斜陽化するテレビに未来はあるか – メディアゴン

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高橋秀樹[放送作家/発達障害研究者]

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1958年(昭和33年)に観客動員数でピークを迎えた映画産業は、5年前に始まったテレビ放送に押されてその後、一気に斜陽化した。「タダで見られるテレビがこんなに面白いものをやっているのにカネ払って映画を見に行くやつはいない」と、テレビマンは異口同音に話したものだ。当時のテレビの主力はドラマであり、バラエティの興隆は1970年代、コント55号(萩本欽一・坂上二郎)の人気爆発を待たねばならない。

衰退が先に始まっていたハリウッドでは、製作本数を増やすことでテレビに対抗した。一方、日本の映画界は逆行した。金のかかる良質な映画の製作本数を減らした。それがなおさら斜陽化に拍車をかけることを理解できる幹部のいない映画会社は倒産した。

さて、今の日本映画界は、どうだろう。韓国映画の後塵を拝しているという冷静な判断は脇においておくと、いまは、それなりの活況であると判断できる。どうしてどん底の不況から好況に転じることができたのか。

その理由の一つは明らかに心ある映画人と、見識を持たないテレビ人が作り出したものである。

心ある映画人は、思った。

「テレビなんかにはできないことをやろう。それが映画だ」

見識を持たないテレビ人は吠えた。

「見てもらってナンボのもんだろ」

以来、映画とテレビの質の差は一気に縮まった。人々の好悪も逆転した。

[参考]テレビ地上波放送の近未来を予期させる番組をTBSが放送

さて、いま、斜陽化の坂道を転げ落ちているテレビはどうしようとしているのだろう?

*「テレビにしかできないことをやろう」と、考えている人はいるのだろうか。

*ひとり暮らしの大学生の多くが、テレビ受像機を持っていないことを知っているだろうか。

*将来メディアに就職したい大学生が学ぶ学科で、テレビ局に就職したい学生が1%もいないことを知っているだろうか。

*金を払って見るネットフリックスより、面白いドラマを作って。タダで見せているだろうか。

*韓国のテレビドラマのリメイクをこそこそとやっていないだろうか(リメイクは恥ではない。堂々と宣言すれば良い)

*オリジナルが書ける脚本家を育てているだろうか。

*バラエティに頼りすぎていると考える編成マンはいるだろうか。

*テレビにしかできないことは、実は速報性が必要なニュースである。そのスキルを持っているのは今のところはテレビ局だけだと気づいているだろうか。

*共同通信がカメラマン、中継などの技術力を持ち始めたら始めたら、敵わないと考えているテレビマンはいるだろうか。

*日本版CNNに変身する局はないだろうか。

*芸能事務所に牛耳られてはいないだろうか。

*電通・博報堂に事実上支配されていないだろうか。

*視聴者としての高齢者を排除しようとしていないだろうか。

筆者が糊口をしのぐ糧を提供してくれたのは、ずっとテレビのバラエティ番組だった。だからバラエティには進化してほしい。生き残って欲しい。こんなコントはどうか。

『日本一予算の少ないテレビ局の一日の番組はこうだ』

それくらい開き直れれば、テレビ放送の未来は開ける。

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