コカ・コーラ(Coca-Cola)が、ライアットゲームズ(Riot Games)の人気モバイルゲーム、リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト(League of Legends:Wild Rift、以下ワイルドリフト)と初となる世界規模のファウンディングパートナーとして、複数年契約を結んだ。これは、著名な国際的ブランドによるモバイルeスポーツ界への強力なエンドースメントであり、存続可能な、競争力の高いモバイルゲーミングエコシステムの構築というライアットの取り組みに、さらなる大きな力を与えている。
このパートナー関係は、ワイルドリフト――高い人気を誇るライアットのPC版ゲーム、リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends、以下LoL)をひな形にしたモバイルゲームだ――と、ライアットが2022年1月に立ち上げた同ゲームのeスポーツリーグ「ワイルドリフト・eスポーツ(Wild Rift Esports)」の双方にまたがるものだ。コカ・コーラは今後、ライアットゲームズと組んでカスタムコンテンツを共同制作するとともに、ワイルドリフトのトーナメントに参加するプロおよびカジュアルプレイヤーの両方に向けたエクスペリエンスを創出していく。両社共に、具体的な契約期間も金額も明かさなかった。
勢いを増すモバイルeスポーツ
コカ・コーラがライアットゲームズと組むのは、今回が初めてではない。同社はこれまでにもLoLのさまざまな競技イベントを協賛しており、たとえば毎年開催されているLoLの世界大会でも、2013年から2016年にかけてスポンサーを務めた。
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「我々は以前から、この関係はぜひ維持したいと考えていた。今回、タイミングと機会のいずれも相応しいものだと判断し、契約に至った」と、コカ・コーラのグローバルゲーミング/インフルエンサーおよびニュープラットフォーム部門シニアディレクター、ヴァレリア・へルザー氏は話す。
実際、モバイルeスポーツリーグの後援を決めたコカ・コーラのこのたびの判断は時宜に適ったものであり、その背景には、2021年を通じてモバイルeスポーツアクティビティが勢いを増した、という事実がある。ライアットだけでなく、ESLゲーミング(ESL Gaming)といった主要競合他社も、この数カ月で独自のモバイルeスポーツリーグを形成している。
モバイルゲーミングは、PCおよびゲームコンソールがゲーマーにとって高嶺の花である場合が少なくないアジア市場でとりわけ人気が高い。ワイルドリフトの場合も然りであり、北米のプレイヤー数はアジア地区のそれから大きく離されている。コカ・コーラとのパートナーシップを通じ、自国における存在感を増強したいというのが、ライアットの考えだ。
「コカ・コーラのような強力なブランドがモバイルeスポーツの確たる未来を信じ、早くから参入し、エコシステムの共同構築に努力とエネルギーを投じてくれる。『素晴らしい』の一言に尽きる」と、ライアットゲームズのワイルドリフト・eスポーツトップ、レオ・ファリア氏は話す。「これは、ワイルドリフトを確実に新たなレベルへと引き上げてくれるパートナーシップの記念すべき始まりだ」。
「大企業」の参入が意味するもの
実際、ワイルドリフト・eスポーツのファウンディングパートナーとなったコカ・コーラは今、いち早くeスポーツリーグパートナーとなった他企業と同様の立場にある。後者の好例がマスターカード(MasterCard)であり、同社が2018年、LoL・eスポーツのパートナーとなったことで、競技ゲーミング領域に対するブランドの関心が一気に高まった。
「ようするに、正当性の問題だ。つまり、大企業の参入はeスポーツ界参入を考えているほかのスポンサー(候補)に一定の安心感を与えられる」と、ニューヘイブン大学スポーツマネジメント学部の助教で、eスポーツ学部エグゼクティブディレクターのジェイソン・チャン氏は分析する。
「ビジネスとは突き詰めればすべてがもの真似だ。そうだろう? だからある業界の非固有種である巨大ブランドの一社がデューデリジェンス(適性評価手続き)を行ない、そこは金になると判断すれば、ほかのブランド勢も安心して資金と時間を、少なくとも試しに投じることになる――そしてそれはもちろん、その業界全体にとっていいことにほかならない」。
また、関係者らの話を総合すると、このパートナーシップはいわゆる共生的関係であり、コアゲーマーを強く惹きつけるワイルドリフトの圧倒的魅力の恩恵に与るのも、コカ・コーラの狙いと思われる。2021年9月、コカ・コーラは自社プラットフォーム「リアル・マジック(Real Magic)」を立ち上げ、ゲーミングおよびeスポーツに絡めた動画広告を配信したが、迎合的あるいは紛い物であるとして、ゲーマーたちの激しい反発に遭った。今回のワイルドリフトとのパートナー契約には、コカ・コーラがゲーミングコミュニティと真の繋がりを築く一助になれる可能性がある。
へルザー氏は反発があったことを認めたうえで、こう話す。「我々が常に耳を傾けているという事実、そして、そこから何を学び、どう進化したのか、そこが何よりも重要となる。コカ・コーラはこれまでゲーミングコミュニティにおいて数多くの役割を担ってきた。ここからは、より具体的かつピンポイントな、ゲーミングオーディエンスになおいっそう寄り添うかたちにどう進化していけるのかに、焦点を移していく」。
「彼らはナンバー2では納得しない」
今回のパートナーシップにおける最初のアクティベーションは、コカ・コーラのデジタルキャンペーン「イット・マスト・ビー・リアル(It Must Be Real)」で、これにはワイルドリフト・eスポーツの実際の競技シーンが使用される。コカ・コーラとライアットはいずれも今後のアクティベーション計画に関する詳細は明かさなかったが、コカ・コーラがワイルドリフト・eスポーツのライブ配信に大いにフィーチャーされること、そしてライアットがコカ・コーラとタイアップした独自のゲーム内コンテンツの制作に乗り出すことは、両社共に認めた。
後者の一例として考えられるのが、従来のスポーツでも見られる、アリーナ(競技場)における文字通りのバナー(旗幟)広告だ。ライアットにはすでにこれをLoLのeスポーツイベントで効果的に導入した実績があると、ライアットゲームズのファリア氏は話す。
ワイルドリフトのレギュラーシーズンは3月27日に終了し、全世界の上位6チームが4月1日から10日にかけて開催されるプレーオフラウンドに進出する。今回のパートナーシップのアクティベーションの場がゲーム内であれ、ストリーミング上であれ、これが有力ブランドによるモバイルeスポーツへの過去最強の「信任票」であることに変わりはない。同業界の非固有ブランドおよびマーケターにとって、モバイルeスポーツは有望な人跡未踏地にほかならない――そして、コカ・コーラはその土地の領有権をいち早く宣言したことになる。
「コカ・コーラのような巨大企業であればどこも、いわゆるユビキタス(遍在的)なものを、あるいはユビキタスになり得るものを求める。コカ・コーラがこれまで、オリンピックといった巨大国際イベントのスポンサーになってきた理由は、そこにある」とチャン氏。「彼らはナンバー2では納得しない、理由は単純で、それは彼らのビジネスモデルではないからだ――彼らは世界ナンバー1の炭酸飲料ブランドであり、だからこそ常に成功と同一視されることを求める」。
[原文:Why Coca-Cola is becoming the first worldwide founding partner of Wild Rift Esports]
Alexander Lee(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)