大学生をしながら一企業の正社員として働く異色の大学生がいる。新卒一括採用がスタンダードとなっている日本で、新たな選択肢の1つとなるのだろうか。
筑波大学3年の羽倉光一さん、22歳。一見、普通の大学生にも見えるが、彼にはこんな肩書がある。
「“大学生正社員”ということになります」(羽倉さん、以下同)
羽倉さんは「大学生」と一企業の「正社員」という2つの肩書を持つ、異色の二刀流。学業のかたわら、LayerXというベンチャー企業に勤務し、新規顧客の獲得に汗を流す毎日だという。
周りと同じように、仕事をこなす羽倉さん。転機が訪れたのは大学3年生のころ、プロを目指していたサッカーでの挫折がきっかけだった。
「『ちょっとプロは難しいな』と思うようになって。そこから今後の進路をどうしようかというところで、スタートアップやベンチャーという世界も見てから選びたいという思いがあったので、休学して1年働いてみて、進路を決めようかなと」
そして、去年4月、羽倉さんは大学を休学しインターンへ。大学生正社員という前例があったことも決断を後押しし、試験を受け、正社員としてLayerXに入社することとなる。
「(LayerXには)元々大学生で執行役員をされているような方がいたり、『そういう選択肢もあるんだ』と知る中で、じゃあ自分の中でできるなら1年後(卒業後)のタイミングじゃなくても、今正社員になってもいいのであればチャンスをつかみにいくというか。早く正社員になった方が、契約の形態も含めてメリットがあるなということを感じて、正社員になることをこのタイミングで決めました」
こうして、二足のわらじをはくことになった羽倉さん。今も卒業論文に追われながら、週5日フルタイムで勤務している。
しかし、残り少ない学生生活。貴重な時間を仕事に費やさなくてもいいのでは……とも思うが、その裏には彼が内に秘めたしたたかな野望があった。
「最終的には自分でスタートアップを起業して、経営したいという思いがあるので。規模・ステージというのは今しかないですし、成長しちゃったら今のこの会社の状態は経験できないので。そういった面では、インターンの身では知れないところもあるので」
就活、卒業、そして就職と、これまで当たり前に学生たちが歩んできた人生のレール。いまだ“新卒一括採用”の文化が根強く残る日本で、学生でありながら正社員として働くという選択は、新たな働き方のひとつなのかもしれない。
「人それぞれ状況は違うので。僕は本当に運が良くて、僕の状況だからこそこういう選択ができた。もちろん学業は優先してやるというのはあると思うんですけれども。多くの学生を受け入れて、多くの学生を見るという中で、どうしても一括で同じ時期に(新卒採用を)しないといけないというのは理解できるんですけど。働いてからキャリアを決められるという役割を、全てじゃなくても一部の企業が提供しているというのは、社会的にも良いことじゃないかなと個人的には思っています」
(『ABEMAヒルズ』より)