中国が直面する深刻な新生児減少 – NEXT MEDIA “Japan In-depth”

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トップ写真:2022年冬季オリンピックの聖火リレーの終わりに子供たちと一緒に写真を撮る、俳優ジャッキーチェン(2022年2月3日、万里の長城にて) 出典:Photo by Andrea Verdelli/Getty Images

澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)

【まとめ】

・中国は新生児の減少という深刻な事態に直面している。

・国家統計局2021年人口統計によると、出産適齢期の女性の数が減少し続けており、出生率が低下し続けている。

・労働者数の減少で消費が低迷し、1人当たりの社会保障負担が増大するため、経済成長が阻害されるのではないだろうか。

現在、中国は新生児の減少という深刻な事態に直面している。その主な原因は、長く続いた「1人っ子政策」(1979年〜2015年)に求められるのではないだろうか(他に、中国の「都市化」も、その原因の1つかもしれない)。

2016年、ようやく「2人っ子政策」が開始されたが、あまり効果が見られなかった。そのため、昨2021年5月末、ついに「3人っ子政策」が導入された。それでも、今後、出生率の減少が続くと見られる。

『新唐人テレビ』は、「中国の出生率は年々低下しており、業界は10年以内に40%減少する」(2022年2月1日付)(a)という記事を公表した。以下は、その一部である。

中国の出生率は何年も前から低下している。中国のシンクタンク「21世紀教育研究所」は『中国教育ウォッチ2021』と題する報告書を発表した。それによると、中国の就学前教育は、供給と需要のバランスが逆転し始め、新たな歴史的転換点を迎えつつある。今後10年間で、園児数に対する幼稚園数は、15〜40%縮小するという。

同報告書によると、(「二人っ子政策」により新生児が増加した)2016年・2017年生まれの子供たちはすでに幼稚園に入園しており、2020年、幼稚園児数は4818万2600人で、ピークに達したという。

また、同報告書は、2023年から2025年にかけて幼稚園児数が4000万人にまで減少すると予測した。更に、2025年から2030年にかけては3000万人にまで減少し、就学前教育の規模が急激に縮小するだろうと指摘している。

さて、今年1月中旬、国家統計局は昨2021年の人口統計を発表(「王萍萍:総人口の増加は維持され、都市化レベルは着実に上昇」『中国経済網』2022年1月18日付)(b)した。内容は次の通りである。

昨年末の人口は14億1600万人で、前年(2020年)末より48万人増えた。しかし、昨年生まれた新生児は1062万人で、前年より約140万人減った(他方、昨年亡くなった人は1014万人で、前年より16万人増えている)。昨年、1000人当たりの出生率は前年より低く7.52人となっている(昨年の同死亡率は7.18人で微増)。

ところが、公安部発表の「『2021年全国氏名報告書』公布」(『人民網』2022年1月24日付)(c)によれば、2021年12月31日現在、公安当局に戸籍を登録した新生児は887万3000人で、男性新生児は468万1000人(全体の52.75%)、女性新生児419万2000人(同47.25%)だった(ちなみに、新生児が戸籍に最も多く登録された都市<地級以上の10市>は、重慶、成都、広州、北京、<貴州省>畢節、<山東省>臨沂、<河南省>周口、深圳、西安、<河南省>鄭州の順だった)。

既述の如く、国家統計局が発表した2021年生まれの新生児数は1062万人である。けれども、公安部発表の同年生まれの(公安当局に登録された)新生児は887万3000人となっている。後者は前者に比べ、174万7000人も少ない。

なぜ、このような矛盾した数字が表れるのか不思議である。公安局に登録されていない新生児は養子に行くのか、それとも国内外へ売られるのだろうか。

ところで、前掲の国家統計局が発表した2021年の人口統計(b)をもう一度、見てみよう。

昨年の人口自然増加率は1000人当たり0.34人で、前年よりも下降した。人口増加率の鈍化は、出生人口の減少が続いているためである。それには、2つの要因が影響しているだろう。

第一に、出産適齢期の女性の数が減少し続けている。昨年の15〜49歳の出産適齢期の女性は前年より約500万人減少し、そのうち、特に21〜35歳の女性は約300万人も減少した。

第二に、出生率が低下し続けている。出産に対する認識の変化、初婚・初産年齢の遅れ(10年で約2歳遅れ)などの影響で、昨年も出産適齢期の女性の出産率は引き続き下落した。

実際、新生児の減少は、中国社会に深刻な結果をもたらすだろう。以前から言われていたように、(全人民がある程度)「豊かになる前に老いる(=高齢化する)」という現象が表面化してきたのである。

2021年末の0〜15歳人口は2億6302万人で全人口の18.6%を占める。生産年齢人口の16〜59歳人口は8億8222万人(全人口の62.5%)である。60歳以上人口は2億6736万人(同18.9%)、このうち65歳以上人口は2億56万人(同14.2%)という具合である。

前年と比較すると、0~15歳は528万人減少したが、生産年齢人口の16~59歳は247万人増加した(なお、16〜59歳の増加は、主に<「大躍進」後の一時的に>1961年生まれが少なかったゆえに起きた事象だという)。また、60歳以上は329万人増え、65歳以上は992万人増加している。

昨年、60歳以上と65歳以上の割合は前年に比べて、それぞれ割合が0.2ポイントと0.7ポイントずつ増加し、高齢化が一段と進んでいる。

生産年齢人口(16〜59歳)が減少し、被扶養人口(0〜15歳と60歳以上)が増えれば、いわゆる「人口ボーナス(bonus)」から「人口オーナス(onus)」に転落する。すなわち、労働者数の減少で消費が低迷する一方、1人当たりの社会保障負担が増大する。そのため、経済成長が阻害されるのではないだろうか。

注)

(a) 〔中国瞭望に掲載された〕『新唐人』「中国出生率连年降 一产业十年内将消减四成」 https://news.creaders.net/china/2022/02/01/2447356.html

(b)『中国经济网』「王萍萍:人口总量保持增长 城镇化水平稳步提升」

王萍萍:人口总量保持增长 城镇化水平稳步提升 (stats.gov.cn)

(c)『人民网』「《二〇二一年全国姓名报告》发布」http://society.people.com.cn/n1/2022/0124/c1008-32338403.html

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