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トラクターサプライ(Tractor Supply)は、田舎の再活性化と自作農場のトレンドに乗り続けている。
同社は4月21日に行われた第1四半期の決算発表で、同四半期の実売上が昨年同時期の27億9000万ドル(約3570億円)から8.3%増加し、30億2000万ドル(約3870億円)に達したと報告した。同社の既存店売上高は昨年の38.6%と比べて5.2%増加した。これは等価平均チケットが6.7%増加し、等価平均取引額が1.4%減少した結果だ。
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パンデミックにより自宅所有率とペット飼育率が増加し、米国の一部消費者が大都市から脱出するなか、トラクターサプライはもっとも大きな恩恵を受けた業者のひとつだった。この四半期にもっとも売れたのは、乾燥ドッグフードや鶏肉などのカテゴリーだった。アナリストたちは同社の成長が平常化しつつあるとしているが、エグゼクティブたちは同社がこれらのトレンドから利益を得続けられると語っている。
「市場リーダーとして当社は、これらの構造的なトレンドから利益を受け続けられる、有利な位置にいる」と、トラクターサプライのCEOを務めるハル・ロートン氏は、投資家およびアナリストとの発表で述べた。ロートン氏は、同社のライフ・アウト・ヒア(Life Out Here)戦略イニシアチブは特にモメンタム増大が起きていると語る。同社のライフ・アウト・ヒア戦略には、ビジネスプロセスのデジタル化と、さらなるオムニチャネル機能に加えて、トラクターサプライの顧客ベースを拡大する計画も含まれている。
都市からの脱出による恩恵
トラクターサプライは米国で、消費者が田舎に移住するなど、いくつかの近年のトレンドから収益を得てきた。これには、大都市を離れた若い層の消費者も含まれる。ロートン氏は、同社がはじめての家を保有するミレニアル世代から恩恵を受けたことについて、多くの場面で語ってきた。
プレイサーエーアイ(Placer.ai)のマーケティング担当バイスプレジデントを務めるイーサン・チェルノフスキー氏は次のように述べている。「2年が経ち、引っ越し先に永住する人々がでてきた。人々が郊外に移住すると空間が広くなり、家屋を改良するはじめての、あらゆる需要が生まれるため、その機会は大きなものだ。そして、当社はこれが触媒となり、多くの成長が促されると考えている」。
トラクターサプライは何年にもわたって農家や牧場主に商品を販売してきたが、最近になってペットの飼い主に目をつけた。同社は昨年前半にオンラインでペットサブスクリプションサービスの提供を開始し、顧客がアプリを使用してオンデマンドで専門の獣医のアドバイスを受けられるようにした。
チェルノフスキー氏は、専門家や日曜大工(DIY)の顧客ベースを持つ多くの小売業者、たとえばトラクターサプライ、ロウズ(Lowe’s)、ホームデポ(Home Depot)などにとって、これらの顧客ベース両方の要求を満たすのは微妙なバランスだと語る。ホームセンター業者のロウズやホームデポの場合、パンデミックの前半において自社の成長はDIY顧客に支えられていた。しかしパンデミックが長引くにつれ、専門家の契約者が売上を伸ばすようになった。
トラクターサプライは、同社のネイバーズ・クラブ・ロイヤルティ・プログラム(Neighbor’s Club Loyalty Program)で、四半期に過去最高の2480万人のメンバーを獲得したと、エグゼクティブは語る。同社は昨年、自社のロイヤルティプログラムを改訂しており、ふたつの無料の即日配信や、プリファード・プラス・ネイバー(Preferred Plus Neighbors)に対して四半期ごとに丸1日トレイラーをレンタルするなどの特典を追加した。
同社は過去2年間にわたり、デジタルへの投資も増やしてきたと、ティップランクス(TipRanks)で市場調査責任者を務めるジュリー・ギレスピー氏は語る。パンデミックの初期、消費者によるオンラインでの買い物が劇的に増加したころ、トラクターサプライは最初のモバイルアプリを公開し、自社のウェブサイトを再デザインした。
ギレスピー氏は次のように述べている。「これは時代を物語る一種の象徴で、特にこの数年間において、さまざまなものがどれほどオンラインに移行したかを示していると考えている。同社はパンデミックを機会にデジタルを中心とし、そのトレンドを収益化する点で、適切なタイミングをつかんだ」。
最近の決算発表レポートによれば、トラクターサプライのeコマース売上は39四半期連続で2桁パーセントの増加を達成した。トラクターサプライアプリもこの四半期に300万ダウンロードに達したと、エグゼクティブは語っている。
同社の前にある障害
収益の増加にもかかわらず、トラクターサプライの通年ガイダンスは予測を下回ったと、サイズモアキャピタル(Sizemore Capital)の最高投資責任者を務めるチャールズ・ルイス・サイズモア氏は語る。トラクターサプライは歴史的に、農業を中心としていたことから、不況の影響を受けてこなかったと、同氏は述べている。
同氏は次のように述べている。「農家向けの需要は、不況か否かに影響されない。もちろん現在のトラクターサプライは純粋な農業用サプライの企業から、ライフスタイル企業への転換を進めたため、経済サイクルの影響も受けやすくなっている」。
同社は会計年度2022年にも自社のガイダンスを繰り返した。同社は実売上が136億ドル(約1兆7400億円)から138億ドル(約1兆7700億円)の範囲で、既存店売上は3%から4.5%増加すると予測している。
同社の粗利益率は、商品コストのインフレや、輸送コストの増大などの経済的圧力を受け、昨年第1四半期の35.2%から、34.9%に減少した。
ティップランクスのギレスピー氏は次のように述べている。「これらの逆風にもかかわらず、同社は良い業績を上げている。多少の影響は見られるが、現時点で破壊的なものはない」。
[原文:Tractor Supply continues to dominate as more Americans move out of cities]
Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:長田真)
Image from Tractor Supply