昔、おじいちゃんちや親戚のうちなんかに行くと、茶箪笥の上やガラスケースの中に「たばこの空き箱で作った傘」が飾ってなかっただろうか。蛇の目傘のように細かく蛇腹を表現してあって、閉じたのと開いたのと対になって、あの光景を思い出すたび、何ともいえないノスタルジーを感じてしまう。
そう、ノスタルジー。最近、あの傘をとんと見かけなくなったなーと思い、ネットなどで探してみるのだが、現物はおろか作り方について書いてある本も探し出せない。
しかし、ひょんなことから本を手にすることができたのだ!あの(私にとって)まぼろしの「たばこ傘」、ばあちゃんになった気分で作ってみた。
※2008年3月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
昔の手芸本は時にハイブロー
知り合いの刺しゅう作家さんから、「たばこの空き箱傘、ありましたよ!」と、ある本が送られてきた。下写真の「たばこの空箱工作」(エキグチ・クニオ著・日本文芸社 昭和58年刊)だ。
出版社の住所の郵便番号が3桁だったり電話番号が東京03のあと7桁だったり、随所にノスタルジックな地雷が埋まっている。もちろん中身の工作も、ノスタルジー絶賛炸裂中である。
そしてページを繰ると、ふつうにそれはあった!
ああ、まぶたのたばこ傘。やっとお会いできました。
これがどうやって作られているか、子供の頃も今でさえも、まったくわからない。内部構造がどうなっているのか。たばこの箱はどう取り入れられているのか。難しいのか簡単なのか。まったくわからない。
これから、それら解明されなかった謎に、じわじわと迫ってゆくことにしよう。
あなどるなかれ、たばこ工作
これから本のとおりに作っていくわけであるが、ここでもざっくりと作り方を説明していこう。まず4cm四方の正方形を60枚切り取る。たばこの空き箱なら30個から表裏1枚ずつ取れることになる、と書いてある。私は古雑誌の表紙を使ってみました。
1枚1枚、同じことを繰り返しているうちはまだいい。が、平行な針金2本に通したり、棒に結わえ付けて形にしたりするにはコツがいるようだ。皆これが出来てたんだろうか、と思うような手間のかかる工程がちょこちょこ出現する。
あーもう形にするのが難しい。どこか整えるとどこかが出っ張る。気が付くとさっきから同じところを調整している。
枯れた渋めの気分でのんびり傘を・・・と思っていたのだが、思いのほか根を詰めて夜なべしそうな勢いだ。生活かかってるかのようなテンション。
なんとか夜半ごろ、形にできたでござる。おお、祖母の家で見たあの傘でござる。
うん、できた。傘ができた。そこそこの満足感が達成できた。ふつうに傘ができたよ。
なんだ、今回は本のとおりに作って終わりか、と思われるでしょうが、お兄さん、ちょいとお待ちよ。
この本、当然ながらとにかく たばこの空き箱をフィーチャーしている。何もそこまで、と思うような工作もある。が、簡単なようでいて、なかなかコツのいる「たばこ傘」。まさかあんなに複雑な工程とは思わなんだ。
そこのところに、一時期のヒットの原因があるのかもしれない。いや、今もどこかでヒットしているのかもしれないが。