舛添氏 ロシアの軍事侵攻を危惧 – 舛添要一

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ロシアは、ウクライナ国境地帯に軍隊を集結させている。アメリカの情報機関によれば、17万5千人の部隊が年明けにもウクライナに軍事侵攻するという。

ロシア国境地帯に住むロシア系住民は分離独立の動きを強めており、ロシアはこれを支援し、ウクライナはこれを阻止しようとしている。

 両国関係が武力衝突しないように、7日、バイデン大統領とプーチン大統領がオンライン形式で協議したが、両首脳の主張は平行線を辿った。

 2014年3月、ロシアはクリミア半島を併合した。クリミア半島は、国際的に認められたウクライナの領土であり、これはロシアによる侵略・併合だと日米欧は非難した。ロシアによれば、住民投票を経て独立が宣言され、ロシアとの併合が条約によって決まったという。

 戦後のソ連で、独裁者スターリンの死後、フルシチョフがクリミアをロシア共和国からウクライナ共和国に「友好の証」として譲った。背景には、水事情が良くないクリミア半島へは、ウクライナから水を供給する方が便利だという点もあったとされる。フルシチョフにしてみれば、クリミアがどちらの共和国に属そうがソ連邦の一部であることには変わりはないのである。まさか、37年後にソ連邦が崩壊するなどとは考えても見なかったのであろう。

 プーチン政権は、1954年のフルシチョフの決定は違法であるとし、本来の姿に戻したまでだと言う。そして、ウクライナに住むロシア人の利益を守るために行動すると述べている。

 ウクライナは、これらのロシアの主張に反論しており、ロシアによる違法行為だと厳しく糾弾してるが、今回もウクライナ東部がクリミア半島と同じ運命を辿ることを危惧している。

 民族問題と共に、ロシアが軍事的圧力を強めているのは、ウクライナが NATOに加盟しようとしているからである。ウクライナが西側の軍事同盟に入れば、ロシアにとっては脅威が高まる。プーチン政権は、それだけは許容できないのである。

 この問題は、ウクライナの北の隣国、ベラルーシのルカシェンコ大統領を見ると、よく理解できる。ロシアにとっては、この専制主義政権がロシアとの友好関係を維持していることが安全保障上重要なのである。したがって、移民越境問題などで国際的非難が高まっても、ロシアはベラルーシを支援し続けている。

 ウクライナが反露傾向をさらに強める事態は何としても避けるというのが、ロシアの戦略なのである。

ロシアが「レッドライン」とみなすNATO加盟のみならず、ウクライナに攻撃兵器を配備したり、東欧諸国にアメリカが核兵器を配備したりすることをロシアは警戒している。しかし、バイデン大統領はこのロシアの懸念に配慮することはなかろう。

 1989年にベルリンの壁が崩壊し、1991年にソビエト連邦は崩壊したが、今また、米露の対立が強まっている。危険な情勢になりつつある。

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