「困った」をなくすトコトン親切設計。最大4804MbpsのエレコムWi-Fi 6ルーター「WRC-X5400GS-B」【イニシャルB】

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 エレコムの「WRC-X5400GS-B」は、160MHz幅4ストリームで最大4804Mbpsの通信に対応したWi-Fi 6対応ルーターだ。付加機能をあまり持たないシンプルなモデルだが、設置や設定、利用の「困った」をなくすための工夫が、あちこちに散りばめられた秀逸な製品だ。

エレコムの「WRC-X5400GS-B」

ユーザーの「導き方」のうまさが光る

 Wi-Fiルーターを購入、設置、設定、利用するという一連の体験を考えたとき、ユーザーを成功へと導くための本製品のガイドの巧みさ、実に見事なものだ。困りそうなポイントに必ず手助けが入る工夫があり、仮に困ったとしても、それに対する手当てが「すぐそば」に用意されている。

 例えば、初めに目にする「かんたんセットアップガイド」。ここには、「はじめて設置する」場合と、「他のWi-Fiルーターから交換する」場合が2段組みで併記されており、ちょっとしたフローチャートのように機能している。

利用シーンを想定したチャート式で設定方法が解説されている

 また、セットアップの際の難関となるインターネット接続でも、回線種別を自動判別できることはもちろんだが、万が一接続できなかった場合のフォローも、きっちりとなされている。

 前述した「かんたんセットアップガイド」のインターネット接続に関するパートには、「インターネットに接続できない場合はこちらをお試しください」という記述とともにQRコードが記載されている。

つながらなかったときの誘導先がきちんと記載されている

 これをスマートフォンで読み込むことで、専用の問題解決コンテンツへとアクセスできる(以下サイトからもアクセス可能)。

スマホでQRコードを読み込むと、QA形式でトラブル解決できるコンテンツに誘導される

 このコンテンツが秀逸で、「インターネットのモデムはありますか?」などの問いに対して「ありました!」「モデムってなんですか?」という回答を選択していくことで問題を解決できるようになっており、初心者でも回答を選んでいくだけで、トラブルを解決できるようになっている。

 国内メーカーの製品であれば、他社でも問題解決のコンテンツを用意していたり、チャットでの問題解決ができたりする場合があるが、マニュアルの末尾に小さく記載されていたり、サポートサイトから探したりする必要があって、見つけにくかった。

 これに対して本製品は、こうしたコンテンツを用意するだけでなく、ユーザーがたどる道筋の中へ、目立つように誘導がなされており、きちんと「たどり着ける」ようになっている。

 このほか、サポートへの連絡先電話番号が記載されたシールが同梱されていて、これをACアダプタのケーブルに貼り付けられるようになっているあたりも、競合には見られない工夫だ。

サポートの連絡先をACアダプターへ貼り付けることができる

 サポートがきちんと機能するようになっていたり、コンテンツが意味あるものになっていたりするあたりは、筆者としても目からうろこで、素直に感心した。現時点では、初心者に対する気配りの完成度が、一歩抜きんでている製品と言ってよさそうだ。

160MHz幅対応も機能はシンプル

正面

 それでは実際に製品を見ていこう。本製品は、同社のラインアップでは最上位に位置するモデルで、4ストリーム160MHz幅対応の最大4804Mbpsに対応した5GHz帯と、最大574Mbps(2ストリーム40MHz幅)の2.4GHz帯に対応したWi-Fi 6デュアルバンドルーターとなる。

 160MHz幅対応で4804Mbpsの製品は、昨年末あたりから各社が売れ筋モデルとしてラインアップを充実させつつあるクラスだ。実売価格も1万6000円前後と購入しやすい価格帯を実現している。

 機能的にはシンプルで、ここ最近のトレンドである「メッシュ」や「セキュリティ機能」は搭載しない。

側面

背面

WRC-X5400GS-B
実売価格(税込) 1万6117円前後
CPU トリプルコア、1.5GHz
メモリ
Wi-Fiチップ(5GHz)
対応規格 IEEE 802.11ax/ac/n/a/g/b
バンド数 2
160MHz対応
最大速度(2.4GHz) 574Mbps
最大速度(5GHz) 4804Mbps
チャネル(2.4GHz) 1~13ch
チャネル(5GHz) W52/W53/W56
ストリーム数(2.4GHz) 2
ストリーム数(5GHz) 4
アンテナ 内蔵
WPA3
メッシュ ×
IPv6
DS-Lite
MAP-E
WAN 1Gbps×1
LAN 1Gbps×4
USB ×
セキュリティ ×※
動作モード RT/AP/クライアント
ファームウェア自動更新
サイズ(幅×奥行×高さ) 40×140×207mm

