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創業10年目を迎える後払いサービスプロバイダのアファーム(Affirm)は、加盟店の拡大を目指している。
同社は4月12日、再販プラットフォームのポッシュマーク(Poshmark)とのパートナーシップを2年間拡大すると発表した。また、2021年12月には手芸品小売店のマイケルズ(Michaels)と提携し、さらに今年1月には、ほぼすべてのオンラインストアでアファームを利用できるようにするGoogle Chromeのブラウザ拡張をリリースした。
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2012年創業のアファームは、アメリカでのBNPL(後払い)ソリューションのパイオニア的存在であり、初期のパートナーにはマットレスメーカーのキャスパー(Casper)、家具通販大手のウェイフェア(Wayfair)、オンラインフィットネスのペロトン(Peloton)などが名を連ねている。現在は約17万社近い小売店が加盟しており、アファームのCRO(最高収益責任者)であるジェフ・コット氏は、今後は加盟店を増やしていくだけではなく、現在のパートナーとの関係を強化したいと述べている。アファームの第2四半期の収益は、前年同期比77%増の3億6100万ドル(約463億円)に達した。新規加盟店と収益の伸びは、EC業界最大手のAmazonとショッピファイ(Shopify)がパートナーに加わったことが大きく寄与している。
アファームは自社のエコシステムにいくつかの新しい製品と機能を導入するために、いくつかの動きを見せている。1月には、ショッピング、ペイメント、ファイナンシャルサービスを1カ所で提供するアファームスーパーアプリ(Affirm SuperApp)をリリースし、利用者がお気に入りのマーチャントからの限定オファーを求めて買い物ができるようになった。さらに5月には、返品サービスを提供するリターンリー(Returnly)を買収し、対象顧客が返品手続きを開始すると、即座に加盟店からのクレジットを受け取れるようにした。これらは、アファームが単なる後払いプロバイダ以上の地位を占めるための施策である。
経済がインフレ傾向となる一方でライバルは増え続けているが、コット氏は、同社は堅実に成長を続けるだろうとしている。コット氏は米モダンリテールに、このような環境で同社がどのように成長を続け、ライバルとの差別化を行っているかについて語っている。この対談内容は長さと明瞭さを考慮し編集を加えたものである。
◆ ◆ ◆
――現在はBNPLブームとも呼べる状況で、多くのライバルが参入しているが、アファームはどのように戦うつもりか?
競争が激化するなかで、何がアファームを特別な存在にしているか、つまり差別化しているかというと、これは最初から考えていたことだが、比類ない技術だと思う。シームレスで高速なユーザーエクスペリエンスをお客様に提供するだけでなく、ほかではできない業務を請け負うことができる技術だ。
アファームは、さまざまな取引に対応できる。そして、お客様に延滞料や隠れた手数料を一切課さないことが、アファームをショップに組み込もうとしているすべての小売業者にとって最大の魅力になるだろう。
アファームを使えば値引きの必要がなくなる。これは重要な点だ。小売パートナーにとって、ブランド価値を守り続けることはとても大切なことだ。
――昨年、リターンリーを買収したが、その最大のメリットは何か?
成長を続けるなかで、どうすればアファームのエコシステムに革新的な新製品や優秀な人材を早く導入し、小売業者とユーザーにその成果を提供できるか、その方法を考えている。
リターンリーと手を組むことで、加盟店と取引を効果的に維持し、資金がエコシステムから流出しないという点で、多くの方から高い関心を集めることができた。
リターンリーを一例として、これからも加盟店に対してより多くのツールを提供し、加盟店のビジネス成長をサポートしていくつもりだ。
――アファームが現在、有望だと考えている分野はあるか?
アファームでは常にお客様の買い物行動を調査し、最善の方法で有望な分野にアファームを導入しようと考えている。短期的に有望だと思うセグメントは、ここでは明らかにしない。
ただし、たとえば、旅行関連は強く、今後の成長も期待できると見ている。アメリカン航空(American Airlines)やパッケージツアーのデルタバケーション(Delta Vacations)と強力なパートナーシップを結んだのはそのためだ。
ペロトンや筋力トレーニングマシンブランドのトーナル(Tonal)を見れば、依然としてオンラインフィットネスも強いことがわかる。
――インフレの進行は後払いの利用にどう影響を与えるか?
インフレやサプライチェーンの遅延など、小売業者が直面するさまざまな課題に対して、アファームは確実に成長し続けることができる強いポジションにいると考えている。
インフレは確かに消費者の購買力をいくらか引き下げるかもしれない。しかし、アファームは消費者の呼び戻しに役立つと確信している。
金利が上昇している。金利上昇が消費者に与える潜在的リスクを考えると、アファームの年換算利回り0%はますます魅力的で消費者に優しいものになる。マクロ的なインフレ圧力が強まるなか、アファームが重要な差別化の要素になると考えている。
Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Affirm