人にすすめるようなものでも、わざわざ見せるようなものでもない。だけど個人的に大好きでたまに食べたくなってしまう、ちょっとはしたなかったり見た目がひどかったりする、料理や食べかた。誰しもの心のなかにひとつやふたつ、そんなオリジナルレシピがあるのではないでしょうか?
最近人気のTV番組をもじって命名するならば「ダメウマい飯」。あぁ、無性に知りたい! 味わってみたい! さらにはせっかくだから、できるかぎりがんばってきれいに写真に残してみたい! そう、おべべを着せてあげたい!
はい、やっていきましょうね。
パリッコのダメウマい飯「豆腐丼」
昨年末から「週刊アサヒ芸能」という雑誌で、「全国お取り寄せ市場」という新連載が始まりました。
1品につき税込み1100円以内(送料別)で買える日本全国のおすすめお取り寄せ商品を、毎週ひとつ紹介するという内容(あ、これもおすすめあったらぜひ情報お寄せください!)。その試食および記事執筆をやらせてもらってるんですが、この連載ではそれに加え、「記事用の商品撮影」も僕が担当することに。
僕はプロのカメラマンではないけれど、もう10数年も酒や酒場専門のライターとして活動し、数えきれないほどのおつまみを撮影してきました。そんな活動を知ってくれていた編集さんが、「まぁこいつになら、最低限任せられるだろう」と判断してくれたというわけで、ありがたいかぎりでございます。
で、この、「料理をなるべく美味しそうに撮影する」という行為自体が、僕にとってすごく楽しい。それから、冒頭で紹介したような、他人の「ダメウマい飯」にもかねてから興味があった。
そのふたつの要素が合致し、そうだ、いろんな人のおすすめレシピを聞いて、それを実際に作って食べ、さらにはなるべくきれいに写真に残してみよう! とびっきりのおべべを着せてあげよう! というのが今回の企画というわけで。
それではまず、僕のダメウマい飯「豆腐丼」から。
いたってタイトルどおりなんですが、まずはごはんに絹ごし豆腐、または懐に余裕があれば、昨今いろいろと種類の出ている、ちょっといいまったり系のお豆腐をのせます。
で、それをてきとうに箸で崩し、好きなだけごまをふりかけ、仕上げにめんつゆもしくはだし醤油を回しかける。
はい、これで完成です。
あらためて見ると、なかなかにひどい見た目ですね……。だけどこれが妙にうまいんですよ。豆腐の豆々しさとシンプルな味つけに、ごまのアクセントで、ごはんがもりもりすすむ。
さて、それではなんやかやとセッティングし、こいつをなるべくかっこよく写真に残してやりましょう。
せ〜の……
おおっ! どう? けっこういい線いったんじゃないでしょうか? もともと豆腐屋として創業した京都の老舗料亭の、シメの裏メニューでございますと言い張れば、何割かの人は信じてくれないかな? 無理ある?
よし、せっかくだからそれらしい文句ものせてやれ。
や〜、なんだか「我が子の晴れ舞台」って感じで嬉しくなっちゃうな〜。楽しいな〜。
ちなみに、
ふだんやらないことなので、これはルール違反ということで。
ではどんどんいきましょう!
妻のダメウマい飯「辛ラーメン 〜水つけスタイル〜」
続いてはいちばん身近な妻に、なにかそういうメニューはないか? と聞いてみたところ、予想を超えた回答が。
美味しいですよね。
10代のころにこのラーメンの存在を知り、初めて食べて美味しさに驚いたという妻。だけど食べ慣れていないもので、ちょっと辛すぎるなと感じた。そこでなんと、かたわらに水の入った器を用意して、そこに「つけめん」スタイルで、辛ラーメンをつけながら食べていたんだとか。
長いこと付き合ってきたけど、そんな食べかたをしてたと聞いたことがなかった(最近でもたまに食べるけど、もう慣れて普通に食べてた)ので、このカミングアウトはけっこう衝撃的でした……。
う、うまいのかなぁ。でも、とりあえず作って、撮影!
写真を見る限りラーメンと飲み水のセットにしか見えませんが、
うわー、せっかく作った辛ラーメンが、水にくぐらせたことにより真っ白に戻ってしまった! 熱々がぬるっぬるになってしまった!
ただ、おそるおそる食べてみると……これがなんと、ありなんですよ。
妻いわく「辛ラーメンは規定の水分量より濃いめに作るのがポイント」とのこと。そこで水をパッケージに記載のある550mlよりかなり少なめの400mlほどで作ってみたのが良かったのか、水にくぐらせてもしっかりと味が残っていて、違和感がない。
味が濃くて辛いラーメンの良さを洗い流しながら食べるのはどうなんだという気もしますが、とはいえ、辛ラーメンでないと薄くなりすぎて成り立たない気もする。辛いものや熱いものが苦手だけど一度辛ラーメンを食べてみたいって方は、やってみてもいいかもしれません。
泡☆盛子さんのダメウマい飯「ぽってりマヨポテチ」
酒好きライター友達、泡☆盛子さんのダメウマい飯は、
波型厚切りポテチに、マヨネーズをぽってりとつけるという、なかなかにハイカロリーそうなレシピ。いわく「自分をむちゃくちゃにしたいときにやるやつ」で、「ポテチの味は塩味限定、飲みものは絶対コーラ!」だそう。
日本屈指の酒飲みである泡さんが、まさかのコーラ指定!? これは気になるな〜。
なんだか小粋なダイナーの軽めのおつまみメニューにありそうな見た目になりましたが、油×油ですからね。味のほうはちょっとしつこすぎたり……あれ? う、うめ〜ぞ!
