多くの言葉を理解して人とコミュニケーションできるほど知能が高いとされる大型のインコのヨウムを用いた研究により、ヨウムは通貨を使っておやつを買うことができる上に、おやつを買おうとする仲間のために通貨を分け与えることが確認されました。
Parrots Voluntarily Help Each Other to Obtain Food Rewards: Current Biology
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(19)31469-1
African grey parrots spontaneously ‘lend a wi | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/862033
Parrots Will Share Currency to Help Their Pals Purchase Food | Science | Smithsonian Magazine
https://www.smithsonianmag.com/science-nature/parrots-share-currency-help-their-pals-purchase-food-180973917/
African Gray Parrots Help Partners Obtain Food Rewards | Sci-News.com
http://www.sci-news.com/biology/african-gray-parrots-help-partners-08041.html
見返りもないのに物を分け与えるという慈善行動は、これまで人間やオランウータン、ボノボなど一部の霊長類しか持たない能力だと考えられてきました。例えば、カラスは極めて高い知性を持つことで知られていますが、以前の研究ではカラスは仲間に無償で自分の物を分け与えることはしないことが確かめられています。
そこで、マックス・プランク鳥類研究所のDésirée Brucks氏とAuguste von Bayern氏は、カラスと同様に高い知能を持つ鳥類のヨウムが慈善行動をとるかどうかを確かめるため、2羽のヨウムの一方だけがおやつを得られる状況を作る実験を行いました。
実験ではまず、ヨウムを訓練して「穴が開いた金属製のリングを人間に差し出すと大好物のナッツがもらえる」ことを学習させました。そして、ヨウムを仕切りのある部屋に入れてから、片方のヨウムにだけリングを与えました。
実験の様子は、以下から見ることができます。
Parrots Transfer Tokens to Help Others “Buy” Treats – YouTube
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仕切りで隔てられた部屋には、人間からおやつをもらうための穴があいていますが、右の部屋の穴はふさがれています。
そして、穴がふさがれている右の部屋に、おやつと交換できるリングを入れます。
すると、右の部屋のヨウムが、2つの部屋を隔てる仕切りに開けられた穴を通して、リングを隣の部屋のヨウムにプレゼントしました。
リングをもらったヨウムは、それを人間に差し出して……
無事にナッツをゲットできました。
実験の結果、8羽のヨウムのうち7羽が10個のリングのうち最低1個、平均して半分を隣のヨウムにプレゼントしました。また、隣の部屋にいるヨウムが仲のいい個体だった場合には特に多くのリングをあげましたが、そうではない個体でもリングを分け与えたとのこと。一方、同じ条件で対照実験をした6羽のコンゴウインコには、自発的に相手を助けようとする行動は見られず、リングのプレゼントはほとんど行われませんでした。
この結果について、Brucks氏は「隣のヨウムにリングをあげる姿を見て驚きました。私は、見返りがないことを知ったヨウムは、何の得にもならないことをやめてしまうだろうと思っていたからです。しかし、彼らは隣のヨウムにリングをあげ続けました」とコメントしました。
別の実験では、ヨウムが漫然とリングを渡し続けているわけではないことも分かっています。その実験が以下。
Grey parrots help others to obtain food – YouTube
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今回の実験でも片方のヨウムにだけリングが与えられましたが、リングを人間に差し出すための穴が両方ともふさがれています。
その結果、リングを与えられたヨウムは、リングをくわえてもそれを相手にあげずに様子を見ました。
しばらくしてリング交換用の穴のフタが外され、ヨウムがおやつをもらえるようになると……
リングを持っているヨウムは、隣のヨウムがおやつを交換できるように、自分が持っているリングをプレゼントしました。
研究には参加していないオークランド大学の認知心理学者のJennifer Vonk氏は、科学雑誌・Smithsonianの取材に対し、「訓練により通貨と餌を交換できることを理解できるようになる鳥類はヨウムだけではありません。しかし、仲間にとって役立つ場合にのみ通貨を渡すのは注目に値します。なぜなら、ヨウムは単純にものを共有する能力を持つだけでなく、なぜ共有するのかを理解していることが示唆されているからです」と話しました。
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