新型コロナウイルスの変異株、オミクロン株の感染が急速に世界に広がり、日本でも海外からの入国者に感染が確認されたのみならず、首都圏、関西、福岡などで市中感染が始まっている。
イギリスをはじめ、ヨーロッパ諸国では、オミクロン株の感染が広まっており、規制強化に乗り出している。
WHOによれば、オミクロン株はすでに世界110カ国で確認されており、感染の速度がデルタ株よりも速い。感染しても重症化したり死んだりする人の比率は下がっているとされている。
感染歴のある人の感染率がデルタ株の5倍以上というデータもある。また、2回接種完了者でも感染するケースが続出している。この点は問題であるが、3回目の接種(ブースター接種)は有効だという。
イギリス政府は、追加接種の対象を40歳以上から18歳以上に引き下げ、2回目接種からの間隔を6ヶ月から3ヶ月に短縮した。そして、年内にブースター接種の完了を目標に軍隊も動員して接種を急いでいる。オミクロン株の今の感染スピードが続けば、一日の感染者が200万人、年明けには全人口が感染するという予測もある。
日本では、十分な根拠も示さないまま、厚労省が8ヶ月後という方針を固め、自治体もその指示で動いてきた。岸田首相が6ヶ月後に前倒しすることを決定したのは12月17日である。あまりにも遅い。
日本は、ワクチン接種などのコロナ対策は、ヨーロッパの周回遅れである。政府に諮問する専門家たちの責任も大きい。皮肉を言えば、欧州など海外の先行事例があるので、それを参考にして対策が立てやすいはずである。ところが、その先行事例を活用することをしない。
オランダでは、12月19日から1月14日まで、都市封鎖に踏み切った。すでに85%超の人が2回ワクチン接種を終えているが、オミクロン株への有効性を疑っているからである。追加接種率は、イギリスが50%、アメリカが30%、ドイツが20%であり、オランダはもっと少ないのである。日本では、12月1日に医療従事者に対するブースター接種が始まったばかりである。
アメリカでは、ブロードウェイでの公演やスポーツイベントの延期や中止が相次いでいる。クリスマスシーズンは商店などはかき入れ時であり、世界中で経済的に大きな被害が出そうだ。
オミクロン株が重症化しにくい。つまり弱毒化を進めていることは、ウイルスの生き残り戦略としても理解できるところである。その意味では、デルタ株がオミクロン株に置き換わり、急速に感染が拡大したほうが、安全という観点からはよいのかもしれない。そして、このまま普通の風邪に変化していけばよいのだが、まだそれを予測させるデータが足りない。また、コロナ既感染がオミクロン株感染の防護壁にはならないというのも厄介である。
ワクチンの追加接種の加速化、緊急承認されたメルク社の経口治療薬の活用などで、インフル並みの治療パターンが普通になれば、状況は大きく改善する。