トロント大学のCitizen Labによると、イスラエルのテクノロジー企業NSO Groupのスパイウェア「Pegasus」が、ポーランドの有力な野党政治家など複数の人物のハッキングに使われていた可能性があるという。
Citizen Labは現地時間12月23日、The Associated Pressの記事で、ポーランドのKrzysztof Brejza上院議員が2019年4月26日~10月23日の期間、33回にわたりPegasusを使ってハッキングされたとの調査結果を明らかにした。
Brejza氏は、2019年10月に行われたポーランド議会選挙で、Mateusz Morawiecki首相(2017年より現職)の右派政権に対抗する運動に協力していた。Brejza氏のスマートフォンにあったメッセージが盗まれて、同氏を中傷するために加工され、政府が関与する報道機関によって拡散されたという。選挙ではMorawiecki氏の与党が僅差で勝利した。
Brejza氏は汚職に厳しい強硬派として知られる人物で、ハッキングされていたことを知り、衝撃を受けたという。Brejza氏のスマートフォンにアクセスすれば、同氏の選挙戦略のほか、同氏に信頼を寄せる汚職の内部告発者らに関する情報を誰もが入手できたことになる。
Citizen Labは22日、積極的な発言で知られるポーランドの検察官Ewa Wrzosek氏と、Brejza氏の政党「市民プラットフォーム」の弁護士を務めるRoman Giertych氏のスマートフォンのハッキングにも、Pegasusが使われていたとの調査結果を公表した。
Morawiecki首相とポーランド政府はハッキングへの関与を否定しているが、欧州連合(EU)加盟各国はこの件について声を上げ始めている。
オランダの欧州議会議員Sophie in ‘t Veld氏は22日、次のようにツイートした。「EU加盟国の政府が政敵や批判者にスパイウェアを使うなど容認できない。欧州委員会はこの問題から目を逸らしたままではいられない。EU内にこのような行為があってはならず、禁じるべきだ」
今回の報告は、NSO Groupをめぐる闇に関する新たな疑惑だ。Citizen Labは、殺害されたサウジアラビア人ジャーナリストJamal Khashoggi氏の妻Hanan Elatr氏のスマートフォンを、アラブ首長国連邦(UAE)がPegasusを使ってハッキングし、追跡していたことを示す証拠をThe Washington Postに提供した。Elatr氏のスマートフォンがハッキングされたのは、Khashoggi氏がサウジ当局者らに殺害される数カ月前だという。
NSO Groupの最高経営責任者(CEO)を務めるShalev Hulio氏は7月、Khashoggi氏とElatr氏がPegasusの顧客の標的になったことを否定した。新たなフォレンジック情報を示されても、NSO GroupはElatr氏が標的になったことを否定し続けた。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。