マサチューセッツ工科大学(MIT)と国立再生可能エネルギー研究所(NREL)のエンジニアが共同で、可動部品のない熱機関を発明しました。研究チームが作成した新しい熱機関は、40%以上の効率で熱を電気に変換することが可能となっており、これは従来の蒸気タービン以上に優れた数字となります。
Thermophotovoltaic efficiency of 40% | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-022-04473-y
A new heat engine with no moving parts is as efficient as a steam turbine | MIT News | Massachusetts Institute of Technology
https://news.mit.edu/2022/thermal-heat-engine-0413
MITとNRELが開発した新しい熱機関は、太陽電池に似た熱光起電力(TPV)セルで、高温に加熱した熱源から出るふく斜光を電気エネルギーに変換することで電気を生成します。研究チームによると、新開発の熱機関はセ氏1900~2400度の熱源から電気を生成することが可能とのこと。
以下の写真は研究チームが開発したTPVセルを、ヒートシンクに取り付けたもの。TPVセルのサイズは縦1cm×横1cmと小型です。
研究チームはTPVセルをグリッドスケール熱電池に組み込むことを計画しています。これにより、太陽光などの再生可能エネルギーから得た「過剰なエネルギー」を、高温のグラファイトでできた厳重に絶縁された貯蔵庫にためることが可能となります。これにより、曇りの日などでも熱エネルギーから電気を生成することができるようになるわけです。
研究チームは新しいTPVセルの主要パーツを個別の小規模実験で実証しただけで、各パーツをすべて統合し、システム全体が完全に動作することを確かめることには成功していません。そのため、研究チームはシステムの完全な実証に向けた取り組みを進めています。なお、研究チームは熱機関を用いることで、既存の化石燃料による発電所に取って代わる「再生可能エネルギーだけで発電可能な脱炭素電力網」の実現に期待を寄せています。
開発に携わったMITの機械工学科のアセグン・ヘンリー教授は、「TPVセルは熱電池が実行可能な概念であることを実証するための最後の重要なステップです。熱電池は再生可能エネルギーを増殖させ、完全に脱炭素化を実現した電力網に必要不可欠です」と語り、今回のTPVセルが化石燃料からの脱却に必要不可欠であると述べています。
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