2022年楽観できる日本の市場展望 – 武者陵司

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あけましておめでとうございます。

清々しい新春をお迎えになられたこととお喜び申し上げます。

日頃武者リサーチのレポートをお読みいただき、ありがとうございます。

ここに新春号をお届けいたします。ご一読たまわれれば幸いです。

2022年 元旦

2021年もハイテク敗戦、グリーン敗戦、金融敗戦、コロナ敗戦と自虐思考のオンパレードであった。ここまでくれば悲観も陰の極ではないか。敗戦はすべて過去に起こったこと、あるいは過去に蒔かれたマイナスの種が影響を残したことにすぎず、将来も敗け続けるということでは全くない。

過去を振り返ると、日本の最悪期はだいぶ前であったことがわかる。日本株(日経平均)のバブル後最安値は2009年3月10日の7054円、直近の高値は2021年9月14日の30795円、この12年間で日本の株価は4.37倍(年率13.1%)になった。このパフォーマンスは、米国を除けば世界の優等生。日本が本当に世界に劣後していたのはアベノミクスが始まる8年前までで、以降は着実なキャッチアップの過程に入っている。それは日本企業のビジネスモデルの大いなる変革と企業収益の飛躍的向上に支えられている。企業における価値創造こそが将来を形作る最も重要な要素であるから、このペースの株価成長が維持される可能性は大きい。となれば10年後の2031年には日経平均は10万円になる。なぜ日本において、企業による価値創造が期待できるのか、以下で考えてみる。

悲観論者と楽観論者で財産形成に極端な格差ができている。格差を非難する株式投資批判者は、政治や体制を糾弾するのではなく自らの不明さを反省するべきである。

(1)2022年の市場展望を楽観するべき理由

2022年、経済と市場は引き続き明るい年になるだろう。第一にグローバル投資環境は良好である。第二に日本株の再評価が始まり、バリュエーションが向上するかもしれない。

市場を巡る不確実性が大方消えて来た。米中対立は依然として熾烈だが、経済面では持久戦の様相が強まり不透明感は消えつつある。またコロナパンデミックも、オミクロンなど変異種の相次ぐ誕生から制圧には至らないが、経済への悪影響は減衰している。イノベーションの加速とフレンドリーな金融政策の下で、積極的投資姿勢を堅持するべきである。米国中間選挙、フランス、韓国の大統領選挙等の政治的イベントも大きな攪乱要因にはなりにくい。中国での政変(?)、韓国大統領選保守党候補勝利による日韓宥和、等のサプライズがあればむしろポジティブなものになる可能性が強い。日経平均28500~35000円、NYダウ工業株35000~40000ドル、米長期金利1.25~1.90%、ドル円113~123円、と見ている。個人資金のETFを通した市場流入が増加しており、インデックス主導、先物主導の市場構造は一段と強まっている。そのためボラテリティの高まりには注意が必要であろう。年央のどこかで一定の株価調整を想定するべきかもしれない。

米国金融引き締めの悪影響は心配するに及ばず

米国の金融引き締めに過度の心配は不要であろう。市場ではいつになく警戒感が強いので、意外に底堅い展開の年になるかもしれない。①インフレが一時的であること、②長期的金利低下趨勢が続くことが要因。自然利子率低下はさらなる株高、バリュエーションの上昇余地があることを示唆する。TINA(There is no alternative )という状況は2022年も続く。フレンドリー金融政策不変・マイルドインフレ・マイルド金利上昇の下で、リスクテイクが報われる環境が続くと考えられる。

日本株式、2021年は年初に30,000円を付けた後もしっかり

2021年の日本株式は意外にしっかりしていた。これまでの日本株の2大買い主体であった日銀と外国人の支援が全く止まったにもかかわらず前年比でプラスが維持された。①日銀がETF購入をほぼ停止したこと、②MSCI日本株採用銘柄減の影響もあり、外国人が日本株を売り越したこと、③指数に影響力が大きいソフトバンクグループ(7%の影響力)の大幅減益(アリババの株価急落により2020年度の5兆円から3兆円以下に)、等の悪材料にもかかわらず、バブル後最高値30700円からの調整は小幅であった。底流に相場体温の上昇があったことをうかがわせる。2022年はこれらの悪材料が一巡する。

新プレイヤーと新投資主体(個人の積立投資)が日本株の魅力度を高める

2022年に日本株式が相対的魅力度を高めるとしたら、その理由として以下4点ほどが指摘できる。

i. 景気拡大上方修正幅大→コロナでは健康被害最小の日本が、先進国最大の経済被害(経済成長の落ち込み)を被った。コロナ終息による景気のリバウンドは日本が一番大きくなるだろう。IMFなどは日本の経済見通しを大幅に上方修正してくるのではないか。
ii. 地政学の順風・・円安容認、日本へのハイテククラスター回帰、運命の神が日本に微笑む
iii. 個人投資家資金の流入などにより株式需給改善、バリュートラップ脱却(=日本株の割安感是正)が進展していくだろう。
iv. 日本の潜在的優良ビジネスモデル再評価へ。

ここで特に説明が必要なのは、iii.とiv.である。

ここで特に説明が必要なのは、iii.とiv.である。

潜在的株式投資待機資金は世界最大、証券投資口座着実に増加

日本の家計は全く金利が付かない現預金を1072兆円も保有している。この株式投資待機資金の大きさは世界最大級である。この資金の一部でも配当だけで2%のリターンがある株式市場に回れば、株価は大きく上昇する。その萌芽は見えつつある。真剣に自分の将来を考えなければならない若者を中心にして、つみたてNISAやiDeCoなどで資産形成を行う動きが、このコロナ禍において目立つようになってきた。図表8に見るように証券口座数の増加ペースが速まっている。早晩個人の株式積立資金が最大の株式買い主体に育っていくだろう。

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