世界最大級の音楽イベント コーチェラ が 2年ぶりに開催へ:ブランドたちもアクティベーションに注力

DIGIDAY

パンデミックの影響で2年間中止になっていたコーチェラが復活。そしてブランドも戻ってきた。

今年、パンデミック前より数は少ないものの、ファッションとビューティブランドがコーチェラ関連の対面アクティベーションを行っている。コーチェラに関してのブランドアクティベーションは経費の高騰により2019年の時点ですでに減少していたが、ライブ音楽と大規模なソーシャルエンゲージメントを提供するフェスティバルが生み出す利益を期待して、アクティベーションに注力し続けるブランドもいくつかある。

「ライブイベントの再開に対して楽観的に感じたし、その傾向が見られた」と述べているのは、バッスル・デジタル・グループ(Bustle Digital Group、以下BDG)のエクスペリエンス・ブランドマーケティング担当エグゼクティブバイスプレジデント、リンジー・リーフ氏だ。BDGは2019年に買収したメディアブランドのゾー・レポート(The Zoe Report)とナイロン(Nylon)の2つのイベントを主催する。コーチェラの第1週目の週末である4月15〜17日に、BDGはゾー・レポートを支援し、コーチェラのサテライトイベントである「ゾーオアシス(Zoeasis、Zoeとoasisの造語)」を復活させる。ゾーオアシスが初めて行われたのは2015年だった。また、BDGはナイロンハウスのアクティベーションを今回初めてコーチェラで開催する。

フェスシーズンに対する消費者の需要は高い。今回のコーチェラはラインナップの発表前に完売しており、また、ロラパルーザはデルタ株が登場した2021年の夏でもさえも売り切れた。

恒例のリボルブフェスティバルも復活

ブランドアクティベーションから生み出されるソーシャルメディアのエンゲージメントは大規模になる可能性がある。コーチェラの最初の週末に、リボルブ(Revolve)の毎年恒例のリボルブフェスティバル(Revolve Festival)が復活。これはファッションインフルエンサーによる最大のサテライトイベントであり、音楽ラインアップはこれから発表される。2019年のこのイベントはカーディ・B氏やSZA氏らアーティスト、ケンダル・ジェンナー氏などのセレブやインフルエンサーの参加により、20億を超えるソーシャルインプレッションにつながった。

リボルブの最高ブランド責任者、ライサ・ゲロナ氏は2021年にこのフェスティバルの計画を立て始めたとき、次のように述べている。「ほかのいろいろなイニシアチブと同様に、実行されると思って進めなければならなかった」。今回は、リボルブが独占小売契約を結んでいる、女優のペイトン・リスト氏による新しいメイクアップブランド、プレイビューティ(Pley Beauty)がイベント参加者に無料のメイク体験を提供することになっている。

ゾーオアシスの内容

以前は夜のパーティだったゾーオアシスだが、今年はコーチェラ第1週末の午後にコーチェラ会場に近い私有地で、ウェルネスにフォーカスして開催される予定だ。ゾーオアシスでのファッションブランドのアクティベーションにはエクスプレス(Express)が参加する。エクスプレスはスタイルラウンジを設置して、レイチェル・ゾー氏のデザインによるコレクションのスニークピークを行う。ビューティ関連では、ヨーロピアンワックスセンター(European Wax Center)がブラウバーを用意して来客にブラウシェイピング(眉のお手入れ)を提供する。キーズソウルケア(Keys Soulcare)は瞑想テントエリアを設けたりブレスレットメーキングを提供する。

MCMが後援するナイロンハウス

ナイロンハウスはアート・バーゼル・マイアミで最初に開催されたが、今回はセレブやインフルエンサーからなる独占ゲストリストを用意して前述の私有地で開催、夜のイベントとなる。後援は高級レザーブランドのMCM。MCMは自社のDJブースを設けることになっている。DJのペギー・グー氏がMCM製品をまといヘッドライナーを務め、セットの間にはMCMの動画コンテンツが再生される。E.l.f.コスメティックス(E.l.f. Cosmetics)がゲストにメイクアップ体験を提供する予定だ。

「コーチェラは大規模な文化イベントのひとつで、MCMの可視性がおおいに高まる。様々な興味を持つ異なる年齢の多様なオーディエンスにリーチできる」と、MCMのグローバルクリエイティブオフィサー、ダーク・ショーンバーガー氏は述べている。

