喫煙が体に有害であることは広く知られており、大手タバコメーカーのフィリップモリスがタバコの販売禁止を求めたり、ニュージーランドでタバコの購入禁止法案が提案されたりと、世界中でタバコの流通を禁止する動きが出始めています。そんな中、オーストラリア・ロイヤルメルボルン工科大学の研究チームが「親が喫煙者の場合、子どもの学力や行動に影響が出る」とする研究結果を発表しました。
The effect of parental smoking on children’s cognitive and non-cognitive skills – ScienceDirect
https://doi.org/10.1016/j.ehb.2021.100978
Children whose parents smoke have lower test scores and more behavioural issues than kids of non-smokers
https://theconversation.com/children-whose-parents-smoke-have-lower-test-scores-and-more-behavioural-issues-than-kids-of-non-smokers-172601
研究チームは、オーストラリア国民の学力テスト結果や親の情報をまとめたデータベースを基に、子どもの認知能力と親の喫煙状況の関連を分析しました。その結果、片方の親もしくは両親が喫煙者である子どもの平均認知能力は、非喫煙者の親を持つ子どもと比べて3%低いことが判明。加えて喫煙者の親を持つ子どもは非喫煙者の親を持つ子どもと比べて社会的行動スコアが9%低下することも明らかになりました。
研究チームによると、子どもの認知能力と社会的行動スコアの低下には父親の喫煙状況よりも母親の喫煙状況が大きく関わっていたとのこと。研究チームは「妊娠中の母親の喫煙が子どもの脳の発達や出生体重に影響する」という過去の研究結果を挙げて「母親の喫煙が子どもに強く影響することは予想通りです」と述べています。
さらに、研究チームは喫煙者の親を持つ子どもの就学率が低いことや、体調が悪化する頻度が高いことも発見しました。これらの結果は女子よりも男子で多く見られたとのことで、研究チームは「この結果は、『環境による圧力に対する女子の回復力は男子よりも強い』とする過去の研究と一致します」と述べています。
研究チームは、喫煙者の親を持つ子どもに上記の傾向が見られる理由について、以下の3つの理由を考察しています。
・母親が喫煙者の場合、出生前に喫煙の悪影響を受けている
・子どもの適切な成長に必要な食糧・医療・教育のための貯蓄がタバコの購入費として使われている
・子どもの認知能力の発達は親の認知能力に依存しているが、親の認知能力が喫煙によって低くなっている
また、研究チームは「今回の研究結果は幼児期における家庭環境の重要さを強調しています。加えて、幼児期の発達は長期的な健康や社会的・経済的成功の基礎となります。タバコの使用を減らすことを目的としたキャンペーンや政策では『喫煙週間が子どもたちにもたらす害』を強調するべきです」と主張しています。
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