昭和の面影のこす街・蒲田を歩く – フリート横田・渡辺豪

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東京都大田区最大の乗降者数を誇るJR蒲田駅。大田区は都内で最も工場の多い区で、その70%が9人以下の、いわゆる「町工場」と言われる工場が占める、都内有数の工場地帯でもある。

戦時中は戦車や機関銃といった軍需品を製造し、戦後は鍋、弁当箱など日用品の製造を担った金属加工の工場が多く立地した街だ。現在も製造業を支える街だが、後継者不足の課題も抱えている。一方、近年では外国人人口の増加が著しく、23区中7番目に外国人人口の多い大田区は「国際都市おおた」を掲げているのも特徴だ。

川崎と品川という印象のはっきりした街に挟まれ、ともするとイメージしづらい当エリアだが、少子高齢化、多文化共生など現代日本が抱える課題の先端を走る街でもある。

大田区が「おもてなし」「にぎわい」などを掲げて再整備を継続検討しているJR蒲田駅

蒲田の有名スポット・屋上遊園地をおじさん二人で満喫

渡辺:自分は地方育ちなので、TVドラマや映画で観る屋上遊園地が憧れでした。あの手のドラマに登場する男の子は、たいてい半ズボン穿いてるんですけど、何よりもあれが「都会」って感じでしたね。

横田:昭和43年に東急プラザ蒲田が開業して以来、親しまれている観覧車ですね。この屋上遊園地も平成26年のリニューアルのときに閉鎖の危機もあったみたいですが、地元の人の要望で、存続したそうです。

渡辺:1周300円! 都内唯一の屋上観覧車ですから、乗ってみましょう。

平成26年のリニューアルでカラーリングも一新。「幸せの観覧車」との愛称も

1周わずか数分の小旅行だが、ノスタルジックなムードに浸ることができる。遠くに富士山も眺められる

少年のまま大きくなってしまった40男、どうはしゃいでいいか分からないようだ

渡辺:今の蒲田駅をぱっと見る限り、自分の目にはあまりヤミ市跡らしさは感じないんですけど、あったんですよね? ヤミ市が。

横田:現在の蒲田駅前は戦後すぐの町街割りとは違うんですが、元々は西口に大きなマーケットがあったんですよ。力のあるテキヤ組織が仕切っていました。親分は元は復員兵ですが、最後は東京都議会議長までやりました。テキヤが後年の暴力団とは違うということを、この蒲田人の来歴が教えていますね。

渡辺:その後、区画整理されているわけですね。いつぐらいですか?

横田:ずーっと遠くまでバラック街が続いていたようですが、昭和30年代末に整えられました。そのころできた今の商店街も、すでに半世紀以上の歴史があります。

レトロなデザインの商店街アーケードが駅から数本延びる伸びる。こうしたダイナミックなアーケード街は好景気だったころ頃の懐かしさも覚える

渡辺:全国的にシャッター街が増えているのに、蒲田は元気な駅前商店街で、なんだかうれしいですね。

横田:今の商店街は、入口のあたりは元気があるように見えても、駅から少し離れると寂しくなっちゃうことも多いですものね。蒲田は東急も京急もありますが、東急沿線の雰囲気よりは「京急感」がありますよね。そこが魅力です。あと、私にとって、ではありますが「駅前ロータリーに喫煙所がある街はいい街」です。おじさんたちを迎え入れる用意ができている。

多文化共生の街を反映してか、フィリピンパブも多い

朝の路地に酒場の灯がともる・・・・・・・ さっそく蒲田で乾杯!

渡辺:おおー・・・・・・ こうして路地歩きしていると、陽も明るいうちから灯る赤提灯に抵抗しがたいものがありますね。

陽も高いうちから一杯機嫌のおやじさんたちが闊歩する

横田:無抵抗主義でいきましょう。朝飲みもできる立ち食い蕎麦屋、「信濃路」さんなんかどうでしょう。

渡辺:鶯谷店でも何度か一緒に飲みましたね。

横田:大田区だと、平和島と大森にもあったんですけど、どっちも最近なくなっちゃって・・・・・・。この値段とメニュー数で回していくのは、とても努力されていると思います。そしてあのざっくばらんさ。ああいう空気はなかなか作れません。

渡辺:鶯谷店の調理場では外国人の方が多く働いていた記憶があります。こんにちは〜。

横田:青汁サワーとトマトハイ、カツオ、それからこの「焼きそばカレーかけ」っての下さい!

渡辺:焼きそばにカレーを掛けるなんて、小4男子なら泣いて喜ぶメニューじゃないですか。 いや〜。昼から飲む酒はうまい!

愛すべきジャンク・メニュー「焼きそばカレーかけ」

腹に溜まるメニューの他に、新鮮な刺身で落ち着いて飲むこともできるのがうれしい

お店の前でパチリ

オンライン飲みで強くなった酒場への思い・・・

渡辺:今はオミクロン株で感染者が増えている状況ですけど、一時は都内の新規感染者も二桁前半が続きましたし、営業再開できた飲食店の方は感慨ひとしおだったでしょうね。

横田:ほんとですね。そういえば、自分の周りでは「オンライン飲み」って定着しませんでした。

渡辺:こちらも同様です。むしろリアル飲みへの渇望が増しただけでしたね。「気分だけでも・・・」っていう飲酒スタイルでしたけど。少なくとも替わりにならないことははっきり分かった気がしますね。

横田:家族とか、生活する最小単位の少数の人と飲む安心感みたいなものにも同時に気づかされました。それでもこうやって、焼きそばを食いながらチューハイを飲むのはかけがえがないと思いますね。

渡辺:確かに。withコロナ生活は家族⇔外という「関係性」を浮き彫りにした気がします。さあ酔っ払う前に、一息入れましょう。

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