地元企業迎春CMについて説明します
新年を迎えると、地方テレビ局で、年始の挨拶のナレーションが入った、その地方の地元企業の“迎春CM”をよくみかける。
これを見ると「帰省しているな」ということをしみじみと感じてしまう。
地元企業の迎春CMとはなにか
“迎春CM”というのは、ぼくが勝手に考えて命名したものだが、一般的には「正月CM」などと呼称されているかもしれない。あえて“迎春CM”と呼ぶのは、キー局で放映されている、大企業の新春用の企業CMなどとはちょっと違うなと思ったからだ。
迎春CMは、基本的に地元の有名な風景や、日の出、なんらかのキャラクターがパワポぐらいのアニメーションで動く汎用の動画素材に、会社名のテロップが入る。
そして「新年あけましておめでとうございます。株式会社◯◯は、社員一丸となって、さらなる飛躍と、サービスの向上に努めます。本年も変わらぬご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます」みたいな、あたりさわりのない新年のあいさつのナレーションが入っている。
こういった迎春CMは、子供のころに住んでいた鳥取のテレビ局ではよくみかけたが、上京して見るようになった関東キー局では見かけない。(ただし、関東でもテレ玉や千葉テレビといったいわゆる独立系のテレビ局では放送されている)
今年の正月、妻の実家がある青森に帰省したおりにたくさん見て、なんだかほっこりした気分になった。
迎春CMの汎用動画はそこそこの種類があるようで、初日の出のパターンだけでもけっこうな数があるようだ。
その他に、地元の名物や新春風のアニメーションなどのCMも散見される。
中には、社員と思しき人たちが出演するオリジナルの動画をつかった迎春CMや、画角が4:3のままのCMを使っているものなどもあった。
ただ、迎春CMは概ね汎用動画を使用したものがほとんどであるといっていいかもしれない。
こういった迎春CMは、地元企業のいわゆるテレビを使った年賀状のようなものなのだろう。
昔の迎春CMは静止画が多い
YouTubeをさがすと、昭和や平成時代の迎春CMを見ることができる。
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上の動画内の迎春CMでは、市長や、カーディーラーの社長が顔写真で登場し、本人がナレーションを抑揚なく読み上げるものまであり、この地元感がたまらない。
市長が自ら出演する迎春CM、最近はあまりないのではないか? (あったらごめんなさい)
こちらの動画は、1985〜86年ごろの山陰地方の迎春CMで、30分もある。
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これらのCMは、ぼくが11歳ごろに見ていたCMということになるが、さすがにひとつずつを覚えてはない。しかしながら、聞き覚えのある店や会社名に、なんともいえない郷愁を感じてしまう。
そして、よくみてみると、スナックやバーといった店の迎春CMが多い。中には、3店舗合同の迎春CMなんてのもあった。
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この3店舗合同のCMは「元日より営業!」とでかく書いたにもかかわらず、1店舗は残念ながら3日より営業となっている。足並みがそろってない。
昔は、わりと小規模な店でもテレビCMを打っているところを見ると、ずいぶん景気が良かったのか、それともCM料金が破格に安かったのか。どちらなのだろう。
このサイトを見ると、ローカル局のテレビCMは、放映料のみで、15秒1本あたり、1万5千円かららしい。
もちろん、最低でもいくつかまとめてという形になるだろうから、もっとお金がかかると思うが、キー局の最低ラインが1本30万からスタートとなっているのをみると、地方ローカル局のCM価格はまさに「桁違い」である。
このフォーマットを使えば、普通のことを言っても迎春CMっぽくなるだろうか
この迎春CM、汎用の動画素材に「謹賀新年」とか「賀正」といった文字と、企業名を入れたかんたんな物だけれど、もし、ここの文字が正月とまったく関係ないものだったらどうなるだろうか?
一見、謹賀新年の挨拶風だが、ただの硫化水素の説明。という画像である。迎春CM風にみえるだろうか。
元ネタのイメージがあまり強くないのと「謹賀新年」と「硫化水素」は、同じ漢字四文字とはいえ、さすがに言葉の意味が違いすぎる。
とはいえ、ずーっと見てると、迎春CMの静止画にみえなくもない気もするが、やっぱりしない気もする。正月なのか、卵の腐った匂いなのか、脳が混乱状態である。
もうちょっと正月風に寄せてみる。
すぐ歴史ネタに走るのは安易なのはわかっているけれど、歴史の話はなんにでも置き換えしやすいのでらくちんである。
なつかしさのあまり……
迎春CMは、帰省するたびに気になっていたものの、いままでちゃんと向き合ってなかったと反省し、なかば勢いで書いた。
昔の迎春CMに比べると、いまの迎春CMはテンプレートに名前とナレーションを載せているだけなので、すこし味気ないものになっているのは否めない。それはそれでおもしろいところだけれど、昔の手書きでレタリングしたような静止画の迎春CMも、素朴な味わいがあっていい。
地方テレビ局やテレビCMに関しては、なかなか厳しい状況が続くが、迎春CMという素朴で味わいのあるテレビ文化はなるべく残ってほしいとおもう。