地球からの電波を月で跳ね返して送信する長距離通信に無線通信規格「LoRa」を利用して成功

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免許不要の低周波数帯を利用する無線通信規格のLoRaは、低電力で長距離通信ができるといった特性から、主にIoTデバイスなどのデータ通信に用いられています。新たにヨーロッパの研究チームが、地球から送信したLoRa信号を月の表面で跳ね返して地球上で受信することに成功し、これまでにLoRaで通信を行った最長距離を更新したと発表しました。

First LoRa® message bounced off the moon – Lacuna
https://lacuna.space/lora-moon-bounce/


European scientists bounce first-ever LoRa message off the Moon
https://www.capacitymedia.com/articles/3830209/european-scientists-bounce-first-ever-lora-message-off-the-moon

Scientists bounce long-range message off the moon for first time
https://www.siliconrepublic.com/innovation/lora-message-moon-earth-iot

Bouncing a LoRa message off the Moon | Electronics360
https://electronics360.globalspec.com/article/17494/bouncing-a-lora-message-off-the-moon

LoRaは通信サプライヤーのSemtechが策定した無線通信規格であり、スペクトラム拡散によって通信信号を広い帯域に拡散させて通信を行うため、他の通信方式では通信が困難な微弱な電波でも通信できる点が特徴です。LoRaという規格名は「Long Range(長距離)」に由来しており、過去には700kmを超える距離での通信が成功した事例も報告されています。

700km以上も離れた場所から電波が直接届く「LoRa」による通信距離の世界最長記録が1日に2度も更新される – GIGAZINE


新たに、イギリスの宇宙通信スタートアップ・Lacuna Space欧州宇宙機関(ESA)C.A.ミュラー電波天文学ステーション(CAMRAS)などの研究チームは、「LoRaを利用して地球から宇宙に向かってメッセージを送信し、月の表面で跳ね返させて地球上で受信する」という実験を行いました。

この実験では、Semtech製のLR1110 RFトランシーバーチップで350ワットに増幅した信号を、CAMRASが運営するオランダのドゥビングロー25m電波望遠鏡を使用して発信しました。地球上から発信された信号は月の表面で跳ね返り、2.44秒後に同じチップで受信することに成功したと研究チームは述べています。

ドゥビングロー25m電波望遠鏡はアマチュア無線実験でよく使用されており、信号を月の表面で跳ね返させる実験もたびたび行われているとのことですが、LoRaの信号を月でバウンドさせたのはこれが初めてです。今回の実験ではLoRaの信号が73万360kmという驚くべき距離を移動し、LoRaによる通信距離の新記録を樹立しました。また、2.44秒という信号の往復時間や、地球と月の相対的な動きによるドップラー効果が引き起こす周波数のズレから、地球から月までの距離を計算することもできました。この値は、アメリカ航空宇宙局(NASA)が提供するJPL Horizons On-Line Ephemeris Systemを利用して得られた予測値と非常によく合致したそうです。

なお、今回の実験で送信されたメッセージは、ドゥビングロー25m電波望遠鏡のコールサインである「PI9CAM」という文字列だったとのこと。


LoRaの共同発明者であるNicolas Sornin氏は、「これは素晴らしい実験です。LoRaのメッセージが月まで行って戻ってくる日が訪れるとは、夢にも思いませんでした。私はキャプチャーされたデータの品質に感銘を受けています。このデータセットは無線通信や信号処理の学生にとっての古典となるでしょう。この実験を可能にした研究チームとCAMRAS財団をたたえます」と述べています。

また、Lacuna SpaceのCEOを務めるThomas Telkamp氏は、メッセージが月で跳ね返って戻ってくるのは「爽快」だとコメント。将来的にIoT技術がスケールアップされれば、月と地球の間での長距離通信が確立される可能性もあるとのことです。

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