Qualcomm、Windows 11用SoC「Snapdragon 8cx Gen 3」。CPUは85%、GPUは60%性能向上

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Qualcommが発表したSnapdragon 8cx Gen 3(写真提供:Qualcomm)

 Qualcommは、11月30日~12月1日(現地時間、日本時間12月1日)に、米国ハワイ州においてプライベートイベント「Snapdragon Tech Summit 2021」を開催しており、新しいSoC(System on a Chip)の発表などを行なっている。初日にはスマホのハイエンド向け製品となるSnapdragon 8 Gen 1が発表されたが、2日目には、PC向けのSoCとなる「Snapdragon 8cx Gen 3」、「Snapdragon 7c+ Gen 3」が発表された。

4年ぶりのフルモデルチェンジとなるSnapdragon 8cx Gen 3、Gen 2から大きな性能向上を実現

Snapdragon 8cx Gen 3のパッケージ(写真提供:Qualcomm)

 Snapdragon 8cxの初代(当時はGen1などの名称はついていなかったが、区別のため以下Snapdragon 8cx Gen 1と表記する)は、2018年に行なわれた「Snapdragon Tech Summit 2018」で発表された。

 同時に発表されたスマートフォン向けのSnapdragon 855が、その後4世代も後継が発表されていたのに比べると、Snapdragon 8cx Gen 1の寿命は長い。2020年にSnapdragon 8cx Gen 2という後継製品は投入されたが、CPUのクロックを高めただけで、内部のアーキテクチャなどは据え置かれたため、この4年間フルモデルチェンジはなかったことになる。

 一方Snapdragon 8cx Gen 3は完全なフルモデルチェンジで、CPUもGPUも更新されている。ただし、Qualcommは今年発表した製品からプロセッサの3桁数字でのブランディングはやめたため、CPU/GPUにはブランド名は用意されず新Kryo、新Adrenoと呼ばれるだけになる。

 メモリはLPDDR4x-4266を8x16bitで利用することが可能で、ストレージはNVMe(PCI Express)ないしはUFS 3.1に対応可能になっている。

 CPU性能はSnapdragon 8cx Gen 2と比較して85%向上しており、GPUは60%高速になっているという。そうした性能向上を果たしながら、1回の充電で25時間を超えるバッテリ駆動時間が実現可能で、同じようなバッテリサイズのx86プロセッサーベースのノートPCと比較して約2倍近い駆動時間を実現しているという。

Windows 11を公式にサポートするSoCとしては最初の5nmで製造される製品

Snapdragon 8cx Gen 3を搭載したノートPCのイメージ(写真提供:Qualcomm)

 Snapdragon 8 Gen 1には同社製DSP(新Spectra)とCPU/GPUを異種混合でサポートするAIエンジンが用意されたが、Snapdragon 8cx Gen 3でもそれは実装されている。AI推論の性能としては29TOPS以上の性能を実現しており、Snapdragon 8cx Gen 2と比較して3倍以上の性能を備えている。

 モデム機能も標準で搭載しており、別チップとして搭載するModem-RFの違いにより「Snapdragon X65 5G Modem-RF」(サブ6とミリ波、下り最大10Gbps)、「Snapdragon X62 5G Modem-RF」(サブ6のみ、下り最大4.4Gbps)、「Snapdragon X55 5G Modem-RF」(サブ6とミリ波、下り最大7.5Gbps)から選択できる。

 Wi-Fi/BluetoothはFastConnect 6900を搭載しており、Wi-Fi 6/6Eに対応し、最大3.6Gbpsで通信することが可能。Bluetooth 5.1にも対応する。

 MicrosoftのPluton TPMに対応したTPMを搭載しており、QualcommのSPU(Secure Processing Unit)を内蔵しており、両者を利用してMicrosoftの「Secured-core PC」仕様を満たすことができる。

 QualcommによればSnapdragon 8cx Gen 3はSamsungの5nm(5LPE)を利用して製造され、Windows 11が動作するSoCとしては初めて5nmプロセスルールを利用して製造される製品になるという(IntelのAlder LakeはIntelの7nm相当のIntel 7で製造され、AMDのRyzenはTSMCの7nmプロセスで製造されているため、確かにWindows 11が公式にサポートするSoCとしては初めての5nmで製造される製品になる)。

Chromebookで人気の廉価版Snapdragon 7cシリーズの最新製品Snapdragon 7c+ Gen 3も

Snapdragon 7c+ Gen 3のロゴシール(写真提供:Qualcomm)

 同時に発表されたSnapdragon 7c+ Gen 3は、Qualcommが5月に発表したSnapdragon 7c Gen 2の後継となるローエンド向けのPC用Arm SoCとなる。Snapdragon 7cシリーズは、Windows 10/11だけでなく、Chromebookに採用されることも多く、安価ながらそれなりの性能を持つSoCとして人気を集めている。

 今回発表されたSnapdragon 7c+ Gen 3はその7cシリーズの最新製品で、CPU、GPUともにSnapdragon 7c Gen 2から強化されている。ただし、どこが強化されたのかは明らかにされておらず、CPUのマルチスレッド時に60%、シングルスレッド時に30%、GPUが70%、Snapdragon 7c Gen 2から性能が向上しているとだけ公開されている(CPUは8コアであることは公開されている)。

 メモリはLPDDR4x-4266/LPDDR5-6400に、ストレージはNVMe(PCI Express)、eMMC5.1、UFS2.1に対応可能。

Snapdragon 7c+ Gen 3(写真提供:Qualcomm)

 また5Gに標準で対応し、「Snapdragon X53 5G Modem-RF」を搭載しており、下り最大3.7Gbpsで通信できる。Wi-Fi 6Eにも標準で対応しており、Bluetooth 5.2に対応。また、MicrosoftのSecured-core PCにも標準で対応可能。Snapdragon 7c+ Gen 3は6nmプロセスルールで製造され、対応するOSはWindows 11およびChromebookとなる。

 Snapdragon 8cx Gen 3、Snapdragon 7c+ Gen 3ともに搭載した製品は2022年の前半中に発表される予定となっている。

 Snapdragon 8cx/8cx Gen 2のMicrosoft版となるSQ1/SQ2を搭載したSurface Pro Xの後継製品が出るかというところに注目が集まるところだが、Microsoft CPO(最高製品責任者) パノス・パネイ氏はQualcommが発表したリリースの中で、今後もQualcommと協力して製品作りを行なっていくと強調しており、将来のSurface Pro Xの後継製品の存在を示唆しているとも受け取れるだけに、今度の動向は要注目と言える。

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