対面アクティベーション以外を選んだブランドも

ビューティブランドの中には今年は対面アクティベーションへの投資に慎重なところも多く、代わりにソーシャルメディアでフェスティバルのスタイルを紹介したり、フェスシーズン関連のプロモーションを実施したりしている。過去数年のコーチェラでアクティベーションをしていたが今年は行っていないビューティブランドにはイブ・サンローラン・ボーテ(YSL Beauty)とトゥーフェイスト(Too Faced)がある。トゥーフェイストはコーチェラ開催の週に30%の特別割引を提供する。ファッション関連ではコーチェラの公式パートナーとしてアディダス(Adidas)、H&M、レイバン(Ray-Ban)らが挙げられているが、ビューティブランドはリストされていない。ただし、ヴィクトリアズシークレット・ピンク(Victoria’s Secret Pink)はスポンサーとして挙げられており、コーチェラのパートナーページには同ブランドのボディケアラインへのリンクがある。

また、コーチェラ関連プロモーションをオンラインで実施することにしたブランドもある。たとえば、グラムネティック(Glamnetic)は自社サイトにフェスティバル厳選ページを設けて、「フェスティバルシーズン(Festival Season)」や「インディオレディ(Indio Ready)」と名付けられたネールやアイラッシュのコーチェラ関連パッケージを提供している。

完全バーチャルのコーチェラプロモーションは、当初はパンデミック対応策として行われていた。2019年コーチェラの公式ビューティスポンサーだったNYXプロフェッショナル・メイクアップ(NYX Professional Makeup)は、2020年、コーチェラが中止になったときに仮想コーチェラライブストリーミングシリーズをインスタグラムで公開した。今年、NYXはIRLプロモーションに戻り、クリエイターたちをホストして対面イベントでアイルック体験を提供する。

対面音楽フェスでのプロモーションについて、「ブランドの中には他社よりもその実施に自信を持っているところもある」とリーフ氏。「だが、多くのイベントが実施されて消費者が対面イベントを求めているのを目にすれば、ブランドはもっと自信を持てるようになるだろう」。

アクティベーションを行うブランドが少なくても、インフレとともに(イベント)会場への需要が高まっていることはコーチェラが大投資であることを意味する。

リーフ氏は、イベント会場の確保について「今年は競争がとても激しかった」と述べている。「体験型のライブイベントに戻りたいという消費者の需要に対応するにはコストが高くなるかもしれないが、価値と投資収益率も高まるだろう」。

コーチェラ関連の今年のスタイル

2019年のイベントで目立った花の冠やホーボースタイルではなく、今年のフェスに対しては新しい感性が選ばれている。リーフ氏によると、BDGは「『ユーフォリア/EUPHORIA』(原題: Euphoria)のスタイルに傾倒している」そうだ。その一例はグリッターをつけた眉で、これはブラウバーで提供される。

『ユーフォリア/EUPHORIA』風のフェイスジェム(顔につけるシールタイプのラインストーン)を販売しているプレイビューティは、アクティベーションの一環として新しい「ラブチャイルド(Love Child)」フェスティバルコレクションをローンチしている。

プレイビューティのゼネラルマネージャー、ローラ・ステイヴス氏は次のように述べている。「当社のフェイスとボディ用ラインストーンを使ってひとりひとりにカスタマイズした無料ジェムメイク体験を提供して、フェスのスタイルを引き立ててもらう」。

一方、ショーンバーガー氏によると、MCMは「明るい色と鮮やかなプリント」を前面に押し出すという。

ゲロナ氏は、「今では本当に幅広い多様性がある。Y2Kスタイルはプレタポルテで復活しており、クラシックでナチュラルなスタイルは夜の外出向けとして流行している」と述べている。

リスクの中でのイベント再開のメリット

オミクロン変異株の感染拡大によって示されたように、大規模なイベントに投資するブランドには新型コロナウイルス感染症によるキャンセルのリスクがまだ存在する。ロサンゼルス当局はロサンゼルス郡における感染者数の減少が止まっているため、BA.2変異株に注目している。

「我々はキャンセルに慣れている。重要なのは対応方法だ」とゲロナ氏。「我々はコーチェラの計画を慎重に行った。どんなことでも起こる可能性があることを理解しているし、それに対応する準備ができていなければならない」。

仮にキャンセルになった場合、パンデミックの初期と比べて現時点での返金は困難になっている。「当初は『返金する』とか『別の機会を設ける』という姿勢が見られたが、今では会場側も自分たちを守らなければならなくなっている」とリーフ氏。

また、同氏は次のように述べている。「何もかもが高くなっている。多くの課題も存在しているが(イベントでのアクティベーションを)成功させられればすべての見返りを得ることができるし、それだけの価値はある」。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: Coachella’s comeback brings (some) brand activations

LIZ FLORA(翻訳:ぬえよしこ、編集:黒田千聖)

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