※セキュリティWi-Fi、子どもネットタイマー利用可能

 エレコムは、国内メーカーとしては比較的早い段階から、トレンドマイクロの技術を利用したセキュリティ機能を搭載してきたメーカーだ。他モデルには「Smart Home Network」として搭載されているが、今回のWRC-X5400GS-Bには搭載されていない。

 テレワーク・オンライン学習向けのセキュリティ機能として「セキュリティーWi-Fi」という機能が搭載されているが、これはSSIDの分離と端末間通信の禁止を組み合わせた機能となる。つまり、自宅のWi-Fiを家族用と仕事用に分け、それぞれに通信できない状況にすることで、セキュリティやプライバシーを保護する機能と言える。

 ウェブフィルタリングや通信パケットを検査するようなセキュリティ機能は残念ながら未搭載となっている。

「セキュリティWi-Fi」は、SSIDの分離+端末間通信拒否により、仕事用のPCと家庭用の端末を分離する機能

性能は十分

 パフォーマンスは悪くない印象だが、筆者宅では若干の工夫が必要だった。以下は、木造3階建ての筆者宅の1階に本製品を設置し、各階でiPerf3の速度を測定した結果だ。

iPerf3テスト結果

1F 2F 3F入口 3F窓際
バンドステアリング有効 上り 821 546 347 22
下り 889 566 356 59.7
2.4/5GHz分離 上り 189
下り 207

※サーバー CPU:Ryzen 3900X、メモリ:32GB、ストレージ:1TB NVMe SSD、OS:Windows 10
※1台時の3階窓際は2.4GHz帯で接続された状態

 160MHz幅対応なので、ノートPCなどでは最大2402Mbpsでリンクするため、1階での速度は最大889Mbpsとかなり高速だ。2402Mbps接続であれば900Mbpsをオーバーして欲しかったところだが、周囲の電波状況の関係か、一歩及ばなかった。

 2階、3階の速度も十分で、3階でも入口付近であれば300Mbpsオーバーとなるため、速度面での不満を感じることはない。

 ただ、最も遠い3階の窓際では、上り22Mbps、下り59.7Mbpsと、ガクッと速度が落ちてしまった。

 これは、2.4GHz帯と5GHz帯を1つのSSIDで運用するバンドステアリングの影響で、自動的に2.4GHz帯での接続に切り替わってしまったことが影響している。

 本製品は、長距離通信では2.4GHz帯を利用した方が有利と判定したようだが、筆者宅周辺では2.4GHz帯は壊滅的な状況なので、遠くても5GHz帯を利用した方が速度が出やすい。このため、バンドステアリングをオフにして5GHz帯で接続したところ、この速度が上り189Mbps、下り207Mbpsにまで向上した。

 性能としては十分だが、2.4GHz帯が優先される場合があるので、環境によっては帯域の使い分けをするなどの工夫が必要になりそうだ。

初心者にオススメを聞かれたら推薦する

 以上、エレコムの「WRC-X5400GS-B」を実際に利用してみたが、オーソドックスで奇をてらったところのない堅実な製品と言える。メッシュやセキュリティ機能が不要ということであれば、不満はないはずだ。

 むしろ、本製品を積極的に選ぶ理由は、冒頭で触れたサポートの充実度だろう。「絶対につまづかせない」という強い意志を感じる徹底した工夫には、感心するほかない。

 このため、どちらかというと、友人や家族、親類などの初心者から、「分からないからWi-Fiの導入を手伝って」と言われたときに選ぶと安心できる製品だ。これなら、自らがつきっきりでサポートしなくても、製品(エレコム)任せで、使ってもらうことができる。

 性能は十分なので自分で使うのもお勧めだが、初心者にお勧め機種を聞かれたときに挙げる候補として、覚えておきたい製品だ。

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