産地偽装行われるシンプルな理由 – 自由人

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■「中国産アサリ」詐欺事件

 テレビの報道番組で「熊本産」のアサリの大部分が実は「中国産」だったと伝えられたことで大きな騒ぎになり、その影響で、現在でも多くの消費者がアサリを買い控えるという事態が続いているらしい。

 産地偽装というのは、これまでにも散々行われてきたことであり、中国産アサリと同様に中国産ウナギも、一定期間、日本の湖に入れると日本産のウナギに化けてしまうことはよく知られている。

 牛肉にしても、海外産の牛肉を国産だと偽って販売していたというニュースは事欠かない。

 こういった偽装が行われる背景には何があるのかと言うと、一言で言えば、見た目も味もほとんど変わらないという単純な理由がある。見た目ではプロでも見分けるのが至難の業なので、味で判断するしかないのだが、余程、舌の肥えた人でない限り、国産と海外産の味の違いは分からない。国産を見分ける以前に、商品の個体差で味も違ってくるので、見分けるのはまず不可能だと言える。

■健康被害の無い詐欺事件で奪われるのは「お金」

 ただ、今回のアサリ問題については、健康的被害は出ていない。ウナギにしろ、牛肉にしろ、これまで産地偽装で健康被害が出たというケースはあまり聞いたことがない。

 中国産のアサリに身体に悪い毒のような成分が入っているということなら長期的に食すると健康被害が発生することになるかもしれないが、そういった話もあまり聞かない。

 「熊本産」だと信じて食べていた人の中には、食べている最中「うまい、うまい、さすがに熊本産だ」と言って食べていた人もいただろうから、せいぜい、安価な商品を高値で買わされたという意味での金銭的な被害しか発生していない。誤解を恐れずに言えば、詐欺は詐欺でも、そこまで悪質な詐欺ではないのかもしれない。

 昔あった、中国の毒入りギョウザ事件のように、アサリに毒が入っていて、それを食べた人が食中毒を起こしたとか、死亡したということなら大問題だが、アサリについては、幸い、そこまでの被害は出ていない。

■健康被害の有る詐欺事件で奪われるのは「命」

 中国と言えば、昨年のことだったか、生理食塩水をコロナワクチンと偽って注射していたという詐欺事件があった。誤解を恐れずに言えば、これとて、お金を騙し取られるという金銭的な被害があるだけで、健康上は特に問題は発生していない。元々、生理食塩水は人体に無害なので、副作用の心配もなく、なんら肉体に変化は生じないので、詐欺は詐欺でも、それほど悪質な詐欺とも思えない。

 毒を食べさせられるとか、毒を注射されることに比べれば、お金を騙し取られる方がはるかにましだと言える。このことを否定するような人は誰もいないと思う。産地偽装は詐欺で済ませられるが、毒入り偽装となると犯罪になってしまう。

 騙されて中国産のアサリを食わされても、騙されて生理食塩水を打たれても、肉体的に健康被害を被るわけではないが、騙されて毒入りアサリを食わされたり、騙されて毒入り注射を打たれたりした場合は、肉体的な被害を被ることになる。どちらが悪質であるかは考えるまでもない。