アメリカ・ミネソタ大学の研究チームが開発中の男性用経口避妊薬(ピル)が「マウス試験で99%の避妊率を達成した」と報じられました。この男性用ピルは2022年内にヒト臨床試験が行われる見通しです。
Male contraceptive pill found 99% effective in mice
https://www.france24.com/en/live-news/20220323-male-contraceptive-pill-found-99-effective-in-mice
Male Contraceptive Pill Found 99% Effective in Mice, With No Observable Side Effects
https://www.sciencealert.com/new-attempt-at-a-side-effect-free-male-contraceptive-has-proven-effective-in-mice
Male contraceptive pill is safe and effective in tests in mice | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/2313115-male-contraceptive-pill-is-safe-and-effective-in-tests-in-mice/
この男性用ピルを開発したのは、ミネソタ大学の大学院生であるアブドゥッラー・アル・ノーマン氏。ノーマン氏は非ホルモン系のピルを開発するために、精子の形成に重要な役割を果たすビタミンAの誘導体「レチノイン酸」に関係するレチノイン酸受容体αというタンパク質に着目。コンピューターモデルを用いてレチノイン酸受容体αの作用を阻害するために最適な分子構造を特定し、この分子構造を有する化学物質を実際に作り上げました。
「YCT529」と命名されたこの化学物質をオスのマウスに4週間にわたって経口投与したところ精子数が大幅に減少し、実際に交尾させる実験で99%という避妊率を達成。また、YCT529は副作用を避けるためにレチノイン酸受容体βやレチノイン酸受容体γなどの関連物質には作用せず、レチノイン酸受容体αのみに作用するという設計となっており、実際に研究チームが体重・食欲・全体的な活動性を経過観察したところ、「見た目から判断できる悪影響」はなかったそうです。
YCT529の経口摂取を取りやめたマウスは4~6週間後には生殖能力が復活したとのことで、服用を続けている期間だけ避妊作用があるとも判断されています。ノーマン氏らの研究チームは、アメリカ国立衛生研究所と男性用避妊具の研究コミュニティを支援する非営利団体のMale Contraceptive Initiativeから資金提供を受けたそうで、今後は同じく非ホルモン系男性用ピルの開発を続けてきたYourChoice Therapeuticsという民間企業と協力して、2022年内のヒト臨床試験を目指します。
ノーマン氏の研究を指導するグンダ・ゲオルク教授は「このプロジェクトは順調に進むものだと楽観視しています」と述べて、5年以内に市販されるという可能性について言及。今後行われるヒト臨床試験については「必ず効くという保証はありませんが、もし人間で効果がみられなかった場合にはものすごく驚くでしょうね」と自信を見せています。
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