンなどの施策で一気にシェアを伸ばしても継続性がない。シェアが着実に上昇しているというのは、お客様の満足度や信頼度が高まっていることの証である」と、山田本部長は語る。
サプライチェーンの強みによって新規顧客を獲得し、それらの顧客から評価を得て、満足度を高め、それが次の購入につながるという好循環が、法人向けPC市場で、デル・テクノロジーズの存在感を高める要因になっているといえそうだ。
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