以前、「しょうゆせんべいにマヨネーズをぬるとうまい」という記事を書かせてもらったことがありましたが、それに通ずるというか、単一的な味わいのポテチに、ジューシーさと爽やかさがプラスされるんですよね。そして確かに、コーラが合う!
これはまた、自分をむちゃくちゃにしたいときにやってしまいそうだ……。
あ、ちなみに背景の敷きもの、
なことは、ここだけの秘密でお願いします。
げらさんのダメウマい飯「月見スパゲティ」
担当編集の古賀さんが「デイリーポータルZをはげます会」会員のみなさまにもアンケートをとってくれたところ、ありがたいことにたくさんの情報が集まりました。
そのなかから特に気になった、ペンネーム「げら」さんの「月見スパゲティ」をご紹介。
具体的には、
「ゆでたスパゲティに塩コショウして皿に盛り、真ん中を少しへこませて生卵を落とす。
あればパセリ、粗びきコショウを振る。
時間や気分に余裕があればゆでた後さっとフライパンで炒めてから皿に盛る。この時バターを使って炒めるとさらにうまい。
塩コショウに飽きたらめんつゆをぶっかけても。
冷ご飯とかはないけどすぐ何か食べたいときによく食べていました。
麺さえゆであがってしまえばすぐ食べれてそこそこうまく助かっていました」
とのことで、今回はいちばんシンプルなレシピで作っていきましょう。
こ、これでいいんですよね。予想はしてたけどなかなかにパンチあるビジュアルだ……。こいつにはさすがに、どんなおべべを着せても……
あれ? ありな感じに見える! いい卵、もしくはいいパスタを作っている会社の“あえてシンプルに食べてみてください”的な広告のように感じなくもない! またこの、「月見スパゲティ」というネーミングがいいじゃないですか。
実際に食べてみると、卵の生感が気になることもなく、最小限の素材が組み合わさった味! という感じではあるけど美味しいです。途中でめんつゆをかけてみたら、完全に「玉子かけごはん」味に変化したのもおもしろかった。
げらさん、素敵なダメウマレシピをありがとうございました!
スズキナオさんのダメウマい飯「鍋の残り汁がけカップ麺」
最後は、100を超えるダメウマレシピを持っていそうなイメージすらある、ライター仲間のスズキナオさん。聞いてみたところ、さすがの返答が返ってきました。
「前の晩の鍋の残りのグズグズのやつがもったいなくて、それを加熱してカップ麺に乗っけたりすることがあって、もう全然美味しそうじゃないの」
「もう全然美味しそうじゃない」って言っちゃってる。けれどもよくやっているということは、きっとうまいんだろう。
挑戦してみましょう!
まずは、
これを、前日に小鍋っぽいつまみを作り、あえて少し残しておいて再現しました。
僕もこの鍋の残り汁はお宝だとさえ思っていますが、たいてい、おじやにしてしまう。カップ麺にのせる発想はナオさんならではだなぁ。
カップ麺は、いわく「昔からあるような、口の広いタイプが食べやすいです」とのことで、スーパーで探してきました。
ナオさんは頻繁に、もやし愛、そして味噌ラーメン愛を語っているので、ちょうどいいかなと。
で、僕はそもそもカップ麺自体をあまり食べないほうなんですが、パッケージを開けてみてびっくり。というのも、メイン食材であるもやしが、フリーズドライではなくて、
量もたっぷりで、こりゃ〜うまいよ絶対。カップ麺業界もどんどん進化してるんだな〜。
ここで試しにひとすすりしてみると、おお〜、濃厚なみそのコクとシャキシャキもやし、食べごたえのある麺、超うまい!
で、こう!
さすがナオさんが「全然美味しそうじゃない」と言うだけあり、今日撮影したレシピのなかでもっとも“がんばってるけどがんばりきれていない”感はいなめません。カップがそのままというのも大きいのでしょうが、これを小粋な器なんかに移して撮影したら、むしろごく普通の汁ものにしか見えなくなっちゃいますもんね。
で、味のほうなんですが、これがおもしろい! ぐっとインスタント感がなりを潜め、一気に家庭料理に寄る。栄養たっぷりな感じで、とても優しい味になる。ただ、そもそも完成度の高かった、ちょっとジャンクな味噌ラーメンのスープ感は、完全にどこかへ消えてしまいました。鍋の残りと融合してみそ汁になっちゃったのかな……。
つまり、料理としてすごく美味しいけど、カップ麺ならではのエッジの立った味は失われてしまうというか。そんなことをナオさんに伝えてみたところ、
「そうそう。すべて台無しにしてしまうような優しさですよね!」
とのことで、世の中にはそういう優しさもあるんだな〜と、大変勉強になりました。
以上、どのメニューもちょっぴりの背徳感が魅力的だった、人様から教わる「ダメウマい飯」。
なにより個人的に、「どう美味しそうに見せるか?」を考えて撮影するのが、なんだか新しい生きがいになりそうなくらい楽しかったです。
というわけで、もしよかったらSNSなどで、
のハッシュタグとともに、あなたのオリジナルレシピを教えてください! たくさん集まったら、また第2段をやらせてください!