融雪剤が湖の塩分濃度を急上昇させていることが判明

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雪の多い地域では道路上に積もった雪を溶かしたり、溶けた水が凍結したりするのを防ぐために、塩化ナトリウム塩化カルシウムを使用した融雪剤が使われています。ところが、融雪剤由来の塩が淡水の池や湖に流れ込むと水の塩分濃度が上昇してしまうそうで、「世界で5番目の面積を持つミシガン湖の塩分濃度が過去40年間で急上昇している」と報告されています。

Tributary chloride loading into Lake Michigan – Dugan – – Limnology and Oceanography Letters – Wiley Online Library
https://aslopubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/lol2.10228

Study finds that not even the largest lakes in the world are safe from salt
https://phys.org/news/2021-12-largest-lakes-world-safe-salt.html

北アメリカにある五大湖は世界中で利用可能な淡水の約20%を占めており、支流を含む水系は北米大陸に住む人々にとって非常に重要です。ところが、近年では道路の雪を溶かすために用いられる融雪剤の影響で、五大湖の塩分濃度が次第に上昇しているとのこと。

ウィスコンシン大学マディソン校やミシガン州立大学の研究チームは、五大湖の1つであるミシガン湖を対象にして、主要な河川から小さな河川まで234の異なる支流から運ばれる塩の量を分析しました。歴史的な水質データとコンピューターモデルを組み合わせた結果、これらの支流はミシガン湖に毎年100万トン以上の塩化物を運んでいることが判明しました。

この影響により、1800年代には1リットル当たり1~2ミリグラムだったミシガン湖の塩分濃度は、記事作成時点では1リットル当たり15ミリグラム近くに上昇しているとのこと。論文の筆頭著者であるウィスコンシン大学マディソン校のヒラリー・デュガン准教授は、「大きな湖も人間の汚染に対して免疫がないことがわかりました」と述べています。さらに、塩分濃度増加の半分近くは過去40年間で発生しており、今後も2~3年ごとに1リットル当たり1ミリグラムの割合で塩分濃度が上昇していくことが予想されています。

by Rach

淡水でしか生きられない動植物に害を及ぼしたり飲料水として使えなくなったりする「1リットル当たり250ミリグラム」のレベルには遠いものの、こうした塩分濃度の上昇は問題です。「淡水の湖に住む生き物は淡水の状態で繁栄できるように進化しているため、人間はこれらの生き物にストレスを与えており、淡水から遠い領域に生き物を押しやっている可能性があります」とデュガン氏は指摘しています。

一方、ミシガン湖と同じく五大湖の一角を占めるエリー湖オンタリオ湖では、クリーンウォーター法に基づいて1970年代から周辺の汚染を規制した結果、塩分濃度が大幅に低下していたことも判明しています。このことからデュガン氏は、「塩害に注意を払えばこの問題は修正できます」と述べています。

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塩分濃度上昇問題を解決するには、「どこから湖に塩化物が流れ込んでいるのか?」を知ることが重要です。研究チームはこの点を調べるため、論文の共同執筆者であるロブ・ムーニー氏が別の研究で収集した「ミシガン湖支流の水のサンプル」を調査しました。

過去の水質測定値と合わせて分析したところ、支流に流れ込む塩化物の量と最も関わりが深い要因は「流域内にある舗装された地面の広さ」であることが判明。最も塩分濃度が高い支流は、ウィスコンシン州ミルウォーキーのジェネラル・ミッチェル国際空港付近から、雨水や融雪をミシガン湖に運ぶ支流であることがわかりました。

しかし、ムーニー氏は支流の塩分濃度は問題の一部にすぎず、「支流から湖に流れ込む水量」も重要な要因だと指摘しています。実際、ミシガン湖には約300もの支流があるものの、湖に流れ込む塩化物の70%以上はたった5つの支流から流れ込んでいるとのこと。これらの支流は必ずしも塩分濃度が高いわけではないものの、単純に水量が多いため塩化物の総流入量も多いそうです。

支流の塩分濃度が必ずしも塩化物の総流入量と比例しないという点は、政策立案者にとって難しい問題を引き起こすとムーニー氏は指摘。「最も巨大な支流が湖に最も塩化物を流し込む存在ですが、塩分濃度自体は問題になり得る濃度をはるかに下回っているため、必ずしも塩化物管理の優先事項ではありません。一方で小さな支流はそれほど多くの塩化物を供給していませんが、塩分濃度が非常に高いので強い注目を集めています。つまり、どの支流の塩化物管理を優先するかにおいてミスマッチが起きているのです」と述べています。


政策立案者がどのような決断を下すにしろ、問題を解決する唯一の方法は「周辺で使用する塩化物の量を減らす」というものです。デュガン氏は、すでに五大湖周辺の自治体や州は冬の道路整備計画を更新し、塩の使用量を減らす技術に目を向けているとして、塩の使用量減少が塩分濃度の低下につながる可能性があると主張しました。

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