メモ
アメリカにあるパデュー大学が2021年12月15日に、学内の中国人学生に対する嫌がらせを非難し、言論の自由の侵害を容認しないことを表明する手紙を学生や教職員に送りました。手紙は、1989年に中国で発生した「六四天安門事件」についての意見を発表したパデュー大学の中国人学生が、同じ中国の学生からつきまといや嫌がらせを受け、本国の家族が脅迫を受けるまでにエスカレートしていた問題を重く見た学長が発表しました。
President Daniels responds to Chinese student’s harassment | Campus | purdueexponent.org
https://www.purdueexponent.org/campus/article_aa3e67de-5de9-11ec-9246-af6384980cbb.html
パデュー大学の土木工学の博士課程に在籍するZhihao Kong氏は、以前から中国共産党に対する批判を行ってきましたが、アメリカで新型コロナウイルス感染症が流行し中国への風当たりが強くなるのに伴い、アメリカと中国の関係悪化に過敏になった中国人学生らから注目されるようになりました。そして、2020年5月に六四天安門事件に関する意見をSNSで公開し、これがインターネット上で広く拡散されたことが契機となり、学内やインターネット上で脅迫や嫌がらせを受けるようになりました。
by Mike Licht
非営利・独立系報道機関のProPublicaによると、Kong氏には「中国共産党に通報する」といったメッセージが届いたほか、実際に中国国内にいる両親が国家安全局の職員の訪問を受けたこともあったとのこと。両親から電話で、中国政府の批判をやめるよう涙ながらに訴えられたKong氏は、六四天安門事件を追悼する行事でのスピーチを取りやめなければなりませんでした。
ProPublicaによる報道を受けて、パデュー大学のミッチ・ダニエルズ学長は12月15日に、Kong氏への嫌がらせを非難する書簡を学生と教職員宛に送りました。訳すと以下の通りです。
「パデュー大学の学生、スタッフ、教職員の皆様へ。
先週、パデュー大学の学生の1人が自由とその主張に殉じた人々のために声を上げた後、彼の母国から来た他の学生から嫌がらせや脅迫を受けたことを全国ニュースで知りました。さらに悪いことに、彼の家族が中国の秘密警察の諜報員によって脅されました。
しばらくの間私たちがこのような事態を関知できず、報道から知ることになったのを残念に思います。今回の一件は、この種の言論を取り巻く脅迫的な雰囲気を反映する問題です。
このような脅迫は、私たちのキャンパスでは容認できず、歓迎されません。パデュー大学では、直接的もしくは脅迫的な行為に対する罰則を設けています。問題のスピーチに異論を唱える人は、それ表明する権利はあっても、今回起きたような嫌がらせ行為をする権利はありません。脅迫を行った学生が特定されれば、適切な懲戒処分を受けることになります。同様に、言論や信条の自由を行使した他の学生を外国の団体に通報したことが判明した場合にも、重い処分を受けることになります。
パデュー大学では、1世紀以上も前に初めてアジア人学生を受け入れており、アジア人留学生は新しい存在ではありません。この秋も数百人の留学生が入学し、そのうち200人近くが中国人であることは本学が誇りとするところです。
しかし、パデュー大学のコミュニティに加わるには、その規則と価値観を受け入れる必要があります。そして、私たちの大学や高等教育全般において、探究と表現の自由ほど中心的な価値観はありません。このような権利を否定しようとする者、ましてや外国政府と共謀してそれを抑圧しようとする者は、別の場所で教育を受ける必要があります」
ダニエルズ学長の書簡に対し、Kong氏はオンライン掲示板・Redditへの投稿で「私が中国から来た人の嫌がらせを受けたという出来事は事実です」と述べて、嫌がらせを受けたことを認めました。その上でKong氏は、自分に対するバッシングについて「多くの中国人留学生が私の政治的見解に反対し、あちこちで私を侮辱しましたが、それは彼らの表現の自由に違いありません。しかし、そのうち一部は露骨で強い言葉を使って、中国にいる私の家族を傷つけようとしました」「どうか中国の皆さん、まず人間であり、次に中国人であり、最後に中国共産党員であってください」と呼びかけました。
アメリカの教育現場では、過去にも同様の事例が起きました。2019年には、エマーソン大学のフランシス・ホイ氏が「私は中国ではなく香港出身です」というタイトルのコラムを書いたところ、中国本土から留学してきた学生から激しい嫌がらせを受けたと報じられています。
A student in Boston wrote, ‘I am from Hong Kong.’ An onslaught of Chinese anger followed.
https://www.boston.com/news/local-news/2019/05/28/frances-hui-hong-kong/
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