作業工程は全7ステップ。
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は、ミラー調整作業の3つめのステージまでを終えました。3カ月間の調整期間の2カ月目に入るところでの快挙です。
JWSTがL2点と呼ばれる観測地点に到着してから、NASAのチームの面々は観測を始める準備に精力的に取り組んできました。そしてその過程では、「HD 84406」という恒星が18枚の主鏡を調整する指標として使われたのです。
星を1つの光点として捉えられるようになった
JWSTは1月下旬にミラーを完全展開し、2月4日には光子を初検出、そして2月11日にはセルフィーのようなものまで撮っています。その最終的な目標は、各鏡をおよそ50ナノメートルの精度まで合わせること。Alise Fisher氏は先月、NASAブログに「もしウェッブの主鏡が米国ほどの大きさなら、各セグメントの大きさはテキサス州大になり、チームはそんなテキサス州サイズのセグメントの高さを1.5インチほどの精度でそろえる必要があります」と書いていました。鏡の方向の微調整は、望遠鏡から100万マイル離れた地上にいる人間が行なっています。
2月18日には鏡の位置合わせがさらに進み、18枚の鏡がそれぞれ捉えた光の点は六角形に並ぶようになりました。そんな18個の光を文字通り重ね合わせて1つの点にしてピントを合わせるという次のステップは、予定より3日早い2月25日には完了。これによりJWSTは恒星「HD 84406」を本来あるべき姿、1つの光点として捉えるようになったのです。
NASAのゴダード宇宙飛行センターでウェッブ光学望遠鏡要素マネジャーを務めるLee Feinberg氏は「まだやることはありますが、目にしている成果に一層喜んでいます」とプレスリリースで述べていました。「長年にわたる計画と試行錯誤が実を結んでいて、チームは今後数週間から数カ月で見られるものにこれ以上ないほど興奮しています」とのこと。
さらに鮮明な画像を得られるようになる
主鏡は現時点ではまだ1つの大きな望遠鏡としてではなく、別々の機器として機能しています。位置合わせの微調整は不可欠で、これからはミラー調整の4段階目が始まります。このプロセスでは20の異なる鏡セグメントの組み合わせが捉えた光スペクトルから、セグメント間の高低差を見つけ出すとのこと。それによって、さらに鮮明な画像になるそうです。
この作業は今後数週間かけて行われ、その後には光学機器を使った調整に、JWSTの残りの機器の調整(今は主鏡だけを調整中)、そしてようやく最終的な修正という流れ。調整作業の各段階についてはコチラに詳しく書かれています。
JWSTは初期宇宙、銀河系、そして系外惑星、さらには太陽系にある天体についても知見を広げてくれるでしょう。ベテランのハッブル宇宙望遠鏡とは観測する波長が異なっていて、ハッブルが紫外線と可視光線を観測するのに対し、JWSTは赤外線と近赤外線を観測します。
ハッブルは1990年に打ち上げられた宇宙望遠鏡です。JWSTは一緒に宇宙を観測することになりますが、30年前には不可能だったテクノロジーでこれまでのどの機器よりもさらに時間をさかのぼります。
JWSTの調整作業が終わって科学的に運用可能になるのは2022年の夏頃の予定。ようやく打ち上げられてから今に至るまで何もトラブってないという事実が、科学者やエンジニアたちが注ぎ込んだ多大な労力と時間を物語っています。