ファッションブランドは、進化する テクノロジー をいかにブランドのDNAにどう組み込んでいるのか?

DIGIDAY

ファッションにおけるテクノロジーは進化しており、体型に完璧に合ったサイズを保証する3D織り、百万ものデータポイントを持つボディスキャンテクノロジー、廃棄物を削減するオーダーメイドの衣服などが可能になりつつある。

「スタートアップのためのマッキンゼー(McKinsey for Start-ups)」ポッドキャストで、マッキンゼーのパートナーであるアニタ・バルチャンダニ氏はファッションにおけるテクノロジーの役割について「製品の流れと、テクノロジーがオンデマンド生産に果たす役割を可能にする需要予測」が含まれるようになるだろうと語っている。同氏はまた、サンプルの物理的な生産に関する生産廃棄物と長いリードタイムを排除するために、デザインにおいてテクノロジーがますます重要になると述べている。

廃棄物と長いリードタイムは、2015年に創業したアンスパン(Unspun)と2019年にローンチしたローズ・オブ・モーション(Laws of Motion)の2社が現在対処している問題である。

オーダーメイドのジーンズを可能にするアンスパンの技術

アンスパンはデジタルアパレル・ロボティックスのデニムブランドであり、カスタムジーンズを製造するためのフィット技術の完成に向けて時間とリソースを投入している。同社には、生産段階での廃棄物を最小限に抑えることによって世界の人の二酸化炭素排出量を1%に削減するという意欲的なミッションがある。その一環として、廃棄物を最小限にして生産段階の初期で在庫を残さないオーダーメイドモデルを使用している。

アンスパンは、iPhoneでのスキャンから顧客の正確な3Dモデルを作成する。同社のブランドリーダーであるアニカ・ヴィサー氏は、テクノロジーについて語る中で、文化的な重要度と炭素排出量に対する影響ゆえにデニムカテゴリーが同社にとって最善の出発点だったと述べている。「デニムは誰にとってもアイコニックなワードローブの定番だが、フィットしたものを見つけるのがもっとも難しい服のひとつだ」と同氏。「当社はインクルーシビティを推進するために存在している。そう言えるのは、どんな性別にもサイズにも体型にも対応するあらゆるサイズを作ることができるから」。今年実施されたアンスパンジーンズの社内ライフサイクル分析によると、同社は、既製品ジーンズを製造している典型的な企業の炭素排出量の42%をすでに節約しているという。

同社は現在デニムをカットしてジーンズを製造しているが、目標は3D機とによる製造である。そして、2021年11月にそのためのテクノロジーを導入している。また、そのテクノロジーによって廃棄物を出さずに数分間でエンドツーエンドの製品を製造することが可能になる。ヴィッサー氏は次のように述べている。「これは、このタイプのテクノロジーとしては初のものだ。これによってカスタマイズを次のレベルへと引き上げることができ、真に自動化されローカライズされた廃棄物ゼロの製造を行うことができる」。

今後20年間で材料生産が限界点に達すると見なされているため、循環型経済、つまり廃棄物ゼロモデルへのフォーカスは推進されるだろう。データ調査会社のジャストスタイル(JustStyle)のレポートによると、20年間で消費者数は2倍に、繊維の需要は84%増加すると予想されている。アンスパンは、パンガイア(Pangaia)やLVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)のようなブランドパートナーと積極的に協働して、自社のテクノロジーをこれらのブランドの製品に統合している。「我々が最終的に大規模に影響を及ぼせるようになる唯一の方法は大企業と協働して繋がることだ。なぜなら、ケリング(Kering)やLVMHなどの大企業が世界の衣服の大部分を製造しているから」とヴィサー氏は述べている。

ローズ・オブ・モーションのサイズ測定テクノロジー

一方、AIフィットテクノロジーブランドのローズ・オブ・モーションは、テクノロジーからのデータを使用して、自社製造プロセスとオーダーメードモデルに情報を提供することにもフォーカスしている。同社は今月、ジャンプスーツに使う独自開発のバーティカルサイジングテクノロジーをローンチした。ひとつのフィットモデルの測定値を使用してリニアなサイズ範囲を製造する従来のブランドとは異なり、同社はサイジングモデルを構築するために統計モデルと広範なデータセットの組み合わせを使っている。それ以前には、自社のほかのオーダーメード製品のためにフィット感と体型のサイジングイノベーションを開発しており、シースドレスが最初にそのテクノロジーを利用した製品だった。ローズ・オブ・モーションの創設者であるカーリー・ビギ氏は「マクロ消費者のトレンドは、ヘルスケアやビューティ業界ではパーソナライズ、インクルーシビティ、持続可能性を推進しているが、アパレル業界は、精密データやサプライチェーンの革新、持続可能な慣行の取り組みに遅れをとっている」と述べている。

ローズ・オブ・モーションの新しいバーティカルサイジングのイノベーションは、顧客アンケートで集められた10億を超えるデータポイントによって強化されており、現在ある180サイズを、サイズだけではなくさまざまな体型に対応する1260サイズへと拡張することができる。同社は統計モデルと膨大なデータセットの組み合わせを使って、ノンリニアな方法でサイジングをデザインして、従来の服の1サイズあたり最大で14のシェイプを提供する。

ローズ・オブ・モーションのインクルーシブなサイズ展開は同社サイトの顧客の99%に対応している。これはつまり返品が減るということだ。同社の返品率は1%だが、業界の平均は17%。同社の目標は服が100%フィットするという精度を達成することである。データ収集とフィットに関するフィードバックのために戦略的に設計されたイベントや顧客から10億以上のデータポイントを集めた。また、これらのデータセットからアルゴリズムで生成された合成データを使用して、AIモデルのトレーニングにも活用している。

「アパレル業界は最高の状態にあっても時代遅れだ」とビギ氏。「アパレル業界に変革を起こすということは、アパレル業界におけるデータの役割を変革することを意味する」。

ローズ・オブ・モーションは最初の2年間で収益を40倍に拡大し、世界中で500万着以上の衣服を製造しながら収益性を達成したと報告されている。同社は画像ベースのAIによるサイズの製品を販売する予定があり、その詳細は今年後半に発表されるという。

[原文:How fashion brands are building technology into their DNA

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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