ウクライナ情勢 五輪後に動きも? – 舛添要一

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 緊迫化するウクライナ情勢に世界の注目が集まっているが、現状は2014年のクリミア併合のときと似ている。

 この年の2月中旬にウクライナの首都キエフで、反政府デモが組織され、親露派のヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領に率いられる政権側と激しい対立になった。騒動の中、身の危険を感じたヤヌコーヴィチはキエフを脱出し、議会は大統領の解任を決議した。そして、親欧米派のトゥルチノフが大統領代行となった。

 この政変劇に対して、背後にアメリカがいるとして、ウクライナの親露派勢力もロシアも抗議の声をあげたのである。ロシア系住民が多数を占めており、政変に不満を持つ人々が住民投票でウクライナらの独立、もともとの祖国であるロシアへの編入を決め、3月18日に実行したのである。

 この動きの背後にはロシアがおり、プーチンはクリミアを取り返すことを明言していた。ロシアは事前に多数の工作員を侵入させ、併合の下準備をしたのである。

 30年前の1991年12月にソ連邦が解体し、15の共和国が独立した。かつてワルシャワ機構軍を構成した国々が次々とNATOに加盟していったのである。チェコ、ハンガリー、ポーランド、バルト3国などである。ロシアと国境を接するベラルーシとウクライナのうち、前者は親露のルカシェンコ大統領が独裁を続けている。しかし、親欧米派のゼレンスキー大統領が政権を握るウクライナはNATOへの加盟を求めている。これはプーチンにとっては耐えがたいことであり、安全保障上許すわけにはいかないのである。

 そこで、これ以上NATO加盟国を増やさない保証をアメリカやNATOに求めている。しかし、アメリカ側はこれを拒否しており、度重なる協議でも主張は平行線のままである。

 プーチンは、ウクライナ東部のロシア系住民を支援しつつ、多数の工作員を放って、ゼレンスキー政権を転覆させ、親露派の政権を作ろうとしている。それに成功すれば、軍事侵攻という冒険をせずに済むからである。

 そして、クリミアのときと同様に、ロシア系が多い東部ウクライナで住民投票を実施し、独立国にしてロシアへの編入を図ることを考えている。

 2014年2月、都知事の私は、次期五輪開催都市の首長として、ソチ五輪の閉会式に臨んだ。そのときにはロシアは既にクリミア併合の準備を整えつつあったのであろうが、目と鼻の先にいながら全く、そのような動きには気づかなかった。

ソチのオリンピックが2月7日〜23日、パラリンピックが3月7日〜16日であり、その2日後の3月18日にロシアはクリミアを併合している。

 今年の北京は、オリンピックが2月4日〜22日、パラリンピックが3月4日〜13日である。前例に従うと、3月13日直後にロシア軍はウクライナに侵攻するということになる。ロシアはいつでも進軍できる万全の準備をしているが、北京五輪の成功を至上命題とする習近平政権への配慮もある。

 NATOは、ウクライナへの武器支援を加速化しているが、それが紛争の抑止につながるかどうかは不明である。いつ、何が起こるか分からなくなっている。

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