5000万ドル(約64億円)の新たなシリーズB資金調達ラウンドを達成した、アジアのマーケットプレイスのヤミ(Yami)が、ビューティカテゴリーを強化しつつある。
3月、創業9年となるこのeコマースマーケットプレイスは、投資会社のアルトス・ベンチャーズ(Altos Ventures)とバルサム・ベイ・パートナーズ(Balsam Bay Partners)が主導する資金調達ラウンドを発表し、その総額は6000万ドル(約77億円)に達している。既存の投資会社ジェイ・ピー・モルガン(J.P. Morgan)とGGVキャピタル(GGV Capital)もこの新ラウンドに参加した。
Advertisement
Kビューティのブームに乗り、アジアのビューティブランドが好調
もともと米国でアジアのパッケージ食品を扱うeコマースアウトレットとしてスタートしたヤミは、ビューティ事業の構築に多大な投資を行ってきた。ビューティマーケティングへの投資を増やし、米国でのKビューティブームの波に乗ったことで、2014年には10%だった総売上高に占めるビューティの割合は、現在35%に達している。
ヤミの創業者でCEOのアレックス・ジョウ氏は、「今後、ビューティカテゴリーは間違いなくさらに大きくなり、ビジネスでのより高い割合を占めるようになる」と語っている。「アジアのビューティブランドを認識し始めたアジア人以外の顧客も増えている」。
このeテイラーは、米国とアジアの両方に倉庫を持ち、直販とマーケットプレイスモデルを通じて、3万点以上の日本、韓国、中国のビューティ製品を販売している。ジョウ氏によると、KビューティとJビューティがトップカテゴリーで、ドクタージャルト(Dr. Jart)やメディヒール(Mediheal)といったKビューティのブランドのシートマスクが売れ筋商品である。また、プレステージビューティも人気があり、SK-IIのシートマスクや資生堂のスキンケアもトップセラーだ。3CEなどのKビューティブランドのメイクアップ製品も人気がある。
アジアのビューティ製品を幅広く低価格で提供できる強み
ジョウ氏は、中国からの留学生としてカンザス州で4年間を過ごしたが、地元の食料品店でアジアンフードを見つけることができなかった経験から、2013年にヤミを立ち上げた。食品を発売してから半年後にビューティ部門を導入している。
「スナックとビューティはペースの速い韓国のカテゴリーだ。そのため需要が伸びており、投資家はこの分野への投資を好む」とジョウ氏は指摘した。このプラットフォームでは、米国でのKビューティの波に先駆けてビューティカテゴリーをローンチした。ユーロモニター(Euromonitor)によると、韓国の米国へのビューティ製品輸出は2015年に59%成長し、総額2億700万ドル(約266億円)に達している。
最近では米国でKビューティとブラックピンク(Blackpink)のようなKポップブランドなどの韓国ポップカルチャーが大流行しており、アルタビューティ(Ulta Beauty)やセフォラ(Sephora)といった大手ビューティ小売店へ進出するKビューティブランドはますます増加している。
ヤミは、国際貨物と「アジアのサプライチェーンに関する深い知識」によって差別化を図っているという。彼はまた、「アジアのブランドとのよりよい関係」が意味することは「米国内の他社とくらべて、より多くのアジアのビューティ製品のセレクションを、より低価格で提供できる」ことだと述べた。
日本のブランドとの独占コラボレーションにも投資
ジョウ氏いわく、今回の資金調達は、人材、成熟したサプライチェーン、ビューティ製品の品揃えの拡大、カスタマーリサーチのためのテクノロジーなどに投資するために使われる。最近、日本支社を開設したばかりであり、「アジアのビューティブランドとの直接的な関係を確立する」ために韓国支社とフルフィルメントセンターの開設も進行中だ。
現在、同社のマーケティング予算のおよそ50~60%がビューティに費やされており、YouTube、インスタグラム、TikTokなどのプラットフォームでインフルエンサーと協力している。米国に暮らすアジア系の消費者を対象としたマーケティングでは、消費者になじみのあるブランドのプロモーションに重点を置くが、ヤミはこれらのソーシャルプラットフォームを通じて、米国のビューティ顧客全体をターゲットとしている。独占コラボレーションにも投資しており、最近では日本の手頃なスキンケアブランドの石澤研究所との共同ブランドビューティボックス「ヤミx石澤」もローンチした。
「アジア以外の顧客に対しては、異なる(マーケティング)戦略を採用している」。その戦略では、新しいブランドや製品について顧客を教育するために、コンテンツ、インフルエンサー、アフィリエイトチャネルに注力している。
これは急速なイノベーションのパイプラインを有するKビューティでとくに有効だという。
「Kビューティでは、文字通り毎月新しいブランドが登場している」とジョウ氏は語る。「一方で、Jビューティの場合(業界は)非常に安定しようとしている」。
[原文:How Yami is becoming the Amazon of K-beauty and J-beauty]
LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida 編集:黒田千聖)