プーチン氏の完全なる読み間違い – 田原総一朗

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田原総一朗です。ロシア・ウクライナ問題について、前回僕はこう書いた。「もし武力行使となれば、多くの人が犠牲になるだろう。人間はそこまで愚かではない、僕はそう信じたい」

僕だけではない、世界の多くの人々の願い空しく、ロシアの武力行使は、現実のものとなってしまった。

ウクライナは憲法に、「NATO加盟を目標にする」と明記している。もしほんとうにウクライナが、NATO(北大西洋条約機構)の一員となれば、ウクライナに西側のミサイルが配備される可能性もある。ロシアにとってそれは大きな脅威だ。

とはいえプーチン大統領が、世界を敵に回しながらも武力行使に踏み切った背景には、ウクライナの国内事情があった。ゼレンスキー大統領の支持率が、昨年12月には30%を切るほど、大不人気だったことである。

プーチン大統領は、ロシアがウクライナを攻撃すれば、ゼレンスキー政権はすぐに崩壊し、親ロシア政権が樹立されると、読んでいたのである。

ところが武力行使が開始されると、ゼレンスキー大統領の支持率は、なんと91%という驚異的な数字となった。大国ロシアに立ち向かう大統領に、逆に支持が集まったのである。

しかし、今撤退したら、ロシア国内からの反発が起き、プーチン大統領が失脚することは間違いない。
引くに引けない状況なのだ。完全な「読み間違い」に、プーチン大統領も困惑しているのではないか。

一方、NATO側の代表、アメリカのバイデン大統領も、困惑しているに違いない。ロシアへの経済制裁をしても、たいして効力がないことは、バイデン大統領にもわかっている。

武力行使をしたロシアに、本気で立ち向かうなら、アメリカを中心に、武力で立ち上がらなければならないはずだ。しかし、もしバイデン大統領が、「武力行使」を表明すれば、アメリカの世論が反発するだろう。

その気配を見せるだけでも、失脚の可能性がある。そして、トランプ前大統領は、バイデン大統領の失脚を
虎視眈々と狙っている。

プーチンも、バイデンも困惑している。そして保身にしばられ、身動きできない。非常に残念なことだが、
この状況は長引かざるを得ないだろう。

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